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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その1)

2020/12/01

前回までは、審査請求における原処分庁を含む課税当局(以下、「原処分庁等」といいます。)と請求人との間の主張及び意見、それらに対する当事者間それぞれの反論等に関して述べてきました。それらの対立する意見に対しての国税不服審判所(以下、「審判所」といいます。)の果たす役割や機能につき、審判所の広報用パンフレット「審判所ってどんなところ?」によれば、「公正な第三者機関」として、適正かつ迅速な事件処理を通じて、「納税者の正当な権利利益の救済を図る」とともに、「税務行政の適正な運営の確保に資することを使命」とし、「審査請求人と税務署長や国税局長などとの間に立つ公正な立場で審査請求事件を調査・審理して裁決」を行っていると表示されています。

 

また、令和元年1218日のS審判所と請求人(代理人)との第1回打合せ時においてHS副審判官は、当審判所は「事実に基づき、税務行政上に係る事項の判断をするのではなく、(事実についての)純法律的な判断をする」との、説明をしています。そして、本件審査請求事件の審理の終盤において当該審判所から請求人に送達された「争点の確認表の送付について」なる文書の送付案内文には、審判所は「審査請求人と原処分庁との間に立つ公正な第三者的機関」であり、審査請求の審理に当たっては、「双方の主張を十分に聞いた上で、公正妥当な結論を得る」よう努めていることが表明されています。そこで、今回からは、上記に明示されている審判所の役割なり理念と機能は、果たしてその通りか、代理人として体感した本件事件の審理過程を踏まえ、検証してみたいと思います。

 

そもそも、代理人が本件事件に関わることとなったのは、平成281025日、当時の納税義務者(不服申立後は請求人)の取引金融機関のM支店長からの下記の依頼によるものでした。「大事なお客様が、関与税理士の手違いで大変厄介な税務問題になっているようなので、相談に乗って上げて欲しい」、を内容とするものでした。その依頼を請け、当該納税義務者(当時の法人の代表取締役及び専務取締役)との数回の詳細にわたる面談の後、平成281117日、S国税局に本件事件の全体像の把握、確認及び調査状況等の内容確認の目的で出向いたのが始まりでした。しかしながら、その時点では時既に遅く、同国税局査察担当者らは、開口一番、「先生、来られるタイミングが遅過ぎました。本件は、既に検察庁事案となっており、現時点では、本件に関し何もお話しすることはできません。」と、にべもない対応でした。

 

新たな税務代理人としては、状況が何も把握できなければ代理人としての今後の業務等ができない旨を伝え、必死に状況の概略説明でもと、お願いしたところ、一つだけ言えるのは、「関与税理士が納税(義務)者に脅されて、脱税に係る申告書等を作成していたようです。」とのことでした。また、一連の検察庁への告発業務が終了し、国税局から処分庁に修正に向けての業務が移行する、その「最終段階で、(修正申告に関する)打ち合わせ及び処分庁からの修正の慫慂並びに(税務)調査結果の説明があります。」。その時までに、当国税局からも説明することになるので、二重に説明することになりますが我慢して聞いて下さい、と当時のS国税局調査査察部査察第三部門の主査ST(NS氏も同席)らは重い口を開きました。

 

当該査察担当者らが述べたように、脱税事件の多くの場合は、一般的に、納税義務者は上記業務の最終段階では脱税の事実を認めていることから、修正申告に向けた手続はスムーズに進行します。しかし、本件の場合、S国税局の査察担当者の「関与税理士が納税(義務)者に脅されて、脱税に係る申告書等を作成していた」とする査察担当者の認定(認識)が気に掛かり、一瞬、好ましくない予感が過りました。というのも、S国税局を訪れる前に、納税義務者(当時の法人の代表取締役及び専務取締役)との数回にわたる詳細な面談を経て代理人が得た心証は、当該査察担当者の認識とは全く異なるものであったからです。また、当該納税義務者については、金融機関のM支店長から紹介を受け事前に聞き及んでいた通りの、脱税などは考慮に入れない優れた経営感覚を持ち合わせた人柄で、一般的な脱税事件の行為者から受ける印象とは全く異なっていたからでした。

 

ともあれ、平成281121日に、当該納税義務者に係る税務代理権限証書をS国税局に提出、同月24日に、S国税局長宛に、「逋脱する意図はもとよりなく、関与税理士がした申告等に誤りがあるのであれば、可能な限り早期にそれらを是正し、また、経理体制の刷新を図るため、この際、税理士事務所を変更するつもり」である旨の上申書を提出しています。当該上申書の内容に沿って、平成281130日に、S国税局に予納の申し出及びその税額を問い合わせ、同年125日に第一次の予納を済ませています。その後、平成29410日に、既述のST(NS氏も同席)から代理人に「納税義務者は修正申告の意思が今でもありますか」と問われたので、代理人は、「修正申告の件は、納税義務者に確認して返答しますが、多分、しないと思います。」と答えました。

 

というのも、上記の国税局職員ST氏らの「関与税理士が納税(義務)者に脅されて、脱税に係る申告書等を作成していた」とする認識と当該納税義務者の認識とには、あまりにも乖離があるように思われたからです。平成29412 日、別件の逋脱嫌疑で勾留中の納税義務者に弁護人を通して確認してもらったところ、案の定、当該納税義務者は、「関与税理士が行った申告に誤りがあり、それによって納税義務者の納付すべき税が過少となっていたのであれば、直ちに、それに対応するつもりではあるが、こちらが主意的に『脱税行為を税理士に指示したことを認めた上で』修正申告をすることは、自らが主導的立場で脱税行為を行っていたことを意味することから、本意ではなく、自分を偽ることはできない」旨、A弁護士らに回答しています。この回答を受けて、代理人は、修正申告の慫慂(修正申告の勧奨)は受け入れられないとする意思を伝えるべく翌日の13日、S国税局に電話したところ、担当者のST氏は不在につき、その旨をNS氏に伝えています。

 

その後、平成29829日に、ST氏から別件での電話があり、その折、同氏は、代理人に「調査結果の報告後に更正処分があるので、(当該処分に)不服があれば、3ヶ月以内に再調査の請求若しくは審査請求をすることができる」とする内容を述べています。翌々日の31日、代理人は、ST氏に別件の税務代理権限証書提出の件、及び本件の今後の進行見通しと調査結果の報告日程等について質問をしています。これに対し、ST氏は、調査結果の説明の日程等については、確定していないが、必ず行うのでそれまで待つようにと回答しています。その後、納税義務者及びその関係法人のうちの1社のそれぞれの所轄税務署の法人7部門T統括国税調査官及び法人8部門N統括国税調査官から、同年の1110日に代理人と修正申告について打ち合わせをしたい旨の連絡があり、代理人は、同日、S税務署に赴きました。この打ち合わせの遣り取りの詳細については、これまでにも、累度にわたり詳細に述べているところから割愛したいと思います。

 

このように、国税当局の修正申告の勧奨を受け入れなかったことから、納税義務者及びその各関係法人の所轄税務署長から、平成291122日付で納税義務者及びその関係法人2社に、その関係法人のうち、1社には同年1115日付で、平成253月期から平成273月期までの間のそれぞれの法人の該当期の法人税額等及び消費税額等の更正通知書等及び加算税の賦課決定通知書等の送達を受けました。その後、平成291129日になり、ST氏から代理人に電話があり、「査察調査に至るこれまでの経緯及び調査結果等については、説明しない」旨の連絡がありました。これについては、納税義務者及びその関係法人が修正申告をしないことが明らかとなると同時に「争う」姿勢が鮮明となり、調査結果の説明をすることで事実(真相)が明らかとなれば、何かと納税義務者(代理人)らに追及される口実を与えることを危惧したものと推測されます。(つづく)

文責(G.K

 

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