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租税不服申立について(審査請求「意見書」編…その7)

2020/11/20

前回までに触れてきた8点が原処分庁の意見書に対する請求人の意見として、これまでに述べてきたものです。原処分庁の主張(意見)は、その答弁書、請求人の意見に対する反論書、そして意見書等を通して、若干の使用する文言の違いはあるものの、それらの全体を通して同様の主張を繰り返し、それまでの双方の議論ないしは主張をなしてきたことを蒸し返すものに過ぎず、それらに対し請求人は、その都度、証拠を挙げて反証しているところ、当該反証に対し適切、適正な時期に法的効果を伴う再反論を示すことなく、放置していたものを多く含んでいます。請求人としては、それらに対し更に繰り返して反論するつもりはありませんでしたが、原処分庁の「虚偽的表記、表現がないことは明らかである」とする認識及び主張に対しては自らの主張が既に論理的破綻を来しているにも拘らず、際限なく事実に基づくことなく、根拠のない反論を繰り返し、徒に審査、審理を長引かせるものであるところから、それらを指摘して、反論してきたところです。

 

その意味で、コラムの内容が雑然とし、重複、錯綜する恨みもあるところから、確認のため、これまでの8点の他に、以下の事項についても請求人の意見として整理しておきたいと思います。その1は、原処分庁の本件更正処分等においては、あらゆる局面における法令解釈・適用の誤りがあり、中でも、⑴消費税に関しての法令の解釈、適用の誤りは、その最たるものと言えるでしょう。原処分庁は、更正処分当時の関係各法人に係る新設法人に対する消費税の免税期間に関する法令解釈・適用を誤っています。すなわち、平成253月期、平成263月期(爾後適用要件の一部見直しあり)及び平成273月期までの期間における、独立した法人間(取引の相手方である関係各法人は課税期間のない新設法人)の、法令の解釈・適用についてです。と言うのも、原処分庁は、(聞き取り調査時における)対象者への課税当局に有利な申述(証言)の強要及び誘導によって引き出された、「虚偽事実」(申述)を認定し、本件各関係法人には事業実体がなかったとする事実認定をしています。

 

これまでに累度にわたって述べてきているように、本件各関係法人はいずれも適法に設立されており、当然に新設法人に係る基準期間の納税義務免除制度の適用を受けるべきところ、何らの法的根拠をも示さず、その「法の缺欠」ないし「法の不備」による、本来、国が負うべき責任を納税者に押し付け転嫁し、当該制度の適用を否認、当該期間に該当する本件各関係法人の消費税額分を請求人の計算に引き直しています。また、消費税法には行為計算否認規定がないにも拘らず、これについても根拠規定を明示することなく、請求人から関係法人(HS社)への正常な外注費を否認して請求人の人件費として付け替え計算(加算)していることから、原処分庁の行為は、憲法84条、30条及び刑法223条はもとよりその他の関係法令にも違反することになります。

   

⑵法人税の隠蔽・仮装認定を誤っています。本事案は、旧関与税理士の期ズレは許されるとする事実誤認、法人税法22条各項の解釈及び会社法並びに企業会計原則に違反する会計処理(期中現金主義)及び故意のない事業年度内に整理し切れない売掛、買掛金等の複合的要因により惹起されたものです。これに対し、原処分庁を含む課税当局は、タマリ(秘匿している脱税資産)や自白等の直接証拠がない中で、「はじめに結論ありき」の方針の下、本来、隠蔽・仮装ではないものを請求人による隠蔽・仮装行為と無理矢理に決めつけて認定しています。その一方で、関与税理士であったI税理士の故意の認定はできないまま、強引に「偽りその他不正の行為」との結論になるよう申述を誤導、その結果、法令適用を誤っており、刑法223条及び憲法18条等にも違反する破目になっています。

 

なお、納税義務者と税理士は日常の会計・税務処理及び決算・税務申告を含めた一連の業務は、「委任・受任の関係」にあるところ、本件においては、受任者であるI税理士に故意が認定できず、処罰の対象となっていません。そうだとすれば、原処分庁が主張する「通謀」は成立せず、委任者(請求人)も処罰の対象とならないのは明らかです。何故なら、関与税理士と納税義務者との関係は、法律上は「委任関係」に該当し、一般的には、受任者は委任者に対して独立した地位を保持しており、自己の裁量によって活動することから、委任者は、受任者(実行行為者)の行為について、指揮監督権が及ばず、使用者責任を負うことはありません。

 

⑶重加算税等の賦課は誤りです。上記⑴及び⑵の理由から、隠蔽・仮装行為は認定できず、重加算税は賦課されないことになります。

 

⑷関係法人の事業実体の否認の認定は誤りです。本件各関係法人は、いずれも、適法に設立され、独立した実体を有して事業を継続していたところ、原処分庁は、事実ではない「事実」等を関係者の申述等から強引に引き出すことによって認定し、本件各関係法人には事業実体がないものと誤った判断をなし、もって強引に根拠のない法令を当て嵌め請求人の計算に引き直し、加算しています。中でも、本件関係法人のうち、HS社は現在もその事業を継続しており、原処分庁を含む国税当局の調査、認定は全く杜撰であり、「はじめに結論ありき」の恣意的考え方の下、如何に強引に本件調査を進めたかが窺われるところです。ともあれ、原処分庁は、これにより本件各関係法人の事業に係る殆ど全ての項目(法人税に関しては、売上、経費、仕入、その他の費用等)、HS社の消費税に関しては、課税標準、控除対象仕入税額等の殆ど全ての項目)を否認して、請求人に付け替えていますが、その際、HS社の消費税については、請求人の名義で帳簿及び請求書が作成されていない(HS社の消費税に関する帳簿等は、当然、自社名義で作成されており、請求人の帳簿等として作成、備え付けられていることはあり得ない、仮に、そのようなことがあるとすれば、仮装目的の二重帳簿を作成していることになる。)ことを理由として、仕入税額控除を否認しています。

 

これらに関し、請求人は、審査請求書において原処分庁が否認して付け替えるべく根拠規定を法人税法222項としていることについて、疑問がある旨主張しました。これに対し原処分庁は、答弁書において、法人税法222とし、の内容には法人税法11条及び消費税法131項が含まれていると主張しました。請求人は直ちに反論書において、「法人税法11条及び消費税法131項は、一定の条件下の所得の帰属についての規定である」ことを反論するや、原処分庁は「…法人税法11条及び消費税法13条の観点から検討しているものの、これらの規定に基づき判断したものではなく、総合的に勘案した上で…、222項に基づき…判断した」と主張を変遷させました。しかしながら、222項は、いわゆる計算規定であるところ、当該規定に否認規定の役割を担わせ、独立した二法人間の取引の一方を否認し、他方の計算として引き直すことまでは、当該条文の文言からは読み取ることはできず、またその権限が原処分庁に与えられていると読み取ることは不可能であることを反論主張しました。このように、原処分庁の主張には一貫性がなく、常に変遷しており、本件更正処分等に係る根拠も曖昧であり、本件更正処分等自体の真実性、信頼性には大いなる疑問があります。(つづく)

文責(G.K

 

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