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相続こぼれ話(ご存知ですか死因贈与契約?) その2

2017/09/18

ようやく窓口担当の人が戻って来ても、近時はどこの金融機関も相続関係(死因贈与を含む)の受付業務を当該金融機関の本部の「相続センター」一元化しているようです。そこで、大概、その手続きをするために窓口を訪れた人の資格(被相続人との関係、どういう立場で相続関係の業務を行うか等)を証明した上で、当日、窓口に持参した書類等のコピーを預け、後日、件の「相続センター」から、その金融機関所定の届出書や説明書等が郵送されて来ることになります。しかし、それらの郵送書類の中には、「遺産分割協議書」による手続、「遺言書」(公正証書遺言)による手続、「遺言書」(自筆証書遺言)による手続、「調書」による手続等については詳細に書かれていますが、「死因贈与契約書」による手続きについては、記載自体が全くありません。

 

尤も、「死因贈与契約」自体があまり一般的ではないようです。かつて法学部のある大学で学んだ方なら、多分、ご記憶の片隅にはあるのかとは思いますが、因みに、死因贈与契約については、わが国の民法第554条にその根拠規定を置き、「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈の規定を準用する」としています。前稿でも触れましたが、死因贈与も遺贈も、ある人が死亡した場合、その死亡した人の財産を他人にあげるというものですが、それらの違いは、死因贈与は「契約」であり、受贈者の同意が必要だということです。一方、遺贈には遺言が必要であり、遺言する人の一方的な意思表示で効力が生じます。このように、若干の違いがありますが、よく似ているところから、民法において、上記のような規定振りとなっています。なお、死因贈与は「契約」ですので、「口頭」でも成立します。

 

「死因贈与」は、ある意味、形式的には然程厳格ではない制度ということができます。重複しますが、この制度は贈与の一種であり、贈与は法律上あくまで契約ですから、贈与の相手方との間に「あげる」、「貰います」という合意が成立していれば、贈与契約は有効ということになります。また、死因贈与が特にクローズアップされる場面として、いわゆる「無効行為の転換」が挙げられます。よく、例に引かれますが、自筆証書遺言にサインはあったもののハンコが押されていなかった場合などです。この場合、遺言としては無効であっても、遺言者、すなわち贈与者の意思は明確であるとして死因贈与としては有効とされる余地があります。このように、ある法律行為が法律の規定に違反していて無効であっても、別の法律行為としての効力を認めることを「無効行為の転換」といっています。

 

惜しむらくは、死因贈与契約は、制度として存在し、またこれまで述べてきたようなメリットがありながら、その認知度となると今一つの感がしてなりません。各金融機関における相続センターからの手続き案内の書類にも一言の記載もないのも分かるような気がします。事ほど左様に、金融機関の窓口、あるいはオフィス全体を見回しても、その手続きに精通した人材がいないところから、本来、一度で完了する筈の手続きに、二度三度と足を運ばなければならない不便さを顧客の視点で捉えて欲しいものです。そのためには、顧客の立場からは、先ずは、制度内容の概略を、そして次には、似た制度である遺贈と死因贈与の類似点と相違点ぐらいを時間がある時にでも、一読して頂きたいと願うものです。

 

今後、高齢化がますます進展するにつれて、相続の形態にも多様化が予想されるところです。死因贈与の制度は、それなりのメリットを有し、使い勝手もそんなに悪くはないものと考えられます。また、死因贈与による無効行為の転換が認められるための法律行為としての要件もそう難しいものではありません。判例上、無効な遺言が死因贈与として有効とされた例としては、概ね、相手方が遺言の内容を知っていれば契約として成立するとされています。この機会に、制度の活用に向け、先ずはこの制度を知ることから始められたら如何でしょうか。(了)

文責(GK

 

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