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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その3

2022/05/19

今回は、平成253月期の「売上計上漏れ」に係る更正の請求について述べたいと思います。253月期については、当コラムのその1で述べた「外注費の過大計上額」として当事業年度の所得金額に加算された 10,000,000 円の他に、本件「売上計上漏れ」として所得の額に加算された4,516,552円についての審査請求をしていますが、現在は併合審理となっています。先ずは、原処分庁に「売上計上漏れ」とされた4,516,552円についての更正処分及び更正の請求に遡ってその概略を触れてみたいと思います。

 

原処分庁の平成253月期の法人税額等の更正通知書によれば、更正の理由として、「請求人の総勘定元帳、請求書控及び売上先が発行する支払通知書を確認したところ、請求人の当事業年度の売上高は、別表2の金額の合計759,954,536円と認められるため、当該合計金額と請求人が当事業年度の益金の額に算入した売上高755,437,984円との差額4,516,552円は、売上計上漏れとして、当事業年度の益金の額に算入すべきものと認められます。したがって、法人税法22条2項の規定により、当該差額4,516,552円を当事業年度の所得金額に加算しました。」とするものです。

 

これに対し、請求人は前回に触れたように、更正の請求書における更正をすべき理由について、大要、「原処分庁は、自らの調査額と請求人の申告額との差額を『売上計上漏れ』であると認定して、当事業年度の所得金額に加算しているが、その手法は、法人税法22条4項の『一般に公正妥当と認められる会計処理の基準』基づくものではなく、別件の国税局査察官HK氏の供述に依拠した明確性を欠く金額である」旨を主張しています。そしてそれに加えて、当該供述のうち、原処分庁にとって都合のよい部分のみを摘み上げ、これを誇張して処分理由としている。」旨を主張しています。

 

HK査察官が供述しているとおり、上記の調査額と申告額との差額により算出された額は前期末からの繰越額を差し引きしても、常に23千万円の開差がある不明確な額であり、そのような、超推計的概算額が課税標準とはなり得ないのはもとより、更正処分等の課税をするための課税要件を充足するものではないこともまた明白です。これがI税理士が採用していた変則的期中現金主義による会計方式の当然の帰結なのですが、原処分庁はそれに気付いていないようです。

 

なお、更正の請求書には、「よって、平成253月期の所得金額は、10,000,000円の請求金額に本件請求額4,516,552円を加えた14,516,552円が減少することになり、課税売上高が減少すれば法人税等及び消費税等並びに加算税も減少することからそれに対応する税額は還付されなければならないものである。」とし、「これについては、国税通則法231項括弧書きが適用されることは言うまでもない。」とする更正をすべき理由を付して提出しています。

 

これに対して原処分庁は、令和4年2月25日付の「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知書」において、「貴法人(請求人)が令和4年1月7日付で提出した自平成24年4月1日至平成25年3月31日事業年度分の法人税に係る更正の請求書(以下、この更正の請求書に係る請求を『本件更正の請求』といいます。)について、調査の結果、下記のとおり更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められません。」とする内容を記していました。

 

因みに、上記通知書に「記」として、「貴法人は、本件更正の請求について、国税通則法第23条第1項括弧書きに該当するとして、更正の請求書を提出しています。国税通則法第23条第1項括弧書きは、同項2号に掲げる場合に適用されるところ、同号は、『前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の額金額(当該金額に関し更正があった場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があった場合には、更正通知書)に純損失等の記載がなかったとき』と規定しています。

 

「しかしながら、貴法人の自平成24年4月1日至平成25年3月31日事業年度分の法人税において、純損失等の金額は発生していないことから、同号には該当せず、本件更正の請求は国税通則法第23条第1項括弧書きには該当しません。また、国税通則法第23条第1項柱書に定める更正の請求を行うことができる期限(法定申告期限から5年)を経過しています。したがって、貴法人からの更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められません。」と記載されていました。

 

なお、「同課税事業年度分の復興特別法人税に係る更正の請求書及び同課税期間分の消費税及び地方消費税については、国税通則法第23条第1項括弧書きには該当しません。また、国税通則法第23条第1項柱書に定める更正の請求を行うことができる期限(法定申告期限から5年)を経過しています。したがって、貴法人からの更正の請求に対してその更正をすべき理由があるとは認められません。」とする処分が記載されていました。これらの処分を受けて、請求人は、審判所に対して令和4年3月4日、以下を内容とする審査請求を行いました。

 

審査請求の理由として請求人は、「令和3年5月7日付に後行して令和4年1月7日付でS税務署長(以下、「原処分庁」という。)宛に下記の(1)乃至(3)を内容とする更正の請求を行っていたところ、原処分庁から、令和4年2月25日付でいずれも国税通則法第23条第1項括弧書きには該当せず、また、同項柱書に定める更正の請求を行うことができる期限を経過していることを理由として、更正をすべき理由がない旨の①乃至⑤の通知書が請求人宛に送達された。そこで、本件更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知の取消を求める審査請求と現在進行中の令和3年12月2日付の審査請求とを併せて審理して頂きたくよろしくご配慮願いたい。」を内容とする審査請求書を審判所に提出しています。

               

(1)平成253月期の法人税額等の更正通知書における加算項目の売上計上漏れとして当事業年度の所得金額に加算された4,516,552円は、下記の減算すべき理由に述べるとおり、平成253月期の法人所得から減算されなければならない。なお、当期については、現在、本件事案に先行して別件の「更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知」に対する審査請求手続が進行中である。よって、平成253月期の所得金額は、先行の請求金額に本件請求額を加えた14,516,552円が減少することになり、課税売上高が減少すれば法人税等及び消費税等並びに加算税も減少することからそれに対応する税額は還付されなければならない。

 

(2)平成26月期の法人税額等の更正通知書における加算項目の売上計上漏れとして、当事業年度の所得金額に加算された44,620,672円は、上記(1)と同様、平成26年3月期の法人所得から減算されなければならない。当期についても、上記と同様、平成26年3月期の所得金額は、先行の請求金額に本件請求額を加えた44,734,072円が減少することになり、課税売上高が減少すれば法人税等及び消費税等並びに加算税も減少することからそれに対応する税額は還付されなければならない。

 

(3)平成27年3月期の法人税額等の更正通知書における加算項目の減価償却費の償却超過額として、当事業年度の所得金額に加算された14,069,376円は、青色申告の承認の取消に伴うものであり、下記の減算すべき理由に述べるように、平成273月期の法人所得から減算されなければならない。なお、当期の所得金額についても、先行の金額に本件請求額を加えた18,200,703円が減少することになり、課税売上高が減少すれば法人税等及び消費税等並びに加算税も減少することからそれに対応する税額は還付されなければならない。

 

請求人は、減算すべき理由の(1)及び(2)について原処分庁は、更正通知書において、「平成253月期の更正の理由の『売上計上漏れ』として、『総勘定元帳、請求書控及び売上先が発行する支払通知書を確認』してその合計759,954,536円と申告額755,437,984円との差額4,516,552円が算出され、同様に、平成263月期においては、1,242,918,686円と申告額1,198,298,014円との差額44,620,672円が算出されたとして、これらの差額を売上計上漏れであると認定して、それぞれの事業年度の所得金額に加算している。先行する審査請求書においても述べているように、原処分庁の当該売上計上漏れの金額の認定及びその根拠並びにそれぞれの事業年度の所得金額への算入については、法人税法第22条第4項の『一般に公正妥当と認められる会計処理の基準』によって行われたものではなく、別件の税法違反事件の公判期日の法廷における検察側(国側)の証人としての国税局査察部の査察官であったHK氏の供述を原処分庁が意図的に曲解、それに依拠した不適切、不適正な金額である。なお、同氏の証人尋問調書の抜粋は、先行する審査請求時に証拠説明書として御庁に提出済みである。」としています。(つづく)

文責(G.K

 

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