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租税不服申立について(審査請求「審判所の役割と機能について」編…その11)

2021/01/19

第2回目のS審判所からの確認表においても、概ね第1回目の確認表を踏襲するものであり、審判所による概略表記は、明らかに原処分庁等の虚偽主張を裏打ち、補強するかのような表現によるものであったことから、前々々回から3回にわたって、S審判所宛てに提出した第2回目の「争点の確認表についての請求人の意見書」の内容について、その概要を述べてきました。今回は、確認表についての当該意見書の結びに当たり、S審判所に概略表記の訂正及び追加記載を求めた事項、並びにそれらに関連して国税不服審判所における役割と機能及びそれらの行政実務の実態について触れてみたいと思います。

 

ところで、通則法97条は、次のような規定を置いています。すなわち、「担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。」とし、同条1項では、「審査請求人若しくは原処分庁(第四項において「審査請求人等」という。)又は関係人その他の参考人に質問すること。」としています。そこで、請求人は、国税不服審判所の役割として公表されている「公正な第三者的機関として適正かつ迅速な事件処理を通じて、納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資することを使命」とするとの趣旨に沿って、原処分庁が主張しているあまりにも明確でしかも重大な「嘘」を明らかにすべく、上記の通則法所定の「審理のための質問、検査等」を行うよう、S審判所の担当審判官に求めました。

 

これは、昨今の政治家や国家公務員等の質の劣化が話題になる中にあって、あるいは、国税当局は体育会系だと言われる中にあったとしても、その悪性については、「特筆すべき」と言えます。すなわち、国税当局の職員が犯した過ちを、その組織を挙げて仲間を庇うべく当該責任を納税者等の他者に転嫁し、あるいは論点をすり替えるといった、どこか既視感のあるやり方で、ありもしなかった事実の主張、明確な「嘘」、しかも、それらの弥縫策としての文書の改竄、捏造をする遣り口です。このことがもたらす社会的責任や道義的責任、さらには法的責任を伴う結果について、彼等は考慮したのでしょうか、非常に憤りを覚えるところです。ともあれ、当該審理のための質問、検査等については、S審判所審判官が「やる気」にさえなれば、質問(調査)対象者のいずれもが国税内部にいることから、その真偽についての聴取は容易に実現し、その判断、確認についても容易にできると考えられます。また、その際の調査対象とすべき担当者らの氏名については、既にS審判所に伝えていることでもあり、当該対象者らへの以下の事項に係る質問・検査を求めました。

 

(1)「修正申告書等について」と題する書面へのK税理士の署名押印について

原処分庁は、本件更正処分等に関して、「平成291110日に請求人の代理人であるK税理士に、S税務署庁舎内において、本件調査結果に係る非違の内訳を提示し、非違項目、非違金額及びその理由を伝えた。本件各関係法人の事業実体がないとの事実認定についても当然に説明している。その上で、それらに関する修正申告をした場合に伴う法的効果の説明を行った上で修正申告を勧奨し、『修正申告等について』と題する書面を交付し、その控にはK税理士の署名及び押印を受領している」とする旨の全くの事実無根、虚偽の主張をしています。仮に原処分庁の主張どおりだとすれば、次のような不合理な点があることに気付くべきです。第1に、それらについては予てその内容につき、K税理士は把握したいと思っていたことであり、仮に当日、当該説明と修正申告の勧奨を受けていれば、その直後に、K税理士が、「本件の調査から告発に至る一連の税務手続に対する質問」と題するS税務署長宛の文書(質問書)を手交する必要性はまったくないこと。

 

第2に、原処分庁が開示したK税理士の署名及び押印があるとする「修正申告等について」と題する文書には、当該文書の日付欄の記載がK税理士のものではなく、第三者の手によって書き加えられた、改竄された文書であること。第3に、請求人が不利益処分(本件更正処分等)に係る原処分庁の理由の附記(開示)、説明がなかったことを主張してから、約半年経過後になって、原処分庁は上記の反論をしており、不自然であり、これは民訴法157条の規定に抵触すること。第4として、当日から19日後の平成2911291650分にS国税局の査察調査担当者であったST氏から、「調査結果等を含めて、査察調査に至る経緯は説明しないことになりました。」との電話連絡がK税理士宛にあったこと。第5として、これらの事実は国家権力の濫用であり、重大な刑法犯罪を構成するものであり、その真偽の(司法による)徹底した調査が求められる事案であること等が挙げられます。

 

(2)平成25年2月の税務調査資料(綴り)の検査等について

原処分庁は、請求人に対する平成25年2月の税務調査資料(綴り)に、「請求人と各関係法人との取引に関する記載がない」旨主張しており、口頭意見陳述時に請求人(代理人)から要求した「当時の調査担当者が持参した関係法人を時系列に記載した資料」の内容は疎かその存在の有無についても何ら回答していません。また、原処分庁の答弁書に対する反論書で、「証拠として事前準備資料を含む調査資料綴り全体の提示」を求めたにも拘らず、一切開示・提示されていないことから、担当審判官による質問・検査を求めています。これによって、「調査選定資料、担当者作成メモのほか調査結果の決裁資料に至る全ての調査関係資料の中から、例えば調査選定理由の一つに関連法人との取引に関する項目が挙げられているなど、請求人と関係法人との取引等について調査したことが認められる又は想定される資料又は記載が確認できた場合には、請求人が争点7で追加要求した主張を踏まえて適正・公平な審理を求める」としています。

 

第2回目の「争点の確認表についての請求人の意見書」は、既に述べているように、令和2年11月4日にS審判所に提出しましたが、その折、KT審判官から面談したい旨の申し出があり、場所を変えS審判所の会議室で同審判官と面談しました。その際、同審判官は、「今日の提出文書の趣旨は何でしょうか?」と私(代理人)に問いました。私は、令和2年1026日付で審判所から頂いた争点の確認表についての請求人の意見であることを伝え、「当審判所には、審査請求書から先日の争点の確認表についての請求人の意見書まで一貫して、法的観点からの審理をお願いしていますが、残念ながら、それが確認できる表記、記載が審判所から頂いたこれまでの文書の何処にも見当たらないことから、この点のお願いと、争点に係る『当事者双方の主張』の概要表記は、いずれも法的視点での表記が不足若しくは欠落していることから、それら盛り込み、反映させて頂きたいとするお願いです。また、それに加え、原処分庁の代理人に対する『悪意の嘘』は許せないことから、これについての、質問・検査等のお願いをするものです」と答えました。

 

これに対し、KT審判官は、通則法971項の質問・検査等については、非常に消極的な態度で、「しないかもしれませんし、したかどうかをお教えすることはありません。」とのリアクションを示しました。加えて、当日提出した第2回目の「争点の確認表についての請求人の意見書」についてさえも、「読むかどうか分かりません」と言い、請求人の意見や主張を新たな確認表に反映することに消極的な態度を明らかにするとともに、審判所からの新たな確認表も送付しないことを明言しました。「それでは、請求人の最終的で正確な意見や主張が確認表に反映され、掲載されているか否かを確認する方法や手段がないのでは」との質問に、KT審判官は、「裁決書で確認してください」と述べました。私は、場合によっては、「審判官忌避の申立」をすることを、検討することもあり得ることを伝えたところ、「先生のご趣旨は受け取らせて頂きます」と返答しました。

 

このような遣り取りがあった、第2回目の「争点の確認表についての請求人の意見書」提出から12日後の令和2年1116日9時50分に、KT審判官から電話で、通則法971項の質問・検査の申し立てに対する調査は行わない旨の連絡を受け、請求人は、通則法他の法令に「審判官忌避の申立」に対して、直接これを規整する条項も見当たらず、僅かに通則法109条に「参加人」の規定を置くのみであることから、令和2年1月17日、S審判所に、以下を内容とするKT審判官の忌避を申し立てました。(つづく)

文責(G.K

 

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