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法律解釈の難しさが「やむを得ない事情」に該当したケース

2012/01/09
こんにちは。


少し前の話になりますが、下記のような珍しい判決がありました。



法律解釈の難しさも理由にやむを得ない事情があったと判断

 租税特別措置については、申告の際にその特例の適用を受ける旨を申告書に記載しなければ適用が認められないが、記載しなかったことにやむを得ない事情があれば適用が認められる。しかし、災害等でなければ、やむを得ない事情が認められるのは極めて稀。そうした実務傾向の中で、東京高裁(西岡清一郎裁判長)は法律解釈の難しさも理由の一つに挙げて、特例の適用を受ける旨の記載がなかった納税者の申告にはやむを得ない事情があったと認めるのが相当と判示、納税者勝訴の逆転判決を言い渡している。

 この事件は、相続財産である共有家屋の一部を取り壊して更地化した敷地を譲渡した場合にも、いわゆる3000万円特別控除の適用が認められるか否か争われてきたもので、一審では納税者の主張が斥けられたものの、控訴審は適用を認め、納税者の主張を全面的に認容する逆転判決を下した事案。納税者側は、3000万円特別控除の適用と、特例の適用を受ける旨を申告書に記載しなかったことにやむを得ない事情があったと主張してきた。

 原審の東京地裁は、元々、特例の適用がないのであるから、やむを得ない事情の有無を判断するまでもないと納税者側の主張を一蹴した。しかし、控訴審の東京高裁は、法律解釈の難しさに加え、税務署からは、申告書を提出する前に何度も適用が認められるか否か相談し、適用が認められない旨回答された。また、税理士からは1)判例も前例もないため難解な問題である、2)加算税を追徴されるリスクがある、3)特例の適用申請を断念しても、1年以内なら更正の請求ができる旨助言されたなどの経緯から更正の請求をするに至った経緯に照らせば、やむを得ない事情があったと認めるのが相当と判示、納税者の主張を認容した。法律解釈の困難さも理由の一つに挙げ、やむを得ない事情を認めた判決例として実務的にも注目しておくべき判決といえる。

(2010.07.15 東京高裁判決、平成21年(行コ)第372号)


タビスランドより

http://www.tabisland.ne.jp/news/news1.nsf/b6c131437f3cfe4a49256619000ed3d6/6427c413f339a117492578af0007bf7d?OpenDocument



この判決は、実務関係者としては意外な結果です。

申告納税制度においては、法律に定められている中で、選択可能な会計処理方法、特例に係る手続き等を納税者が自らの責任のもとで選択し、申告を行うものです。

そのため、一度申告した内容は納税者の責任のもとで申告したものであり、その内容を変更するのはなかなか難しく、原則税務署へ更正の請求を行わなければなりません。


しかし、この更正の請求が認められるためにも、申告内容が法律に従っていなかった場合や、その計算に誤りがあった場合等要件が厳格に規定されており、例えば、別の申告方法を選択することでより節税が可能であった等を理由としては、まず認められません。

また今回の事例のような、特例の適用について記載がなかった場合などは、単なる手続き上の不備であり、納税者の責任のもとで行う申告納税制度の中では、法律解釈の難しさを「やむを得ない事情」とする余地などないものと解釈もできます。


そのため、本判決は非常に納税者有利の珍しい判決といえるのです。

さらに、「やむを得ない」事情・理由などの宥恕規定は税法の法文上のいたるところに存在し、もし今後法律解釈の困難さを理由に宥恕規定が適用される事例が増えることとなると、あまりにも法的安定性に欠けた法律となってしまいます。

法律解釈が困難かどうかという線引きもあいまいなものであり、あくまでも今回の事例が特殊であるくらいに解釈しておいた方がいいかもしれませんね。


 

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