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国税不服審判所の役割とその存在意義 その5

2021/05/17

前回も触れたように、札幌国税不服審判所が認定し最終的な判断をした裁決は、「はじめに結論ありき」の方針の下、原処分庁の恣意的な判断、認定をそのままトレースしたかのものを自らの認定だとしており、独立した第三者的立場で納税者の権利利益の保護・救済する機関とは評価されないことが実態として存在しています。確かに、形式的には税務当局からの独立性を標榜してはいますが、現在の司法、行政制度を前提とする限り、行政段階の税務争訟の審理・裁決に当たる機関として、税務当局から完全に独立した第三者機関としての判断を示すことには無理があるのかもしれません。しかし、そうであればこそ、なおさら事実に基づいて、若干なりともその趣旨を活かすべく努力する義務があります。それをなくして国税不服審判所の存在意義はあり得ず、況や、原処分庁の「嘘」を庇った上に、審理関係人(請求人)が求める、事実の基礎となるもの(真相)を確認するための通則法971項に基づく質問、検査等の申立てを拒むことは論外と言えます。

 

と言うのも、札幌国税局職員が作成した質問てん末書につき、明らかに調査が行われたその場所で質問対象者が署名指印し作成されたものとは思われない(後日、当該質問てん末書の作成者が加筆したと思われる)、異なる濃度の筆記具で文末・欄外に加筆されたもの、質問調査対象者に納税(義務)者に係る全くの虚偽事実(誤情報)を伝達、流布して同質問対象者から強引に原処分庁に有利に作用すると思われる申述を引出そうとしたことを示す「証言」なる文書の存在、札幌国税局職員による強引な誘導、その結果、一旦、虚偽事実に基づき関与税理士と納税者との「通謀」としての質問てん末書が作成されたが、その後、当該関与税理士が自らの憶測だったとして、通謀を強く否定し、当局に訂正を申し入れている質問てん末書の存在、更には、当該事実を原処分庁が隠蔽していた事実、等々の具体的証拠を、請求人(納税者)は札幌国税不服審判所に提出しています。

 

それにも拘らず、それらの一つ一つの証拠書類等について目を通すことはしなかったとし、また、それらの証拠書類等に対して、今後、請求人から国税通則法971項に基づいて確認ないし質問、検査等の申立てがなされたとしても、それに応ずることはないと、令和31116日、工藤卓也担当審判官は、筆者に言明しました。これらの原処分庁による証拠収集手続、手法は、重大な法令違反等の証拠を如実に示すものと考えられますが、果たして、札幌国税不服審判所がその裁決書に謂うように、「刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上の限度を超えるような重大な違法があったとはいえない」ものであり、また、原処分庁としてそのように判断することが無理からぬことであって、その認定の根拠の曖昧性、薄弱性及び手続の強引性、違法性は全て阻却されるとでも判断したのでしょうか。そして、何よりそれを容認する札幌国税不服審判所の判断は、自らの存在理由、役割に沿った公正、適切なものでしょうか、少しどころか、大いに世間離れした判断、裁決ではないでしょうか。

 

さらに、税務代理人(筆者)に対しては、「本件調査経過記録書における各記載は、内部のチェックシートに記載された内容と一致する、他の証拠と整合するものである上、代理人とのやり取りや筆者の発言に関する記載が具体的、詳細で内容自体や内容相互に不自然な点が見当たらない」と強引にこじ付け、「調査結果の内容の説明の際の状況を正確に記録したものと認めるのが相当」との判断を示し、代理人が嘘を言っていると結論付け、その名誉を棄損し、人格を貶めています。札幌国税不服審判所は、何処の何を見て与えられたその権限を行使、判断しているのでしょうか。最も信用でできない、いわば国税行政当局の内部報告を、検証することなくそのまま認定しています。思うに、一介の審判官の判断ではなく、中クラス以上の国税不服審判所のメンバー(役職者)のアイディアでしょうが、それは組織を束ねる国家公務員としての自らの矜持(昨今マスコミ報道を賑す独特の病理を有する官庁職員と同根、否、もしかすると、それより次元の低い租税行政庁特有の問題かもしれませんが)だとでも思っているのでしょうか。

 

公権力の不適切な行使がなされたものを、事後に、その行為を隠蔽すべく弥縫策として、原処分庁と通じ、如何なる修辞句を用いて「虚偽の事実」を作出しようとしても、真実は一つであり、原処分庁の明白な嘘を庇い立てし、それらを包み込み、さらなる虚偽事実を作出しようとした札幌国税不服審判所の目論見はいずれ瓦解するものと思われます。加えて、税務調査の調査結果の内容説明の件については、平成291110日、当日面談した札幌南税務署法人課税第7部門統括官竹田洋介氏を札幌国税審判所に召喚して確認すれば、立ちどころに真相は解明できるのです。このことから、前任の国税審判官佐賀野豊氏及び現審判官工藤卓也に口頭で申し入れましたが、いずれも、受け入れられず、やむなく国税通則法971項に基づく「審理のための質問、検査等」の申立をしました。既に触れているように、これについても札幌国税不服審判所は拒否し、行いませんでした。

 

同審判所の採ってきた、審理を尽くすための内外の関係者への質問や検査を一切行わない審判姿勢、態度からして、組織内部の職員が机上でまとめた報告書の類や都合のよい申述等にのみに依拠して作成された本裁決書の「調査結果の内容の説明の際の状況を正確に記録したものと認めるのが相当である。」とする記述に、どれだけの真実性、信頼性、公平性を見出すことができるのでしょうか。また、本件調査担当職員とされる札幌南税務署法人課税第7部門統括官竹田洋介氏(実際には本件税務調査を担当しておらず、調査にも立ち会っていない)が、面会当日に説明をしなかったが故に、筆者は「本件質問書面」をその場で本件調査担当とされる竹田氏に手交しています。

 

そのことについて、札幌国税不服審判所は、その裁決書において、「本件質問書面の内容は、主として本件査察調査に関する質問事項及び意見であるところから、本件質問書面の存在が本件調査に係る調査結果の内容の説明が行われていないことの証明にはなり得ない」としていますが、では、説明をしたと主張する平成291110日からかなりの時間が経過した令和26月に札幌国税不服審判所で行われた口頭意見陳述の際の請求人(筆者)の質問に、原処分庁ないし札幌国税不服審判所は、何故同趣旨の回答をしなかった、ないしは回答(発言)をするよう促さなかったのでしょうか、甚だ不合理で矛盾があります。因みに、当日、原処分庁は「答える義務はない」と言って当該質問をかわすことに躍起になっており、審判官以下の札幌国税不服審判所の当日の参加者も含み笑いをするのみでした。

 

また、より「嘘」が決定的なのは、原処分庁としての札幌南税務署及び札幌国税不服審判所が結託して、税務調査の調査結果の内容説明を請求人(筆者)にしたと主張ないし認定する平成291110日の札幌南税務署庁内における説明をしたとする日の19日後の平成291129日、1650分に札幌国税局査察部査察第三部門の佐々木司主査から筆者宛に、「(税務)調査結果の説明や修正の慫慂(勧奨)、それに関する打ち合わせ等はしないことになりました。」との電話連絡を受けていることです。札幌国税不服審判所には、これまで累度に渡り、税務代理人としてのみならず、租税法学者の視点からの意見を書面で提出し、本件「組織ぐるみの嘘」の蓋然性について指摘、主張をしてきましたが、残念ながら、それらの殆どについては無視を決め込んでいます。

 

折角、社会的弱者とも言える納税(義務)者の権利利益の擁護、保護の観点から、先進諸国に伍する制度が整備されていたとしても、それを運用するのは人なのです。現に課税庁との間に人事の交流があり、また、現在のわが国の司法、行政制度を前提とする限り、国税不服審判所が行政段階の税務争訟の審理・裁決に当たるものとして、税務当局から完全に独立した第三者機関とすることには無理があることをある程度は理解できるとしても、かような組織ぐるみの「虚偽事実の作出」は、それに関わった公務員個人の違法行為を超越して、ある種の国家の犯罪行為とも言え、決して許されてはならず、国税不服審判所の存在意義は、わが国の官僚制度とともに、もう一度問い直すべき時期に来ているように思われます。(つづく)

文責(G.K

 

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