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連載中の話題から一旦、離れて・・・

2018/03/18

このコラムで、これまで5回にわたって「税法違反被告事件」の裁判を傍聴した感想等を述べてきましたが、M学園への国有地売却に係る決裁文書を財務省理財局が書き換えたと新聞が報じて以来、国会は混迷の度合いを深め、世間もまたこの話題で一色となっています。そこで、今回はこのコラムにおいても連載中の「堅い話題」から、一旦離れ、「決裁文書の書き換え」の問題点やその背景等について触れてみたいと思います。


32日、A新聞は国有地売却に関する決裁文書が書き換えられたとスクープしました。その内容は、契約当時の財務省理財局の決済文書には、M学園との小学校建設用地の取引について、「特例的な内容」との表現があり、また、同学園の要請への対応が時系列的に詳細に記述されていたものが、国会に開示された文書のコピーでは、それらは削除されていたとするものでした。 


財務省は、国会においてM学園との事前の価格交渉はしていないと否定し続けてきましたが、それを根底から覆す内容であり、また、近畿財務局で国有地売却の交渉、契約を担当した職員が遺書を残して自殺していたことも報道され、当時の財務省理財局長だったS国税庁長官が辞任する事態となりました。書き換えられる前の文書には、M学園のK前理事長の発言として安倍首相夫人に関する記述もありましたが、書き換え後の文書では削除されていたところから、結局、この問題の政治的決着ないし「落としどころ」は、以前から週刊誌等で記事となっていたように、「財務省をスケープゴート」にすることしかないだろうといわれていました。しかし、事ここに至って、最早、S国税庁長官の辞任は時期を逸し、それだけでは「落としどころ」にはなり得なくなっている状況です。 


事態は、日に日に予想もできない方向に展開していき、安倍政権も野党も先が全く見えない濃霧の中に突入しているように思われます。もつれた糸をほぐせば、地中のごみの撤去費82000万円を差し引き、「13400万円」に、そしてその「10年の分割払い」の土地の売却という財務省理財局の決定が適切か不適切かの問題に過ぎなかったものを、なぜ安倍政権は「国有地売却は適正」だと言い張り続けてきたのでしょうか?M学園の問題もそうであり、K学園の獣医学部新設問題についてもいえることですが、安倍首相の動くところに「特例的な内容」がいつも存在するのでしょうか?それも終わってみれば、物事が、いつも安倍首相と昵懇ないし懇意の間柄である人物の側に有利に作用した結果、それらの人物の所期の目標なり、目的が実現されているように思われてなりません。 


そこに財務省(国交省大阪航空局、K学園の認可については文科省等の官僚)の安倍首相に対する「忖度」は、本当になかったのか、さらにいうとすれば、安倍首相ないし首相夫人の直接的な関与はなかったのか、徹底的な究明が必要だと考えられます。というのも、昨年2の国会で、安倍首相は、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」とまでの答弁もしているからです。


今回の財務省による、いわば「禁じ手」である決裁文書の書き換えは、政権の命運を左右するのみならず、議会制民主主義の根幹にかかわる深刻な事態に立ち至っていることを、行政府をはじめとし、それを支える官僚、与野党の議員、延いては全国民が認識すべきと考えるところです。そして、もし財務省を含めた他の省庁の官僚が、首相に「忖度」をした結果だということが明らかになれば、官僚のみにその責任を押し付けるのではなく、その背景にある、内閣府が握るとされる圧倒的な「官邸主導」の強大な人事権それ自体の問題を見直し、メスを入れるべきときといえるのではないでしょうか。(了)

   文責(GK

 

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