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国税不服審判所の役割とその存在意義 その32

2022/02/14

これまでに述べたことを実際に即して若干敷衍すると、例えば、平成268月分の売上については、同年831日付で6,200,424円と140,447,075円を計上し、同年91日付で140,447,075円を減額し、同日付で146,640,272円を計上しています。更に831日付で一旦計上した6,200,424円についても、9月1日付で同額を減額した上で同額を再計上しています。結果として、8月分の売上は、140,447,075円と146,640,272円との差額の6,193,197円を実質的に増額しています(このような会計処理が常態化しています)。

 

このように、変則的期中現金主義による会計方式を採用していることで、売掛金の入金及び相殺により総勘定元帳の売掛金残高が不足すると、売上を計上することで売掛金残高を整合させていました。よって、原処分庁が外注費の過大計上としている外注費と売上(売掛金)の相殺分4,131,327円は、前回も触れたHK査察官もその供述で認めているように、上記6,193,197円の中に、含まれていることになります。例えば、平成27925日の総勘定元帳の売掛金には、E社以下N社まで13件の相殺が二度計上されていますが、その相手方勘定である外注費も二度計上されています。しかし、売掛金の相殺は売上の存在を必然とし、売上も二度計上されている(売掛金が不足すれば、売掛金/売上を計上し調整している)ことを意味し、損益及び消費税には影響しません。よって、原処分庁主張の外注費の過大計上額及び外注費の二重計上を請求人の所得額に加算することは誤りです。

 

請求人がどんな会計手法を採ろうとも、また、元請事業者による工事中途での設計の一部変更、再変更や追加工事等があったとしても、それらを含めてゼネコン等の元請事業者は、実際の工事発注額(契約額)に基づいてのみ支払いを履行することから、決して当該工事発注額を超えて、あるいは不足して請求人の口座に振り込みをすることはあり得ません。したがって、最終的には、請求人への入金額と総勘定元帳とを突合して決算修正することによってのみ正確な売上額が把握可能となるのです。それをせずして租税行政庁は、誤った統治者(お上)意識の下、納税者(請求人)の悪質性を作出、そしてそれを誇張し、「はじめに結論ありき」の方針で本件更正処分等を強行したところに、「売上計上漏れ」はもとより「利益調整額」の問題が、その綻びとして出来したものと思われるところです。

 

上記を含むその他にも、原処分庁、審判所を含む租税行政庁は本件更正処分等を行うに当たって単純なミスを犯しており、そのミスを納税者(請求人)が指摘しても、租税行政庁は自らの手で正すことを拒むところから、請求人はそれらについて令和35月及びその追加分として令和41月に、当税務コラム2022で記述しているとおり、更正の請求及びそれを経て審査請求をしているところです。このうち、当税務コラムその22のⅠが平成253月期における原処分庁の計算ミスについて述べているものであり、以下の記述内容は、以前の税務コラムでも触れているところから、若干重複することをご容赦頂きたいと思います。本事案は、請求書がなく支払の事実もないことを理由に、借方の外注費を架空外注費として否認、貸方の同額の売上については、同日、同額が計上されているにも拘らず、調査スキルの稚拙さないしは「はじめに結論ありき」の方針からか、これを見落とし、敢えて計上漏れとして所得に加算しているものです。

 

仮に取引自体を否認するのであれば、借方の外注費と貸方の売上の双方を取引がなかったものとしなければなりません。借方の外注費のみをなかったものとし、貸方の売上を計上漏れとして所得に加算する処理は、必然的に帳尻の不一致を招く、明らかな誤処理です。したがって、平成253月期の消費税の計算上は、借方の外注費を1,000万円減少させるとともに、貸方の売上も1,000万円減少させなければならず、外注費だけを減少させた処理は、明白な誤りであり、原処分庁のこの処理を何らの吟味もせずそのまま審判所の認定として受け容れている裁決には、明らかな誤りが存在することになります。なお、平成253月期については、現在、審判所に対して当該外注費の否認に対しての更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知の取消を求める審査請求及び原処分庁に対する売上計上漏れとされた4,516,552円に対する更正の請求をしているところです。

 

また、仕入税額が減少すれば、当然、課税売上に係る消費税額分も減少させることになりますが、累度に渡る請求人からのこれらの指摘を原処分庁及び審判所は無視し、請求人についての誤った一方的、恣意的主張を強弁するばかりです。法人税については、1,000万円が売上計上漏れとして所得に加算されていることから、これをなかったものとし、それに伴う税額も減少させる処理をしなければなりません。請求人が、上記に述べていることからも重複しますが、裁決書記載の「当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない」とする判断(認定)は、明らかな誤謬であり、審判所の事実認定及び裁決は、その信用性ないし適法性において大いなる疑問符が付くものです。

 

同様に、当税務コラムその22のⅡは、平成263月期における原処分庁のミスについて述べているもので、原処分庁が平成263月期の法人税額等の更正通知書において、平成251125日付「E社に対する外注費」113,400円は二重計上であるとして否認、当事業年度の所得金額に加算しているものです。しかし、請求人が請求書、総勘定元帳を調査、確認したところ、外注費の二重計上は確認されませんでした。と言うのも、当時の請求人の関与税理士は、請求人の会計処理に変則的な期中現金主義(基本的に売掛金のみを発生主義としながらも、その金額を期中で何度も修正をしている)を採用し、それ以外の科目については、期中での処理をしたり、しなかったり、また、支払日及び期末には相殺という形で残高を消滅させ、ないしは借方残と同額を(機械的に)貸方に立て、洗い替えをしていました。

 

これにより、仮に、二重計上されていたものが支払日に相殺されていたり、あるいは残高が計上されたまま期末まで残っていたとしても、損益には影響がなく(会計上の本質的な問題はあるにせよ)、これを、二重計上として所得の金額に加算すると、その分の額、帳尻が合わなくなります。また、売上計上漏れとして、請求人の「総勘定元帳、請求書控及び売上先が発行する支払通知書を確認」した合計1,242,918,686円と請求人が当事業年度の益金の額に算入した売上高1,198,298,014円との差額44,620,672円を当事業年度の所得金額に加算したとしています。

 

しかし、これについては、前回から今回にかけての税務コラムで述べているとおり、HK査察官が供述するとおり、請求人に係る平成253月期から平成283月期までの間における売上の額は、当該期間において加減算、調整されて、本件におけるような変則的期中現金主義を採る会計処理にあっては、上記のように調査額と申告額との差額をもって「売上計上漏れ」を算出することは不適正、かつ誤りです。よって、平成263月期の所得金額は113,400円の他に44,620,672円減少することになり、課税売上高が減少すれば(復興税を含む)法人税等及び加算税も減少することになることになり、それに対応する税額は還付されなければなりません。したがって、審判所の、「平成253月期及び平成263月期の法人税の各更正処分はいずれも適法である。」とする判断(認定)は完全に誤っていることになります。

 

同様に、当税務コラムその22のⅢが平成273月期における原処分庁のミスについて述べており、原処分庁が平成273月期の法人税額等の更正通知書において、4,131,327円が外注費の過大計上額であるとして否認、当事業年度の所得金額に加算しているものです。しかし、上記ののケースと同様、外注費の二重計上は確認されず、平成273月期の所得金額は4,131,327円減少することになります。また、売上計上漏れとして、請求人の「総勘定元帳、請求書控及び売上先が発行する支払通知書を確認」した合計1,587,716,262円と請求人が当事業年度の益金の額に算入した売上高1,572,748,121円との差額14,968,141円を当事業年度の所得金額に加算したとしています。これも上記と同様に誤りです。よって、課税売上高が減少すれば(復興税を含む)法人税等及び加算税も減少することになることになり、それに対応する税額は還付されなければなりません。したがって、裁決書32()の末尾部分の「なお、平成273月期の法人税の更正処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。」とする審判所の判断(認定)、記述は完全に誤りであることになります。

 

憲法に保障された国民の財産権を、対価を伴うことなく無償で国庫に移転することの重大性につき審理する審判所が、僅か3行の、まるで木で鼻を括るような上記の表現の裏には、これ以上不利な事実を取り上げてそれらに触れられたくない、審判所を含む租税行政庁の思いが透けて見えます。その思いに反して、平成273月期の法人税の更正処分については、重大な誤りが存在することが明らかとなったことから、請求人は、国税通則法231項に基づき、曩に行っている更正の請求、審査請求に続き、後行する形で、再度同様の手続を進めています。(つづく)

文責(G.K

 

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