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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その5

2022/06/18

前回の外注費の過大計上(二重計上、相殺)額について更に述べると、平成25年3月期の外注費の過大計上額10,000,000円は、これまでに述べてきたとおり、借方 外注費10,000,000/貸方 売上10,000,000としていることから損益に関係なく、借方の外注費だけを否認するのは、貸借が均衡せず、誤りです。また、平成26年3月期の外注費の過大計上額113,400円の二重計上及び平成27年3月期の外注費の過大計上としている外注費と売上(売掛金)との相殺分4,131,327円は、国税局査察官のHK氏がその供述でも認めているとおり、増額計上している分の中に含まれており、損益に影響はなく、敢えてこれを二重計上とするならば、売上も二重計上していることになり、平成27年3月期の所得金額に外注費のみを過大計上と(加算)すべきではなく、売上も過大計上していることになり、したがって、損益は0となることから、113,400円及び4,131,327円の加算した額は減算しなければ貸借が同額にはなりません。

 

また、本来、課税要件充足に係る第一義的立証責任は原処分庁にあり、況して不利益処分を行うに当たっては、原処分庁は請求人にその理由を提示して明らかにしなければなりませんが、本件更正をすべきと認められない旨の通知処分の基になった更正処分において原処分庁は、その義務を果たすことなく、逆にその責任を請求人(納税者)に転嫁するべく、牽強付会、虚偽主張を繰り返すばかりで、請求人の主張には耳を貸していません。この点、そもそも請求人が偽りその他不正の行為をなしたものではなく、関与税理士の事実誤認による期中の売上額の加減算調整分ないしは繰り延べであるところ、原処分庁は当該重要事実を歪曲し、誇張し、悪質性を作出し、課税する意図をもって請求人の偽りその他不正の行為による「売上計上漏れ」と認定しているものです。

 

また、本件当初更正処分を行うに当たって原処分庁は、請求人(代理人)に対して、国税通則法74条の11第2項に基づく「調査の終了の際の手続」を行わなかったにも拘らず、平成291110S税務署庁舎内において、税務代理人に、詳細な調査結果の内容の説明を行った上で修正申告等についてと題する書面を交付したとする悪意の嘘を主張し、後に請求人が当該書面の写しの交付請求をしたところ、原処分庁は直ぐにそれと分かる改竄した書面を請求人に交付するなど、明白な法令違反を犯しています。なお、これに関し、原処分庁が請求人に説明をしたと主張する当日の19日後の平成2911291650分、本件当初更正処分等の実質上の指揮を執っていた国税局調査査察部査察第3部門の主査であるST氏から電話で、「査察に至ったこれまでの経緯及び税務調査結果等については、(請求人に)説明しないことになりました。」と告げられており、原処分庁の嘘は明白です。加えて、これに先立つ上記の調査の終了の際の手続として、実際に説明をしたと原処分庁が主張するS税務署法人課税第7部門統括官TY氏及びN税務署法人課税第8部門の統括官のN氏らも、「別件の刑事裁判が進行中なので調査の内容等については一切答えられません」として(代理人に)説明を拒否していました。

 

このように、原処分庁の本件更正処分は、手続面での誤りに加えて、事実認定においても、それに至る重要な基礎となる部分(事実)に虚偽があり、課税標準となるべき金額すらも確定させていないことから、更正処分の対象となるべき「売上計上漏れ」の正確な額が不明で、原処分庁が伝票類を恣意的に積み上げ計算した額と請求人の申告額との差額であり、正確な売上計上漏れ額すらも確定しない曖昧で根拠に乏しいものとなっています。何より問題とすべきは、審判所がこれらの誤りをチェックして、その誤りを糺すのではなく、仲間意識か否かは知る由もありませんが、そのまま審判所の判断としているところに根深く重大な病巣があるやに思われるところです。

 

因みに、国税不服審判所のトップであるHY国税不服審判所長は、「審判所においては、あくまでも行政のあり方を迅速に見直すという不服審査ですから、補充調査みたいなことは行いません。当時この証拠でこの課税をしてよかったかということを争点主義的に見ていく」と述べています。そうすると、そもそも原処分庁が示している程度の、しかも誤った証拠(単に恣意に基づく誤った調査額と申告額の差額の提示)をもって、本件のような更正処分を行っていいのかがより問われるべきであり、納税者は、平等原則から導かれる考え方として原処分庁が示している証拠と同程度の反証をすれば平等、公平概念に適うものと考えられます。

 

次に、原処分庁が主張している国税の徴収権の消滅時効の観点から検討してみたいと思います。原処分庁は、本件更正の請求を時効の観点から、国税の徴収権の消滅時効に関する規定を根拠に国税の法定申告期限から5年を超えており、請求人の主張には理由がないと主張しています。しかし、ここで検討、審理されるべきは、国税の徴収権の時効の解釈のみではなく、「還付金等の消滅時効」に重きを置いた検討されなければなりません。加えて、そもそも、上記のとおり、原処分庁が達ての要請をなし、請求人をして行わしめた更正の請求について、この期に及んで、原処分庁自らが当該更正の請求は「理由がない」と主張すること自体、甚だ不見識で見苦しく、自己矛盾も甚だしく道義的観点はもとより、禁反言の原則に照らしても許されるものではありません。

 

原処分庁は、「国税の徴収権の消滅時効」の規定から、平成25年3月期ないし平成27年3月期の各更正の請求書が提出された令和3年5月7日は、当該各申告書に係る国税の法定申告期限から5年を超えており、通則法23条1項1号に規定する更正の請求をすることができる期限を徒過していると主張しています。しかし、通則法74条1項は「還付金等の消滅時効」につき次の規定を置いています。「還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する。」とし、同条2項では、「第72条第2項及び第3項(国税の徴収権の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、前項の場合について準用する。」と規定しており、同条第3項は、「国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する。」としています。

 

民法166条1項の規定は、「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」とし、同項1号は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。」また、同項第2号は、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。」と規定しています。当然ながら、租税債権債務をめぐって租税行政庁と納税者間に争いのある間は、債権者(請求人)が権利を行使する(更正の請求をすること)ことができない(権利を行使できない状態にある間は、仮令、権利が発生していても消滅時効が進行することはあり得ず、これを「法律上の障害」という。)から、審判所の判断が示された時、すなわち令和3年3月13日(請求人受領日)が「債権者が権利を行使することができることを知った時」あるいは「権利を行使することができる時」となり、その時点から5年間ないしは10年間は、還付金の請求、すなわち更正の請求をすることができることになり、したがって、原処分庁の主張は理由がないことになります。

 

次に、原処分庁は、平成27年3月期における請求人の給与手当の過大計上額とした分について、「受注工作資金を捻出するための支給事実のない架空の賃金」を計上したとしています。しかし、本件については、国税局査察第3部門総括主査YM氏及び同主査AK氏らの指導によって、請求人の関係法人であるとしたHS社の給与支給を請求人の給与手当の支給であると計算を引き直し、「架空給与の支給」、「裏金の支出」、「給与手当の過大計上額」などの偽りその他不正の行為を連想させるものとして誇張し、強引にその悪質性を作出、捏造することによって、請求人の代表取締役であったA氏に誤解と強迫観念を植え付け、同氏個人の金員を平成271214日から平成28年1月20日までの期間に、HS社宛に強制的に振込、清算させて給与手当の過大計上に関する問題の決着を図っていました。

 

一方で、原処分庁は、令和1年10月7日付で請求人に対する当初更正処分に先立って、当該給与手当の過大計上問題(出捐された金員の所有は個人か法人か、返還先は請求人かHS社か、回収段階での売上ではない入金(返済金)の処理及び請求人と新鋼間の収益及び費用等の帰属の問題、課税の問題等々)を有耶無耶にしたまま、当該「貸付金」と同額を請求人による「給与手当の過大計上額」(後に交際費に振替えている。)と事実を偽り、事実上、二度課税(二重課税)したものです。こうした行為は、単純な誤りとしては見過ごすことのできない、重大な違法行為であり、確信的意思を伴う、許されざる公権力の誤用、濫用であり、憲法に根拠を置く、租税法律主義及び租税平等主義の理念とも相容れぬ、国家による犯罪行為とも評価されるものです。(つづく)

文責(G.K

 

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