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国税不服審判所の役割とその存在意義 その27

2021/12/24

前回の続きの札幌国税不服審判所に対しての、請求人からの通則法97条に基づく審理のための質問、検査等の申立ての件について触れたいと思います。周知のように、国税に関する税務署長等の行った課税処分に対し、その処分の取消しや変更を求める不服申立ての制度として、わが国には国税不服審判所が存在し、その役割としては、「税務行政部内における公正な第三者的機関として、適正かつ迅速な事件処理を通じて、納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資することを使命とし、税務署長や国税局長などと審査請求人との間に立つ公正な立場で審査請求事件を調査・審理して裁決を行」う、とされています。しかし、このコラムにおいて筆者(納税者の代理人)が再三指摘しているように、実態としての(札幌)国税不服審判所は、仮令、原処分庁が明らかに誤った判断(認定)をしており、それを納税者側が指摘しようと、それをそのまま追認、補強する機関として役割を果たしているに過ぎないように思われるのです。

 

卑近な例として、原処分庁は、筆者(請求人の代理人)に対して、通則法74条の112項に基づく「調査の終了の際の手続」を行わなかったにも拘らず、平成291110日札幌南税務署庁舎内において、税務代理人である筆者に、詳細な調査結果の内容の説明を行った上で修正申告等についてと題する書面を交付したと全く虚偽の主張をし、後に代理人が当該書面の写しの交付請求をしたところ、原処分庁は直ぐにそれと分かる捏造した書面を交付し、明白な嘘をついています。何故なら、原処分庁が筆者に説明をしたと主張する当日の19日後の平成2911291650分、本件更正処分等の実質上の指揮を執っていた札幌国税局調査査察部査察第3部門の主査であるST氏から電話で、「査察に至ったこれまでの経緯、調査結果等については、(請求人に)説明しないことになりました。」と告げられていたからです。また、これに先立つ上記の調査の終了の際の手続として、実際に説明をしたと原処分庁が主張する札幌南税務署及び札幌北税務署の担当統括国税調査官らも、「別件の刑事裁判が進行中なので調査の内容等については一切答えられません」として(筆者に)説明を拒否していたからです。

 

また、審判所は裁決書において、原処分庁の本件調査経過記録書の記載内容の真実性、信用性を絶対的なものとし、それを根拠に、実際にはそう長くない時間を本件調査担当職員ではない上記の統括官らと遣り取りしていたにも拘らず、「本件調査担当職員とK税理士(筆者)とのやり取りやK税理士の発言に関する記載は、具体的かつ詳細であり、内容自体や内容相互に不自然な点も見当たらない」と、事実とは矛盾する不合理な認定をしているのです。これらは、後日の審査の過程で、調査の終了の際の手続を定めた通則法74条の112項の規定「国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。」に反するとして糺した請求人の主張に対する原処分庁側の反論として作出、捏造されたものに審判所が平仄を合わせ、お墨付きを与えるべく公正な第三者的機関の判断(?)として追認、補強したものと思われます。

 

このように、審判所(の裁決・判断)は、(札幌国税局及び札幌南税務署並びに札幌北税務署を含む)原処分庁の一方的、恣意的で納税者側の同意や検証も経ていない認定、主張を、恰も誤りのない唯一の絶対的な信用性の根拠としていますが、それには、このように意図的な誤謬が存在し、このコラムでその都度、証拠を示して指摘、主張しているように、信頼性・信用性は極めて低く、納税者(代理人)として同調することはできません。このコラムのその20~22で述べているように、「不都合な事実」には請求人がそれを指摘する声を上げても、審判所を含む租税行政庁は、自らの認定の誤りを認めようとはしません。因みに、原処分庁は、法人税に関する更正通知書において、平成253月期の更正の理由の「売上計上漏れ」として、「総勘定元帳、請求書控及び売上先が発行する支払通知書を確認」してその合計759,954,536円と申告額755,437,984円との差額4,516,552を、平成263月期は1,242,918,686円と申告額1,198,298,014円との差額44,620,672を、平成273月期は1,587,716,262円と申告額1,572,748,121円との差額14,968,141を請求人の所得金額に加算しています。

 

上記金額については、平成30510日、別件の税法違反事件の第10回公判廷における証人として、札幌国税局査察第3部門の査察官であったHK氏は、自身が平成2810月、請求人の査察調査を担当した内容等について以下の供述をしており、それに附合するものです。「ここでいう除外というのは、翌期に繰り延べていたという理解でよろしいんでしょうかね。」との弁護士の尋問に、同氏は、「まあ、そうですね。翌期の申告が確定すれば、そういうことになるんじゃないでしょうか。」と答えています。また、続く同弁護士の尋問「273月期末に計上すべき4,000万円から5,000万円の売上を283月期に繰り延べていたということが調査の結果判明したと、そのような意味で理解してよろしいんでしょうかね。」に、同氏は、「まあ、そうですね。283月期の申告において受け入れがあるのであれば、それは繰り延べていることになるんじゃないでしょうか。」と答えています。

 

続いて同弁護士が「除外(繰り延べ)されていた金額というのが平成273月期に関してはおよそ4,000万円から5,000万円あったというお話だったかと思うんですが、実際の差額が1,400万円ということでしたので、そこの差がどうして生じたかということをもう一度ちょっと分かりやすく説明していただきたいんですけど。」「単純な頭で、5,000万円除外されれば、5,000万円がずれるのかなというところなんですけど。」と尋問したのに対し、HK氏は、「先ほど話しした分と重複するかもしれませんけど、大きな理由ということで言えば、263月期に計上すべき売上を263月期に計上せず、273月期期首に計上したこと、あと、今も言いましたけど、273月期の期末に売上を除外したしたこと、263月期の除外を273月期の期首に持ってくるということは、273月期で考えれば、それは架空の売上ということになりますので、それと差引をしたこと、正確にぴったりくるものではないんですけど、我々が調査額として提示させていただいている数字と申告額との開差が、先ほど見た期首の分についてマイナスが立って、期末の方に大きいプラスの開差が出るというのはそういうことです。」と供述しています。

 

すなわち、原処分庁主張の「売上計上漏れ」の原因は、法人税を免脱しようとするものとは根本的に異なり、当時の関与税理士の会計思想ないし税務処理に関する理念の誤認から生じた、翌期への繰り延べ分であったことを意味しています。そうすると、原処分庁の「売上計上漏れ」の認定が誤りである上に、その金額も確定していないにも拘らず、審判所はその事実を把握することなく、またその誤りに気付くこともなく、そのまま自らの認定とする大きな誤りを犯したことになります。請求人に係る平成253月期から平成283月期までの間における売上の額は、当該期間において加減算されて平準化し、しかも、いずれも翌期に係る申告は確定し、それに伴う法人税も納付済みであり、「売上計上漏れ」として当該年度の所得の額に加算した額は、同額を減算しなければならないことになります。

 

HK査察官の供述が示すとおり、(変則的期中現金主義を採る会計処理にあって)上記のように調査額と申告額との差額もって「売上計上漏れ」を算出することは誤りです。それは、買掛金、未払費用等が決算修整されるまでは、消滅させることなく試算表の貸方に残しているからです。よって、同査察官が供述するとおり、算出された額は、前期末からの繰越額を差し引きしても、常に23千万円の開差がある超推計的概算額となり、更正処分等をするための課税要件を充足していないことになります。その原処分庁の誤りをそのまま踏襲すると、審判所の認定もまた誤りと言うことになります。請求人が如何なる会計手法を採ろうとも、元請事業者による工事途中での設計の一部変更、再変更や追加工事等があったとしても、それらを含めてゼネコン等の元請事業者は、契約に基づいてのみ支払いを履行することから、決して当該契約額を超えて口座振り込みされることはあり得ず、最終的には、請求人への入金額と総勘定元帳とを突合して修正することによってのみ正確な売上額が把握可能となります。

 

原処分庁がなした本件更正処分のうちの、一部の誤りは、本来、租税行政庁が職権で改めるべきですが、札幌南税務署には本件処分に関する資料がなく、国税局の査察第3部門にあるため、当該資料は原処分庁の職員であっても閲覧することができないとの理由から、還付を希望するなら納税者側から「更正の請求」をするように説得されたため、審判所の管理課長のS氏に相談しましたが、審判所は基本的にこれには関与しようとしませんでした。その結果、還付金には還付加算金が付加されましたが、通則法58条の2項を適用したもので、かなり少額でした。本件は更正処分によったものであり、その計算区分の規定である通則法58条の11号のイを適用するよう、札幌南税務署長宛に、還付加算金の再計算及びそれによる速やかな当該還付加算金の不足分の支払いを求める申し立てを行いました。残念ながら、原処分庁から、後日、現行法上はこの申立てを行うための規定は存在せず、この手続きを進めることはできないとの回答がありました。租税は、憲法が保障する国民の財産権を無償で国家に移転させるものであるだけに、その還付手続面も、国民(納税者)の権利が保護され、十分に分かり易い制度であるべきです。(つづく)

文責(G.K

 

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