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所得税における源泉徴収制度と年末調整について その2

2016/12/20
前回は、わが国の現状の源泉徴収と年末調整とが一体化している制度は、給与所得者たる受給者の税に対する関心を希薄化させるものであり、また、その制度は、源泉徴収義務者が無償で行う"徴税協力行為"によって成立する旨の問題意識を述べさせて頂きました。今回は、それらの点について、もう少し掘り下げてみたいと思います。先ず前者については、受給者の所得税の納付手続きは、源泉徴収義務者(支払者)によって給与支払時に所得税を概算天引きすることによってなされ、年末調整によってその精算がなされるため、給与所得者が自分の税金を自分で計算して納付する、申告納税制度本来の手続きとは異なるものとなっており、申告納税制度の考え方の変容及び納税者意識の相対的希薄化に対する懸念です。
 
次に、後者の源泉徴収義務者が無償で行う"徴税協力行為"について述べてみたいと思います。源泉徴収義務者について、所得税法及び復興財源確保法の規定によれば、「会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払の都度、支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引く義務があり」、その「差し引いた所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月の10日までに国に納めなければならない」ことになっています。これらの義務を負っている会社や個人が、すなわち源泉徴収義務者であり、それらの義務のことを、ここで"徴税協力行為"と呼ばせて頂いています。
 
このように、源泉徴収と年末調整が一体化したシステムにおいては、徴税漏れが少なく、かつ徴税コストが節約でき、確実な徴税効率が期待できるものにはなっていますが、それは国の徴税コストを抑制するために、源泉徴収義務者に徴税コストを転嫁する、すなわち源泉徴収義務者に"徴税協力行為"を強いることによって、国側の徴税コストを節減しているに過ぎなく、それによってのみ成立する制度なのです。仮に源泉徴収義務者に転嫁している徴税コストを考慮した国の徴税コスト全体を考えると、決して低いものではありません。その決して低くはない徴税コストを源泉徴収義務者は"徴税協力行為"として無償で負担しています。このことは、源泉徴収と年末調整が一体化している制度は、源泉徴収義務者の徴税コストと経済的負担なしでは成立し得ないものであることを意味しています。
 
とは言え、現行制度は既に定着しているところから、急激な変化は反って混乱を来すと考えられます。そこで、筆者は、現行源泉徴収制度の徴収面の効率性と合理性に着目し、その制度の一部を温存しながらも、申告納税制度の、言わば理念とも言うべき民主的な考え方にも立脚する制度として、源泉徴収制度と年末調整制度との双方の利点を取り入れた制度として、年末調整と確定申告との納税者による選択制を認める制度にしたらよいのではないかと考えています。
 
年末調整の選択制は、給与収入しかない給与所得者で後に確定申告を予定していない者は、今まで通り年末調整を選択して所得税の課税関係を終了すれば足り、源泉徴収の対象となるべき受給者で個人情報を開示することに抵抗がある者や、その他の収入があり、後に確定申告を予定している者は、年末調整をせずに確定申告を選択して納税者自身で所得税の精算を行えばよいことになります。そうすれば、納税者意識の向上という観点から見ても、年末調整を選択制にすることで給与所得者は、従前より自己の所得税の申告及び納付に接する機会が増え、所得税の精算を従来通り年末調整によるか確定申告によるか納税者自身の事情に合わせて自由に選択することができ、自らで申告するなら確定申告を選択すればよいことになると考えています。(了)

文責 (G・K)

 

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