Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その9)

租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その9)

2021/01/09

次にS審判所が確認表「争点に対する当事者双方の主張」の請求人欄に記載している主張の概略についての文言の追加・訂正に関して述べてみたいと思います。請求人は、争っている原処分及び当該原処分に先立って行われた本件当初各更正処分等について、審査請求書、反論書及び請求人の意見書においてその違法性を繰り返し法的観点から主張してきており、それらの主張に基づいて、欠落している法的観点からの主張及び文言を以下の確認表の「争点に対する当事者双方の主張」の⑴から⑹までのそれぞれの争点の原処分庁と請求人との対照表中の請求人欄に記載されている主張、文言の概略に追加・訂正するようS審判所に求めています。

 

⑴争点1(本件調査に係る調査手続に本件各更正処分等を取り消すべき違法があるか否か。)については、確認表の原処分庁と請求人との主張の対照表の請求人(の主張欄)の「査察調査において、取調べを受ける側の精神状態は、取調べをする側から誘導されれば『分かりました。』と回答するのが心理です。したがって、質問てん末書に署名押印があるからと言って、任意性・信頼性に疑義があれば、それは絶対的なものではない。」に続けて、「課税当局による質問段階及び質問てん末書等の書面の作成段階での任意性及び真実性が担保されておらず、刑事訴訟法の規定によっても、対立当事者などによる(反対)質問を受けたものでないような場合は証拠能力を持たない。」を追加することをS審判所に求めています。

 

争点に関して請求人は、原処分庁が「事実」と主張する被質問者の申述内容の疑義を繰り返し主張してきたところであり、上記請求人の主張は令和2年7月27日付の請求人の意見書でも述べているものです。更に、「特に、関係法人の元社長OT氏への質問調査は、OT氏が、当時、癌が脳に転移し、病状が進行した末期であり、正常な判断ができない状態にあるにも拘らず、当局による質問調査が強行されています。また、I税理士の申述内容について、原処分庁は、「請求人がI税理士と相談の上、請求人の利益を不正に減額した事実」と認定していますが、代理人の調査によれば、「社長が言っていたことではないです」とI税理士は申述の訂正申入れをしているにも拘らず、その申述部分を原処分庁は意図的に隠蔽して認定している。」との文言を追加することをS審判所に求めています。

 

請求人は質問調査のあり方についての問題点や申述内容に基づく事実認定の恣意性、曖昧さを繰り返し指摘しているところであり、上記主張も7月27日付及び令和2年9月16日付の請求人の意見書においても述べているものです。関連して、代理人であるK税理士の記述についても、確認書の当該箇所の概要記述は、故意に曖昧な表記をして印象操作をしている部分は削除して、(請求人が当該書面の写しの交付申出をしたところ)「原処分庁は、K税理士に、『修正申告等について』と題する書面を交付したが、その書面の日付欄の記載には、署名部分のK税理士の筆跡ではない、他の者の筆跡である捏造された書面を開示、交付している。」と事実のみの文言を追加、訂正するようS審判所に求めています。なお、これについては、9月16日付請求人の意見書にも述べているところです。

 

⑵争点2(本件各更正処分の理由附記に不備があるか否か。また、本件当初各処分を取り消し、処分理由を差し替えて本件各更正処分をしたことは、違法か否か。)については、確認書の当該箇所の請求人の(主張の)概要表記を、「法人税法22条2項は計算規定であり、当該条文の文言から否認規定として読み取ることはできない」という表記に続き、「東京高裁平成11621日判決では、『租税法律主義の下においては、法律の根拠なしに、当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されたものとして取り扱う権限が課税庁に認められているものではない』としている。」とする文言の追加をS審判所に求めています。

 

また、確認書の当該箇所の「計算過程及び計算根拠不明、給与手当の計算過程の不明な処分」という概要表記の後に、「原処分庁は、請求人の再調査の請求を無視する一方で、審判所による求釈明をもって初めて見直し、自らの誤りを認めている。」との文言を追加するようS審判所に求めていますが、この点は7月27日付意見書でも述べているものです。続いて、「本件当初各更正処分における理由附記不備を治癒すべく行った…」という概要表記の後に、「請求人は、再調査の請求において『売上計上漏れ』や『給与手当の過大計上』に関する計算過程が不明であることを指摘したにも拘わらず、再調査の請求に対する処分に先立って原処分を行ったことは、国税通則法83条3項に違反した違法な処分である。」とする文言の追加をS審判所に求めています。この点は、審査請求の理由書の他、7月27日意見書でも繰り返し述べているものであり、原処分庁は、再調査の請求に理由があること(通知書の記載が不十分であったこと)を認めておきながら、再調査の請求への処分に先立って再更正処分を行うなど、到底許されるものではなく、明らかに違法な処分と言うべきものです。

 

⑶争点3(実質的な費用収益等の帰属主体の判定を法人税法11条又は22条をもって行うことができるのか)については、確認書争点3の前に、新たな争点として、「請求人と本件各関係法人との関係においては、法人税法11条の適用要件を満たしていない。また、法人税法22条2項は計算規定であるところ、独立した法人間の取引を否認して他方の計算として引き直すことまでは、当該条文から読み取ることはできない。なお、原処分庁が示す『事実』には、費用収益等の帰属を判定するに足る『事実』は認められない。」と追加・加入する文言をS審判所に求めています。この点は、確認書においてやや重複する主張とも取れるが、原処分の根拠となる条文が不明確であったところ、原処分庁自らが答弁書「イ 実質的な費用収益等の帰属主体について」という項目をもって主張してきたものであるが、請求人の反論に対し適用法令を曖昧にするなど、結局のところ、原処分の根拠となる法令が今日においても曖昧なままとなっているものです。

 

⑷争点4(本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用に係る業務及び取引を、請求人が行ったものであるとして原処分庁がなした行為計算等の否認は、違法か否か。また、本件各関係法人の納税義務が免除される課税期間に係る基準期間の取引分を、当該取引の発注元法人に「消費税法第30条第7項所定の帳簿及び請求書等の保存がなかったことを理由としてなした処分」は違法か否か。)については、確認書において「原処分の通知書において指摘されている各事実は、形式的・外形的要素が中心となっており、本件各関係法人の事業実体を否定する理由とはなり得ず、また、法人税法132条1項を適用する旨の主張もされていないところから、原処分は法律に従った処分とは言えない。」と追加することをS審判所に求めていますが、この点については、審査請求の理由書でも一部述べているものです。

 

確認書の対照表中の請求人(の主張)と記載されている「OS氏の確定申告書の記載状況及び本人名義の口座の給与等の振込先銀行の入出金記録から、同人が関係法人の代表取締役としての給与を受領している事実は明らかなこと、」を削除して、新たに「OS氏には、平成25年分及び平成26年分の給与はI税理士が作成したOS氏の所得税確定申告書に記載されているとおり、給与収入があり、また、給与等の振込先銀行の入出金記録が示すように、関係法人から本人口座宛に銀行振り込みされており、原処分庁の主張は、明らかな虚偽事実及び不実記載である。」を追加して、訂正するようS審判所に求めていますが、この点は、反論書で述べているものです。(つづく)

文責(G.K

 

金山会計事務所 ページの先頭へ