Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その1

更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その1

2022/04/22

わが国の国税における納税制度は、個々の納税(義務)者が自らの税額を計算し、税務署へ所得等の申告を行うことにより第一次的な税額が確定し、その確定した税額を自ら納付する申告納税制度を主として採用しています。しかし、その申告が誤っている場合や申告がない場合には、税務署長のする更正又は決定により、第二次的に納税義務が確定することになります。そして、納税申告書に記載した課税標準等又は税額が過少である場合には、納税者は修正申告をすることでその申告額の是正をすることになります。その一方で、納税申告書に記載した課税標準等又は税額が過大であった場合には、納税者自身が是正することはできず、税務署長宛に更正の請求をし、これを受けて税務署長が課税標準等又は税額等を調査した上で更正し(確定させ)、又は更正をすべきと認められない旨の処分を納税者に通知することになります。このように、更正の請求の場合は、修正申告と異なって、税額を確定させる効力はありません。

 

本コラムの今回からは、税務署長宛に更正の請求をしたが、「更正をすべきと認められない旨の通知処分」があった場合に、その取消を求める審査請求について述べたいと思います。先ず、本件の概要、経緯について述べると、本件は、税務署長のした更正処分により納税義務が確定したことにより、一旦、当該税額を納付した上で、更正の理由が不明であること及び税額が過大であったこと等から、請求人は、当該更正処分に対する再調査の請求を経て、札幌国税不服審判所(以下、「審判所」という。)に当該更正処分等の取消を求める審査請求を行いました。その審判所の判断(裁決)が「当審判所の計算と原処分庁の計算した額といずれも同額となる」などと、適正、適法であるかのような誤った判断を示されたことから、令和3317日、当該誤謬部分について原処分庁に職権による減額更正を求めました。しかしながら、同年326日、原処分庁は、次の理由から、請求人の方から更正の請求をするよう、強い要請をしてきました。

 

原処分庁(札幌S税務署)の審理専門官部門の審理専門官であるMT氏は、「当初更正処分は、札幌国税局(査察)マターなので、当時の税務調査に係る一切の資料は当署には存在せず、その資料にアプローチすることさえもできないので、請求人の方から更正の請求をして頂けませんか」との趣旨の有無を言わさぬ強い語調での依頼をしました。請求人は、この原処分庁の強制とも言える要請に基づいて更正の請求を行ったところ、後に判明したのですが、原処分庁は、当該更正の請求を撥ね付けるべく悪意で仕掛けたとしか思われないような落とし穴を用意して待ち構えていたのです。

 

その1つは、原処分庁の強い要請を受けて行なった更正の請求にも拘らず、更正の請求書を提出して暫く経った時点で、原処分庁は、当該更正の請求は通則法2321号に該当せず、また、更正の請求を行うことができる期限(法定申告期限から5年)を経過しており、当該更正の請求の一部を除き、その他については、更正をすべき理由があるとは認められないと主張してきたのです。そもそも、本件については、原処分庁が職権で誤りを正すべきところ、原処分庁の都合で請求人側から更正の請求を行ったもので、その際には、通則法23条1項1号の理由では5年の時効を経過しているので難しい(受理できない)と審理専門官は言い添えたのです。このことから、請求人は、その助言の趣旨に従って主位的には通則法2321号としつつも、予備的に同条1項1号に該当する旨を記載しておきました。それにも拘わらず、原処分庁のこの時点に及んでのこの主張は、甚だ不見識で自己矛盾も甚だしく、道義的観点はもとより、法的にも禁反言(信義則)の原則に違反し、許容されるものではありません。

 

その2つは、当該更正の請求の一部認容額につき、原処分庁が所得の額に加算していた5,300万円を超える額について、これを取消し、所得の額から減算し、国税、地方税を合わせてそれに対応する約2,400万円が還付されることとなりました。一方、審判所においては、「当審判所において計算すると原処分の額といずれも同額となる」と裁決していたことから、5,300万円を超える額の計算の誤りがあることを見逃した上に、原処分庁による更正処分を「適法」としていたわけで、その役割を果たしていたか否かは極めて疑問に思われ、その意味では、失態を演じる結果となりました。加えて、更なる疑問は、還付加算金の計算の始期が、当初更正処分の前の更正処分(以下、「前当初更正処分」という。)に備えて予納を済ませていた平成28122日ではなく、本件更正の請求をした令和457日であったことです。これについては、原処分庁に「還付加算金」に係る再計算についての申立書を提出し、更正の請求の経緯、予納の時期、還付加算金に係る計算の始期等について申立人(請求人)の考え方及び善処方を考慮するよう要望しましたが、このことについて定める法令は存在しないと、要請を却下されてしまいました。

 

そこで、本件更正をすべき理由がない旨の通知処分に関する事案の大宗に遡って述べてみたいと思います。平成291122日付の原処分庁による前当初更正処分が、更正の理由が明らかでない上、税額の計算過程も明らかにされていないことから、請求人は、原処分庁に再調査の請求を行いました。しかし、原処分庁は最高裁判決を無視して、一旦、前当初更正処分を取り消し、処分理由を差し替えて令和1107日付で、改めて当初更正処分を打ってきました。また、前当初更正処分及び当初更正処分のいずれも国税通則法74条の112項に基づく「調査の終了の際の手続」としての説明がなかった上に、行政手続法141項所定の理由の附記も十分ではない二重の違法がありました。そこで、請求人は、令和11122日付で審判所宛に審査請求をしていたところ、令和3310日付で「更正処分及び加算税の賦課決定処分の一部を取り消し、その他の審査請求をいずれも棄却する」との裁決が示されました。

 

当該裁決において、審判所は、原処分庁(国税局査察部)による「はじめに結論ありき」の強引な違法調査の着手、重要な証拠の隠蔽及び捏造、虚偽の質問てん末書の作成、それらに基づく誤った事実認定、誤った法令等の解釈・適用並びに税額計算を誤った更正処分等の内容を吟味することなく、事実上そのまま何らの確認、調査もすることなく、自らの認定事実として「裁決」というお墨付きを与えました。その結果と言うべきか、原処分庁による当初更正処分には、数々の事実認定の誤りや複式簿記の原理を無視した初歩的かつ明白な誤り存在していますが、既に述べたとおり、審判所はそれらを「当審判所において計算すると原処分の額といずれも同額となる」などとし、適正、適法であるかの裁決をしており、原処分庁とともにダブルでミスを犯すこととなっているのです。

 

この税務コラムの近時においては、租税行政庁による一連の納税(義務)者の人権及び憲法で保障されている財産権の侵害という違法行為が、いとも容易く行われている現実に声を上げるべく、請求人の代理人としてはもとより、租税法学者の良心ないしは租税正義の視点からも放置してはおけないと、焦りにも似た正義感からその思いを書き連ねています。

扱う事案の性質上、テーマは異なっていても、以前に取り上げた事実を異なった側面から検討したり論評する必要性から、今後も重複する箇所を多分に取り上げることがあると思われますが、ご容赦を頂きたいと思います。先ず、原処分庁がした一連の当初更正処分のうち、平成253月期(平成2441日から平成25331日までの事業年度)の法人税につき、外注費の過大計上10,000,000円及び売上計上漏れ4,516,552円を当年度の所得金額に加算している事実について取り上げ、検討したいと思います。

 

請求人は、「平成 25 3 月期の法人税額等の更正通知書における加算項目平成 25 3 31 日「外注費の過大計上額」として当事業年度の所得金額に加算された 10,000,000 円は、総勘定元帳の「外注費」の貸方に同日、同額が売上として計上されており、これについては、法解釈を伴うものではなく、課税当局の単なる見落としによる誤処理であり、所得金額に加算すべきものではない。なお、仕訳を示せば、以下のとおりで、損益は 0 となる(この処理を行っていたとする当時の関与税理士であるI税理士の質問応答書が存在する)。」

3/31 (借方)外注費10,000,000 /(貸方)売上 10,000,000

「したがって、平成 25 3 月期の所得金額は10,000,000 円減少することになり、課税売上高が減少すれば(復興税を含む)法人税等及び消費税等並びに加算税も減少することからそれに対応する税額は還付されなければならない。因みに、本事案については、国税通則法 23 2 1 号が適用されることになる。」とする更正の請求書を原処分庁に提出しています。(つづく)

文責(G.K

 

金山会計事務所 ページの先頭へ