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消費税、その増税延期と増税時期 その4

2016/08/19
前回のコラムで、社会保障制度が現状を維持、ないしそれを持続する可能性が危うくなっていることを述べました。というのも、これまで政府は「消費税の増税分は全て社会保障の充実・安定化に向ける」という説明をしてきていますが、そのこと自体が疑問に思われるからです。因みに、若干、古いものですが、参議院厚生労働委員会調査室が公表している資料によれば、平成27 年7月24 日に閣議了解された「平成28 年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」における今年度の予算は、消費税増税分8.2兆円のうち、「社会保障の充実」向けられる額は、1.35 兆円程度とされているに過ぎません。
 
元来より社会保障費の40%程度は国債によって賄われており、このことは納税者からの所得税、法人税等の税収によっても賄われていることを意味しています。既にご案内のように、法人税は国際競争力等の観点から、その税率の累次の引き下げが行われてきており、その結果、見込まれる消費税の増収分の大部分が、実質的には法人税の減税による減収分の穴埋めに充当されていることが国民の誰の目にも明白となっています。今後の社会保障需要が増大していく中で、政治経済的要因でタイムリーな消費増税ができないなら、以前にも触れたように、当面は消費税以外の税収を確保する方策を取らざるを得ないことになります。
 
その場合には、所得税改革の具体的な検討の一環として、配偶者控除の廃止が先ず議論されるべきだと述べてきていましたが、時まさに政府税制調査会は、専業主婦世帯を優遇し、女性の社会進出を妨げる配偶者控除の見直しを検討する議論を9月から始めるとの新聞報道がありました。それによれば、現行の配偶者控除は、妻の年収が103万円を超えると不適用となるこの「配偶者控除」を廃止して、新たに夫婦であれば誰でも控除を受けることができる「夫婦控除」に転換して女性の社会進出を促進する方向が検討されるとのことです。なお、政府税調は、所得税改革は配偶者控除のみならず全ての控除制度を見直し、改正前と改正後の税収がほぼ等しくなる、いわゆる税収中立を維持したいとしているようです。
 
ところで、税が経済活動の成果に即して課されるものであるとすれば、その経済活動が活発である程、税収は増えることになります。そして、その経済の活発化・活性化の指標となるべきものにGDPという経済指標があり、そのGDPの構成要素の主要なものには、消費と投資があります。先頃、内閣府は4~6月期のGDP速報値を発表しましたが、前期比0.04%増、年率換算0.2%で、殆どゼロ成長に留まっていて個人消費、企業の設備投資はともに力強さを欠いています。アベノミクスの肝である、金融緩和と財政出動は、想定した経済の好循環が得られてはいないように見えるのは私のみではないと思われます。
 
だからといって、さらなる財政出動は財政規律健全化の観点からは問題があり、消費増税の延期は、高齢化社会にとって必要な財源確保に暗雲をもたらします。現政権の特徴として気付くことは、「刹那主義」的といえば言葉が適切ではないかもしれませんが、目先の「今」をよくすることにあまりにも力点を置き過ぎているように見えます。消費増税の延期は景気情勢からみれば正しい判断だったと思われますが、財政再建には税制改革が待ったなしの状況です。国民が次の増税を織り込みスムーズな消費行動がとれるような増税凍結期間の確保とその間に消費税以外の税収確保を視野に置いた税制改革を議論しておくべきものと考えています。 (了)

文責 (G・K)

 

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