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税の徴収とその使われ方の適正性について その1

2016/10/08
課税当局(国や地方公共団体)による税の徴収とその使途についての筆者の関心は、職業柄、以前は専ら前者の徴収に重きがあったように思いますが、最近のマスコミ報道は、イヤでも後者の方の「税の使われ方」についての関心を持たざるを得ない状況にあります。すなわち、5,900億円の巨費を投じた豊洲市場への移転問題、このままでいくと3兆円を超えるとされた東京オリンピック開催費用、新国立競技場建設経費問題、富山市議会を始めとする地方議会の政務活動費不正受給問題等々と枚挙にいとまがない程の、杜撰な「税の使われ方」がなされている現実があります。これらは、国民、住民の政治に対する無関心からなのでしょうか、それとも政治ないし政治家の劣化由来のものなのでしょうか?
 
政治ないし政治家の劣化といえば、つい先日も、国民、市民の常識、感情からは遠くかけ離れた「政治とカネ」をめぐる質問とその応答が国民を代表する国会で遣り取りされていました。それは、政治資金パーテイに出席した3閣僚が、白紙領収書を受け取り、支払った金額を自らの事務所で後に書き入れるという内容ですが、3閣僚はこの事実を認め、「主催者の『委託』を受けて正確に書き込んでおり、発行側の領収書の作成方法には規定がなく、何の問題もない」としています。確かに、直ちに法令違反にはならないとしても、領収書の性質からして、カネを受け取った側が、いつ、何の名目で、いくら受け取ったかを払った側に証明するものです。現に、税務調査においては、自らが手書きした領収書を認めていないどころか、場合によっては「仮装・隠ぺい」として重加算税の対象にすらなされかねません。
 
政治家の信念に関しても、少し触れてみたいと思います。ここで数次にわたって取り上げ、また、平成29年度の税制改正論議の焦点となっていた配偶者控除の見直しを巡って、代替策として検討されてきた「夫婦控除」の導入が先送りされる公算が大きくなっています。その理由は、増税となる世帯が多くなり、世論の反発も予想されること、年明けに衆院が解散される事態になれば、与党に不利に作用すること、何より制度作りの難航が予想されるからだとされ、政府・与党内で慎重論が強まっているためだと言われています。しかし、前号でも触れたように、「夫婦控除」の制度には、中間所得層の負担増という短所等が存在することは最初から知られていました。いわゆる政治的過程によって税制が猫の目のように変わることがあれば、政治家の信念に疑いを持ちたくなるのは、筆者だけではないように思われます。
 
因みに、政府内では現行の「配偶者控除」の年収制限を引き上げて適用対象を拡大する案が浮上しているようですが、現行の配偶者控除には、その制度の恩恵を最大限に享受するために、パートなどで働く妻が年収を103万円以下に抑えようとして労働時間を調整し、そのことが、結果として、女性の働き方を制限しているとの問題点の指摘が根強くあり、「働き方改革」を掲げる安倍首相の意向を受け、自民党税調、政府税調ともに、一旦は、配偶者控除を廃止して、共働きなど働き方を問わずに夫婦なら一定額を控除する「夫婦控除」の導入を議論していたものです。今後は、再度、配偶者控除を見直すとともにその適用範囲の拡大を軸に検討がなされるものと思われます。
 
新たに検討されている案は、年収103万円以下で働く妻を対象にした配偶者控除の適用範囲を拡大するというもので、この範囲の拡大による税収減を防ぐため、控除を受ける夫の年収に1,000万円の上限を設けることが検討され、配偶者控除の適用範囲については「年収150万円程度」との主張があると新聞報道されています。とは言え、このような形で配偶者控除の適用範囲を拡大したとしても、夫の年収に上限を設ければ、新たに増税世帯が出るのは避けられないこと、また、女性の働き方を制限しているとされる「103万円の壁」が、新たに生まれる壁に置き換わるだけになることも考えられます。いずれにしても、限られた時間の中で、丁寧な議論が必要とされるところです。 (次号に続く)

文責 (G・K)

 

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