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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その4

2022/06/05

と言うのも、HK査察官は、そもそもの本件更正処分の基因となった査察調査において、脱税と同視すべき典型的な売上除外を意味する「売上計上漏れ」が確認されたことを供述しているのではなく、次期への売上の繰り延べ(期ズレ)があったことを供述、証言しているのです。このことは、原処分庁が悪質性を強調して主張する「売上計上漏れ」の原因は、請求人が法人税を免脱したもの、ないしはしようとしたものとは根本的に異なり、当時の関与税理士であったI税理士の会計思想ないし会計哲学、若しくは税務処理に関する考え方の認識の誤りから生じたものであり、その本質は翌期への繰り延べ分であったことを意味しています。そしてそれは、そもそも請求人が、偽りその他不正の行為をする、若しくはしようとする意思が全くなく、単に関与税理士の事実誤認による売上の繰り延べであることを明示しています。

 

これを、原処分庁は事実を歪曲し、誇張し、課税する意図をもって、請求人の悪質性を想起させる「売上計上漏れ」と認定したものであり、その認定自体が誤りである上に、課税標準となるべき金額すらも曖昧であり、更正処分の対象となる「売上計上漏れ」としての額すらも確定させているものではありません。HK査察官が認識し、供述しているとおり、請求人に係る平成253月期から平成283月期までの間における売上の額は、当該期間において加減算されて整合、平準化され、しかも、いずれも翌期に係る申告を確定させ、それに伴う法人税等も納付済みであることから、「売上計上漏れ」として当該年度の所得の額に加算した額は、同額を減算、還付しなければ根拠のない課税負担を国民(納税者)に強いることになります。

 

すなわち、同査察官も認識していたと思われるとおり、本件のような変則的期中現金主義を採る会計処理にあっては、上記のように調査額と申告額との差額をもって単純に「売上計上漏れ」を算出することは不可能、かつ誤りと言えます。加えて、本件3月決算のケースでは、試算表の買掛金、未払費用等の残高が決算修整されるまで(翌期のゴールデンウィーク前まで)は、削除することなく貸方に残されており、見落としによる計算誤りをする蓋然性が非常に高かったこと(現に、I税理士は、平成28年4月下旬までは請求人に行った平成27年3月期の決算説明において、当期利益は約1億円としていたが、決算修正後の利益は約2億円であった)、また、業種の特殊性から、工期の中途での一部設計変更、再変更、追加工事、それにまで至らない手直しレベルの追加等がつきものであり、その度毎に請求書等の書類が作成されることから、それらの伝票類のみを根拠に本来廃棄すべき請求書等までも含めて積み上げ計算すると、売上額(調査額)と申告額には開差が生じることになります。

 

重複しますが、原処分庁が主張する売上計上漏れに関しては、これまでにも述べているとおり、I税理士が変則的期中現金主義を採用していたことから、売掛金の入金及び相殺により総勘定元帳の売掛金の残高が不足すると、期中で金額を誤って計上していたものを修正したり、期中での手直し、一部設計変更等に伴って金額が変更になったものを修正計上したり、期ズレしていたものを前倒し計上したり、誤って相殺を二度計上していたものの是正等をして増額計上することで売掛金残高を整合させていました。この事実については、証拠資料を示した上で、このような会計処理が常態化している旨を原処分庁担当者らに説明をしてきたように、その論理的、会計(学)的、また複式簿記における貸借一致の原理からの帰結は、売掛金が存在する以上、それに対応する額の相手勘定である売上も存在しなければならないことであり、売上計上漏れはあり得ないことも同時に説明しています。

 

と言うのも、借方の売掛金を増額して計上すれば、その分の貸方の売上も増額計上しなければ、貸方と借方が均衡、バランスすることがなく、その増額計上分の中に売上計上漏れ分とされている額、例えば平成253月期4,516,552円、平成263月期44,620,672円、平成273月期であれば14,968,141円が含まれていなければ、貸借が一致しないからです。このメカニズムについては、原処分庁担当者らに繰り返し説明していますが、複式簿記の原理を理解していないのか、借方に外注費が計上され、貸方に売掛金が計上されている意味、そして相殺の意味が理解されていません。

 

次に、原処分庁に外注費の過大計上(二重計上、相殺)であるとされたものについて、若干、敷衍すれば以下のとおりとなります。(例えば、取引を単純化して示すこととして、売上が1,000発生し、外注費が200発生したとします。)

 

〔一般的な処理〕

当月

(借方)  売掛金1,000 / (貸方) 売 上    1,000

外注費 200 /      買掛金(未払金)200

 

翌月(銀行振込があった場合)

(借方)  預 金     800 / (貸方) 売掛金    1,000

        買掛金(未払金)200 /  

 

【請求人の総勘定元帳での処理】

当月

(借方)  売掛金1,000 /(貸方) 売 上1,000 

 

翌月(銀行振込があった場合)

(借方)  預 金 800  /(貸方) 売掛金1,000

          外注費 200

このとき、誤って外注費を重複して計上(相殺)した場合は、以下の仕訳となる(売掛金残高が200不足する)。

 

【外注費を重複(相殺)計上】

  (借方) 預 金800  / (貸方) 売掛金1,000

       外注費200

外注費200  /      売掛金 200

 

そこで、売上1,000/売掛金1,000を計上して、一旦、当初仕訳①を取消し、新たに売掛金1,200/売上1,200として計上〈売掛金・売上(益金)を200増額計上〉し、外注費(損金)の重複(相殺)計上分との損益を整合させています。原処分庁(及び審判所)は、借方の外注費の過大計上、あるいは外注費の二重計上若しくは相殺としての視点のみから加算していることから、真実の額からは乖離したものとなっており、上記のとおり、貸方に売掛金・売上(益金)として増額計上されている分200を減額し、損益を均衡、バランスさせなければなりません。

 

なお、売掛金については、既述したとおり、I税理士が取引先等から入金あるいは相殺等の理由により総勘定元帳の売掛金残高が不足すると、期中で金額を誤って計上していた分を訂正計上したり、期中での受注工事の手直し、一部設計変更等に伴って金額が変更になった分の訂正計上をしたり、期ズレになっていた分の前倒計上をしたり、あるいは誤って相殺を二度計上していた分の是正等をして増額計上するなどして、売上を増額計上して売掛金残高を整合させていることから、売掛金残高が存在する限り、必ず売上も存在することになり、売上計上漏れは、論理上及び会計(学)上もあり得ないことになります。I税理士は、記帳に当たってこのような訂正手法を採って金額を修正しており、一見してその(総額置換、修正している)ことの追跡、遡求確認が容易ではなく、困難であることは事実です。

 

一方で、確認が容易にできるものもあり、それらの両者が混在しているところに事態を複雑化させる要因がありますが、いずれにしても、追跡、遡求確認が困難であることだけは紛れもない事実です。これについては、変則的期中現金主義に由来するものと考えられ、その説明は原処分庁担当者に累度にわたって、追加の資料を示しながら行っています。そもそも、売上計上漏れについては、原始帳票類等全ての会計データが、国税局及び検察庁に押収されていたことから、その内容について請求人が知る手掛かりは、当初は皆無であり、請求人は原処分庁に累度にわたり、その計算内容、計算過程等について問い合わせていましたが、その回答は二転三転するなど変遷が見られ、その実態は杳として知ることが叶いませんでした。

 

結局、原処分庁の売上計上漏れの主張は、その基礎となる認定額の算出自体が明確な根拠(証拠)に基づくものではなく、当初契約後の設計変更、一部手直し等に係る請求書、領収書、売掛金回収表等の伝票類(本来、廃棄すべきものを含めて、任意、恣意的にピックアップしており、二重、三重に加算したものを含んでいるとみられる)積み上げ計算した額と請求人の申告額との差額であることが判明したのは、検察庁に証拠書類等の開示請求をして得られた証拠等のうちからであり、かなり後になってからでした。原処分庁は、売上計上漏れについての具体的な計算方法及び算出額は、その曖昧さ故に、事前、事後を通して請求人に真相を伝えることができなかったものと推察されるところです。(つづく)

文責(G.K

 

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