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費用の見積り計上について

2011/05/17
こんにちは。


本日、下記のようなニュースがございました。



東証・大証1部上場の大手海運会社「川崎汽船」(本店・神戸市中央区)が、大阪国税局の税務調査を受け、平成21年3月期までの5年間で、約64億円の申告漏れを指摘されていたことが16日、分かった。このうち約16億円は租税回避地(タックスヘイブン)と呼ばれる税率の低い海外にある子会社の所得を隠したと判断され、重加算税や地方税を含め約19億円を追徴課税(更正処分)されたもようだ。川崎汽船側は処分を不服として大阪国税不服審判所に審査請求し、現在も争っている。

 関係者によると、中米・パナマにある川崎汽船の子会社が船舶4隻の建造・購入について造船所と契約。直後に鋼材価格が急上昇、造船所側が当初の契約額では採算が合わないと主張したため、契約額について再交渉したという。子会社は価格上昇分を契約額に上乗せすることで造船所側と合意、上乗せ分約16億円も支払ったとして経費計上していた。これに対し国税局は、再交渉で合意したこと自体が虚偽と指摘。上乗せしたとする約16億円分が所得を圧縮するための経費の水増しと判断し、重加算税の対象にしたとみられる。

 海外子会社は通常、現地で申告・納税するが、パナマなど租税回避地にあると認められる子会社の所得は、タックスヘイブン対策税制に基づき、日本の親会社の所得と合算し、日本で申告・納税しなければならない。川崎汽船本体でも、海外子会社から借りた船舶の検査費用を実費でなく見積額のまま経費計上するなど、約48億円分の経理ミスを指摘され、申告漏れの対象となった。


産経新聞より



租税回避地については、下記をご参考頂ければと存じます。

http://www.kanayamakaikei.com/2011/01/post-151.html
http://www.kanayamakaikei.com/2011/02/post-148.html


戻りまして、上記ニュースの後半部分で、見積額のまま経費計上することが経理ミスと指摘されて申告漏れの対象となっております。


そもそも、費用の見積り計上は損金として絶対に認められないものなのでしょうか。

法人税法上、損金の額の取扱いについては、原則下記の3つの区分にて定められています。


1.その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額


2.その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定していないものを除く)の額

3.その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

上記文言を参照すると、まず販売費、一般管理費その他の費用については、「債務の確定していないものを除く」とカッコ書きされているため、原則見積り計上による損金計上は認められないことになります(減価償却費、一部の引当金繰入を除く)。

※債務確定の具体的な判定ですが、別に定めるものを除いて、以下の3つの要件すべてが求められます。

・その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること。

・その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

・その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

(法人税基本通達2―2―12)

次に売上原価等については、「収益に係る」とあるため、収益との対応関係を重視して計上することとされています。そのため、収益と個別的に対応関係にある売上原価等については、債務が確定していない場合でも、見積り計上による損金計上が可能と考えられているのです(法人税基本通達2―2―1参照)。


最後に3は、原則損失が生じた時において損金として取扱います。


ここで問題となるのが、原価と販売費・一般管理費とで取扱いが異なるため、どちらの費用に該当するか微妙な見積り費用があった場合です。

個別の取扱通達等で示されている費用もありますが、多様な契約取引が存在する今日に至っては、それぞれの契約に係る内容や、その費用の性質を検討しながら会計原則・基準に基づいて慎重に判断しなければならず、見積り計上をする際は細心の注意が必要となるのです。


 

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