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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その6

2022/07/05

(前回の続き)請求人には給与手当の過大計上額はもとより存在せず、原処分庁による事実誤認や法令無視等が明らかである当該違法課税(処分)に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分は直ちに取り消されなければなりません。請求人が証拠等を示した後も、猶も「合理的な理由は認められ」ないとする原処分庁の主張は、無辜の国民、納税者を欺き、陥れようとする極めて適切性を欠く悪質な発言、主張であるとともに、更正の請求の機会さえも奪わんとするものであり、原処分庁の主張からは正当性の欠片すらも見出すことができません。

 

原処分庁は、詐欺にも等しいと思われるような行為をしておきながら、それにつき、請求人が証拠を示して、国家権力が誤って発動、行使された事実の指摘及びそれに係る金銭的損害の回復を求めて真摯な行動や主張をしているのに対し、相変わらず、真剣に受け止めているとは思えない態度での主張や発言を繰り返しており、このことに怒りと驚きを禁じ得ません。この事態は、原処分庁が自らの適法性を主張する以前の問題であり、租税行政庁として行き過ぎた行為であることはもとより、租税法律主義及び租税公平主義を憲法規定に置く法治国家としてのなすべき行為ではないことを自覚、認識し反省すべきです。

 

次に、青色申告承認の取消に係る減価償却費の償却超過額について述べてみたいと思います。原処分庁は、令和1年10月7日付青色申告の承認取消処分により、請求人の平成27年3月期の減価償却費の償却超過額として、14,069,376円を当事業年度の所得金額に加算しました。原処分庁による青色申告の承認の取消通知書によれば、取消処分の基因となった事実として、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度において、原処分庁が関係法人であるとしているKK社及びHG社に対する外注費として総額221,932,161円を総勘定元帳の外注費科目に計上し、損金の額に算入しているとしています。

 

そして、上記の関係法人には事業実体が認められず、当該外注費は請求人の前々代表取締役であるA氏の指示によって、本件関係法人から架空の請求書を発行させることで、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していたとの故意的な誤認定をし、これらのことが当該事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していることに該当するとして、当該事業年度以降の青色申告の承認を取り消すとしたものです。

 

しかし、そもそも関係法人と称したのは原処分庁であり、請求人はその呼称に納得し、満足しているものではありません。あくまでも元請事業者からの発注を請けて設計、管理等の事業を担当する一次下請である請求人の実際の工事施工面を担当する二次下請事業者の一員であり、請求人の正常な業務における独立した正常な外注先として当該「関係法人」は業務遂行上、不可欠な存在です。なお、青色申告の承認の取消処分については、その理由付記の十分性について争われた大阪地裁昭和50年5月9日判決(行集26巻5号714頁)があり、上記取消処分の検討をするに当たっては重要と思われることから、以下のかぎ括弧内の判決文を参照したいと思います。

 

「取消通知書に記載すべきことが要求される附記の内容および程度は、相手方において、当該取消処分がいかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用してなされたかを記載自体から了知しうるものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の原因となった具体的事実関係をも当然に知りうるような例外の場合を除いては、法の要求する附記としては不十分であるといわねばならない。また右附記の内容として右各号を掲げるほかに、若干の文言が記載されていたとしても、それが抽象的なものであって単に号数を掲げたのと異ならないとみられる場合にも、附記の内容が不十分であるといわねばならないことはいうまでもない。」

 

大阪地裁は、上記の判断を示していますが、原処分庁は請求人の青色申告の承認の取消通知書において、本件関係法人に事業実体がないとする根拠として、8つの箇条書きで示すのみです。それらはもとより本件関係法人に事業実体がないことの具体的な事実等を直接証拠付けるものではなく、聊か度の過ぎた課税目的のこじ付けと言わざるを得ない程度の間接事実と言わねばなりません。実態として本件関係法人に事業実体があったからこそ、また、これまで請求人は元請事業者からの発注を請けて、それらを二次下請としての関係法人以下の下流企業に分配して請け負わせ、それぞれの業務を管理監督して業務を完成させてきたからこそ、現在も請求人が一次下請事業者として存在しているのです。

 

加えて、当該外注費につき、請求人の前々代表取締役であるA氏が指示して、本件関係法人から架空の請求書を発行させた事実は一切なく、また、その直接証拠を原処分庁が示しているものでもありません。原処分庁が課税をするがために作出した虚偽事実であり、また、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していた事実も、もちろんなく、全くの作文、デッチあげであることから、誤りが正されるべきは当然です。現に、S税務署(原処分庁)ですら国税局が査察調査に着手する直前までは、「初めてのことでもあり、今回は署長宛に始末書を出して終わりです」との趣旨の調査官の指導に止めて、青色申告の承認の取消はしないことを確約し、それに沿った請求人の「誓約書」をS税務署長宛に提出させていました。これは明白な禁反言の原則(信義則)に違反します。したがって、平成27年3月期の減価償却費の償却超過額として、所得金額に加算された14,069,376円は減算されなければなりません。

 

審査請求における審理過程には、口頭意見陳述申立てという手続があります。審判所のパンフレットにおける説明によれば、「審査請求人は、自己の主張を書面で提出するほか、口頭で意見を述べる旨(口頭意見陳述)の申立てをすることができます。また、口頭意見陳述の場には原処分庁の担当者が原則として出席しますので、審査請求人は、その場で、担当審判官の許可を得て、原処分庁の担当者に質問をすることができます。」とされています。

そこで、請求人は、審判所に対して、概要以下の口頭意見陳述申立を行いました。

 

先ず、「本審査請求に当たり、審判所のパンフレット『審査請求よくある質問-Q&A-』における、『納税者の正当な権利利益を救済すること及び税務行政の適正な運営を確保することを目的とした国税庁の特別の機関であり、審査請求人と国税の賦課徴収を行う税務署や国税局などの執行機関との間に立ち、国税に関する法律に基づく処分に対する審査請求について公正な第三者的立場で裁決を行います』とする記載内容が文字どおりに実践、遂行され、審判所がその役割を果たすことを望むものである」としました。

 

次に、「本件更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知処分の基は、平成291122日付の原処分庁による前当初更正処分である。当該前当初更正処分及び令和1107日付当初更正処分のいずれも国税通則法74条の112項に基づく『調査の終了の際の手続』としての説明がなかった上に、行政手続法141項所定の理由の附記も十分ではない二重の違法があった。そこで、請求人は平成30118日(青色申告取消に係る再調査の請求は平成291124日付にて提出済)、原処分庁宛の再調査の請求を行ったところ、原処分庁は最高裁判決を無視して、一旦、前当初更正処分を取り消し、処分理由を差し替えて令和1107日付で、改めて当初更正処分を行った。これに対し、請求人は、令和11122日付で審判所宛に審査請求をしていたところ、令和3310日付で『更正処分及び加算税の賦課決定処分の一部を取り消し、その他の審査請求をいずれも棄却する』との裁決が示された。」

 

「当該裁決において、審判所は、原処分庁(国税局査察部)による『はじめに結論ありき』の強引な違法調査の着手、重要な証拠の隠蔽及び捏造、虚偽の質問てん末書の作成、それらに基づく誤った事実認定、誤った法令等の解釈・適用並びに税額計算を誤った更正処分を行っているにも拘らず、それらの内容を吟味することなく、事実上そのまま何らの確認、調査もすることなく、自らの認定事実として裁決というお墨付きを与えた。その結果として、原処分庁(国税局査察部)による当初更正処分には、数々の事実認定の誤りや複式簿記の原理を無視する初歩的かつ明白な誤りがあるにも拘らず、審判所はそれらを『当審判所において計算すると原処分の額といずれも同額となる』などとし、適正、適法であるかの判断を示しており、ダブルで誤りを犯すこととなっている。」

 

「このことから、請求人は原処分庁に対し令和3317日、当該当初更正処分におけるそれらの誤りにつき職権による減額更正を求めた。しかしながら、同年326日、原処分庁の審理専門官部門の審理専門官であるMT氏から、『当該当初更正処分は、国税局(査察)マターなので、当時の税務調査に係る一切の資料は当署には存在せず、その資料にアプローチすることさえもできないので、請求人の方から更正の請求をして頂けませんか』との趣旨の強い要請を受けた。ところが、原処分庁のこの強い要請に基づいて行った請求人からの更正の請求は、後に判明したが、原処分庁が請求人の求めを撥ね付けるべく悪意で仕掛けたとしか思われない落とし穴が待ち構えていた。」としています。(つづく)

文責(G.K

 

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