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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その7)

2020/12/29

前回までに述べているような経過を辿り、審判所からは令和2年6月15日付で、その時点の「争点の確認表」が請求人(代理人)に送付されてきました。しかしながら、当該確認表には、本件審査請求事件において最も重要と思われ、根幹をなすと考えられる原処分庁側及び請求人側双方の主張(争点)に係る法的判断に関する要約記載が不十分ないし欠落しており、取り上げられていませんでした。請求人はその時点では、本件審査請求事件の争点として以下の7点の重要項目を考えていました。すなわち、⑴原処分庁が、更正処分の理由附記の不備を認めて一旦取消したものを、同日付で理由附記を追完し、新たに原処分としてなした本件法人税額等及び消費税額等の更正処分等は有効か否か。⑵原処分庁が代理人に行ったとする説明はあったか否か、仮にあったとすれば、通則法74条の11第2項の「調査の終了の際の手続」の適切性の要件を満たすものと法的に評価できるか。

 

⑶法人税法22条2項の規定は、課税庁が恣意的無限定に認定基準を定め、その適用範囲を定めることなく、否認規定として適用することができるか否か。⑷行為計算の否認規定のない消費税法において、正常な取引を原処分庁が恣意的に否認して、取引の相手方の行為・計算として引き直すことができるか否か。⑸違法収集証拠の総合が税法領域において、証拠能力を持つか否か。また、関連して、原処分庁がなした当該違法収集証拠による曖昧な事実認定の総合に基づき法人税法22条各項を適用したとする本件更正処分等は適法か。⑹顧問契約における関与税理士の誤認による一連の申告業務等の処理ミスにつき、受任者としての責任が問えないものを、委任者である納税者のみの責任と構成することができるか否か。また、それに重加算税を課すことができるか。⑺本件更正処分等に関して、税務調査時の原処分庁の指導、発言等を後に税務調査時の調査官の発言は公的見解ではないとして、原処分庁が撤回したことが、禁反言の法理(信義則)等の法令違反を構成するか否かの7点についてです。

 

以下に、⑴から⑺までの項目の概要について触れてみたいと思います。⑴については、最高裁が繰り返し原処分の無効、取消しの判断を示しており、原処分庁が本件における当初処分の一旦取消、同日付での理由差替え、再更正処分をしたことの違法性についての審判所の判断を求めるものです。⑵については、原処分庁からの本件更正処分等に係る調査結果の説明に関するもので、原処分庁は、代理人に「非違の内訳の提示、非違項目、非違金額及びその理由を代理人に伝え…」、「修正申告等について」なる書面を交付し、その書面には代理人の署名捺印があるとする主張ですが、これは明白な虚偽です。調査結果の説明もしなければ、当該書面の左上の日付の筆跡は代理人のものではなく、明らかに偽造されていることを示しています。また、原処分庁が説明したとする当日の19日後の平成2911291650分に、S国税局の査察第3部門のST氏から電話で「今回の調査結果、経緯等については説明しないことになりました」との連絡を受けています。1110日に調査結果等の説明をしていたのであれば、同氏が1129日にそのような電話を掛ける必然性はなく、租税行政を司る原処分庁の行為として代理人である租税法学者をも欺こうとする恥ずべき「嘘」であり、国家犯罪にも該当する、許されない行為です。

 

⑶については、口頭意見陳述時の請求人の質問の主旨を原処分庁は取り違えているように思われます。質問の主旨は、本件法人税額等及び消費税額の更正処分等に係る事実認定及び法の適用に関するもので、原処分庁自らが主張した「法人税法222項を適用した否認」における同条同項の法的意義及び法的解釈並びにその射程(範囲)についての原処分庁の認識を問うものです。これにつき、原処分庁は7月3日付の請求人の質問事項に対する回答書において、「個々の事実関係に基づき、法令の規定に照らし適正に課税を行う」としながらも、「法人税法第22条第2項の法律論的解釈について、意見を述べる立場にない」として、同条同項の規定の趣旨等の認識も明らかにしないまま、無限定、無制約、オールマイティで同条同項を適用し、これを否認規定とすることが可能であるかの、憲法84条、30条無視の誤った認識を持っている旨の回答をしているからです。請求人は憲法30条に基づいて、法律の定めのあるものについてのみ、納税の義務を負い、また、同84条に基づいて、租税を課される場合は、法律又は法律の定める条件によらなければならないものとし、法律の規定の枠を超越した、拡張解釈は許されないとの認識を有しているところから、原処分庁の認識と請求人の認識には大きな乖離があり、本件審査請求の争点になるべきものと考えています。

 

⑷については、上記⑶とも関連しますが、原処分庁が課税するためだけの論理に基づいて、一方的、恣意的な基準をたて、その基準の枠外であるとして一次下請事業者と二次下請事業者間の正常な取引を否認して、一次下請の行為・計算として引き直すことはできないと請求人は考えています。また、原処分庁は、当初、消費税法第13条第1項を適用して否認するとしていたものを、請求人が反論するや、根拠条文についての主張を替え、新たな主張として、消費税法第2条第1項第8号を参照し、消費税法第28条に規定する資産の譲渡等に該当しないと認定したと主張を変遷させています。これは、元々の本件更正処分等の当時から現在を含めて、根拠規定等すらも確定していない、曖昧な認定によって処分を先行させていたことを示しており、原処分庁と請求人の主張とは対立し、争点となるべきものと考えています。

 

⑸については、税務調査及び査察調査においては、数々の違法、強引な手段、手法及び手続が観察されるところから、それらに対して具体的に攻撃・防御をするために、それらが牴触する法条文を掲げ、反論、質問及び主張をしているところ、争点の確認表においてはそれらが殆ど捨象されています。よって、公正、公平な審判の実現のためにも、これらの請求人の主張を確認の上、争点の確認表にそれらを反映した記載、若しくは追加すべき争点であると考えています。

 

⑹については、これまでにも主張してきたように、本件更正処分等においては、旧関与税理士が自身の事実誤認に基づいてした一連の税務申告業務等の誤り及び事実誤認に基づく指導の誤りによって請求人らが被った人為的ミスによるものと言えます。例えば、期中現金主義による会計処理及び帳簿作成(決算修正時点まで法人の利益が確定しない)、期ズレが(租税の納付は当期でも来期でも)許されるとする誤った会計哲学等による税務申告等です。また、原処分庁は、I税理士の国税局職員による強引な誘導、誤導によって作成された質問てん末書に基づいて、実際にはなかった「利益調整」を作出して認定し、これを前提に仮装の立論をしています(前提が崩れれば、立論自体が崩れる)。しかしながら、当該質問てん末書は、任意性及び真実性を全く欠き、また、対立当事者からの反対質問を経たものではないことから、証拠能力を持つものではないことは、これまでにも述べてきているとおりです(憲法381項、刑訴法321条)。

 

加えて、原処分庁は、「通謀による」と一方的、恣意的な認定を行い、委任者としての請求人の与り知り得ない、受任者としての税理士が行った一連の税務申告等の業務に仮装行為があったとし、その責任を請求人にのみ負担させる一方で、通謀の相手方とされ、実行行為者である税理士については、現在時点においても、何らの責任が問われていません。通謀とは一人でなすものではなく、一方が責任を追及されることがなければ、その相手方も責任を追及されることはないのは当然であり、すなわち「通謀」は存在しなかったことを示しています。この点についての主張も原処分庁と請求人とは異なり、争点となるべきものと考えています。

 

⑺については、⑸にも関連しますが、原処分庁は、「調査担当者が請求人と本件各関係法人の事業実体について応答した記録がな」いとし、当時の記録を滅失ないし紛失したかのような答弁をなし、その無責任さに、「請求人のカウンターパートにならないのでは」、との請求人の重ねての質問に、「カウンターパートになり得るか議論する必要なない」、青色取消しを「約束した事実はない」と、まるで誠意の感じられない答弁を繰り返しています。課税庁自からが約束した言動及び行動に矛盾する態度をとり、納税者の信頼を裏切る不誠実な行為をなすことは、民法1条2項の信義則に反することから認められません。剰え、「調査担当者の税務調査時における発言、見解は公式見解を表示したとの評価に当たらない」との暴論を展開して責任を回避し、単に当該税務調査における調査官の発言の公式性を否定するのみならず、通則法74条の2に根拠規定を置く国税職員の質問検査権に基づく税務調査を租税行政庁自身が自己否定し、法令を軽視ないし無視する主張をしています。原処分庁と請求人間にはこのような主張の乖離が見られるところから、争点として追加されるべきと考えています。(つづく)

文責(G.K

 

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