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高等教育無償化は、先ず、そのための財源から考えるべし!!

2017/06/22

安倍首相は大学などの高等教育の授業料無償化を憲法に書き入れる考えを示し、これを受け、自民党では恒久財源を確保する検討を始めたと最近の新聞には報じられている。しかし、高等教育無償化は憲法に書き入れなければ実現できないものかと言えば、そうではなく、本音は憲法9条改正への風当たりを弱める思惑があるように思われてなりません。それと言うのも、戦争放棄を規定する現行の憲法91項、戦力の不保持などを定めた同2項をそのままにした上で、同条に3項を新たに加えそこに自衛隊を明記するとの考えのようで、これには党内にも異論があるようですが、自民党憲法改正推進本部は、首相提案に関しては他党の理解を得やすく、実現可能性はあるとの認識を示しています。

 

それはともかく、標題の高等教育無償化についてですが、筆者は2程前まで大学に勤めていた関係で、先ず、その当時の大学の定員と入学者数について述べてみたいと思います。在職時の後半からは、徐々に受験者数、入学者数ともに減少傾向が見られ、とうとう退職する時期には、ご多分に漏れず定員割れの状態でした。そのような状況にも拘らず、わが国における私立大学は増え続け、現在では国公立大学177校、私立大学600校の合計777校が存在しています。少子化の下で18歳人口は減り続けていくことが分かっているのに、大学の数は逆に増えていきました。現在、このうちの特に私立大学においては、少子化の影響を受け、定員割れを来している大学は約半数あると言われています。順序からから言えば、高等教育無償化が議論される前に、ここの部分にメスを入れることが先決であり、その後に無償化の議論なり検討がなされるべきものと考えられます。

 

内閣府の試算によれば、大学の入学金や授業料を無償化するには約31千億円かかるとのことです。大学入学後に授業に出席しない学生の多くに経済的理由があることは確かであり、それ以前に同様の理由で大学進学を諦める人もいます。アンケート調査によれば、教育費の高さは少子化の最も大きな要因の一つであり、このことを国としてどう捉え、どう対処していくかは、大きな政治課題でもあります。しかし、それ以上に大きく深刻な問題は、簡単には得られない財源の問題です。と言うのも、高齢化の下で、自然増の形で膨らむ社会保障関連の財源不足は年々30兆円を超える赤字を出し続けている現実があります。自民党内には「教育国債」の発行が議論されているようですが、これは、看板を替えただけの「赤字国債」であり、確たる財源とは言えません。また、無償化で進学率が上昇するようなことがあれば、さらなる財源を必要とすることは明かです。

 

日経電子版によれば、2018年度以降の予算編成で、高等教育無償化が大きな争点に浮上しているとされています。先にも述べましたが、自民党内には「教育国債」の発行で大学教育までの費用を無償化する案や、社会保険料の引き上げで幼児教育を実質無償化する案があり、教育無償化の議論は少子化対策の目玉として自民党主導で進んでおり、子育て費用を軽くして、子どもを産みやすい環境を整えるねらいがあるようです。野党も教育無償化には賛成しており、民進党は就学前から大学までの無償化などを次期衆院選の公約の柱に据える構えを見せており、日本維新の会も、憲法改正の柱の一つに掲げています。一方、財務省は財政制度等審議会の教育予算を巡る議論で「恒久的な財源を検討する必要がある」とクギを刺しており、そのための財源や対象は絞れておらず、意見が入り乱れているとされています。

 

いずれにしても、今後の少子高齢化社会にあって、高等教育無償化や社会保障財源のためには特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税がそれらの財源にふさわしいと考えられ、その引き上げ時期についての再々延期はないものと考えています。

文責(GK

 

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