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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その7

2022/07/18

(前回の続き)「その1つは、請求人が更正の請求書を提出して暫く経った時点で、通則法2321号の該当性の観点及び国税の『徴収権の消滅時効』に関する規定を根拠に、当該更正の請求の一部については認容したものの、その他については、請求人の更正の請求は通則法232項には該当せず、また、更正の請求を行うことができる法定申告期限の徒過から『理由がない』と主張してきた。そもそも、原処分庁からの強い要請に基づいて請求人が行うことになったところ、その際、通則法第23条第1項第1号の理由では5年の時効を経過しているので難しい(受理できない)と審理専門官に言い添えられたことから、その助言の趣旨に従って主位的には同条第2項第1号としつつも、予備的に同条第1項第1号に該当する旨の更正の請求としたにも拘わらず、原処分庁の主張は、甚だ不見識で自己矛盾も甚だしく、道義的観点はもとより、法的には禁反言(信義則)の原則に照らしても許容されるものではない。」

 

「その2つは、事実認定及び処分を誤っていることがあまりにも明らかなものについては、認容せざるを得ず、所得の額に加算していた5,300万円を超える額については、原処分庁は、これを取消し、減算し、国税、地方税を合わせてそれに対応する約2,400万円の税額の還付をしてきた。他方、審判所は、『当審判所において計算すると原処分の額といずれも同額となる』と裁決しているところ、現に、このように5,300万円を超える額の計算の誤りがあることを見逃した上、その他の処分についても原処分庁による更正処分を『適法』としており、その役割を果たしていたかについては極めて疑問に思われるところである。」

 

「更なる疑問は、還付加算金の計算の始期が別件の租税法違反事件の疑いを指摘された時点(平成28122日)で予納を済ませていたことから、当然、その時点と思いきや、然に非ず、本件更正の請求をした令和457日であった。これについては、原処分庁に『還付加算金』に係る再計算についての申立書を提出し、更正の請求の経緯、予納の時期、還付加算金に係る計算の始期等について申立人(請求人)の考え方及び善処方を考慮するよう要望したが、『これについて定める法令は存在しない』と、突っ撥ねられ、拒否されている。」

 

「この状況は、原処分庁を含む租税行政庁の独断的、恣意的意向がそのまま事実認定に反映され、それを審判所はなぞるだけのセレモニーと化していることを示し、審判所は、無制限に適正、適法であるかのお墨付き(裁決)を与える機関となっている。原処分庁、審判所を含む租税行政庁は、自らの行いは、絶対的に正義であり、国民はそれに対し服従する関係と看做す、これでは、将に国税の賦課徴収を行う執行領域における警察と検察及び裁判所の機能を集中・統合した強大な権限・権力を国民が白紙委任しているようなものである。権限・権力は集中すればするほど、必ず腐敗するのが世の常である。現状の審判所は、国家権力の誤用、濫用をノーチェックで認め、それらに適正・適法性のお墨付きを与えているのみであり、国民の利益となるべき機能と役割を果たしているとは到底思われず、将に審判所の存在意義、役割が問われる事態である。」とする(口頭意見陳述における)陳述概要を提出しました。

 

続いて原処分庁が主張する国税の「徴収権の消滅時効」については、「原処分庁は、徴収権の時効の観点から、国税の徴収権の消滅時効に関する規定を根拠に国税の法定申告期限から5年を超えており、請求人の主張には理由がないとしている。しかし、ここで検討、審理されるべきは、国税の徴収権の時効の解釈からのみではなく、国税の『還付金等の消滅時効』が検討されなければならない。加えて、そもそも、上記のとおり、原処分庁が達ての要請をし、請求人をして行わしめた更正の請求について、この期に及んで、原処分庁自らが『理由がない』と主張すること自体、甚だ不見識かつ自己矛盾も甚だしく道義的観点はもとより、禁反言の原則に照らしても許されるものではない。原処分庁は、ここでも、『税務署長その他責任のある立場にある者の正式の見解の表示ではない』と抗弁して責任を回避し、審判所はそれを認めるつもりではないはずであろう。」

 

「原処分庁は、『国税の徴収権の消滅時効』の規定から、平成253月期ないし平成273月期の各更正の請求書が提出された令和357日は、当該各申告書に係る国税の法定申告期限から5年を超えており、通則法231項第1号に規定する更正の請求をすることができる期限を徒過していると主張する。しかし、通則法74条1項は『還付金等の消滅時効』につき次の規定を置いている。『還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する』とし、同条2項では、『第72条第2項及び第3項(国税の徴収権の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、前項の場合について準用する』と規定しており、同条第3項は、『国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する』としている」

 

そして「民法166条1項の規定は、『債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する』とし、同項1号は、『債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき』また、同項第2号は、『権利を行使することができる時から10年間行使しないとき』と規定する。当然ながら、租税債権債務をめぐって租税行政庁と納税者間に争いのある期間中は、債権者(請求人)が権利を行使する(更正の請求をする)ことができないから、審判所の判断が示された時、すなわち令和3313日(請求人受領日)が『債権者が権利を行使することができることを知った時』あるいは『権利を行使することができる時』となり、その時点から5年間ないしは10年間は、還付金の請求、すなわち更正の請求をすることができることになる。したがって、原処分庁の主張は理由がないことになる」と陳述概要には記載しています。

 

次いで、原処分庁が主張する「売上計上漏れ、外注費の過大計上(二重計上、相殺)」については、次のように記載しました。先ず、売上計上漏れについては、「平成253月期、平成263月期、平成27年3月期の法人税及び同地方法人税に係る本件通知処分における『売上計上漏れ』について、I税理士は、変則的期中現金主義を採用しており、売掛金の入金及び相殺により総勘定元帳の売掛金の残高が不足すると、期中で金額を誤って計上していたものを修正したり、期中での手直し、一部設計変更等に伴って金額が変更になったものを修正計上したり、期ズレしていたものを前倒し計上したり、誤って相殺を二度計上していたものの是正等をして増額計上することで売掛金残高を整合させていた。」

 

「この事実については、証拠資料を示した上で、こうした会計処理が常態化している旨を原処分庁担当者らに説明をしているが、その論理的、会計(学)的、また複式簿記における貸借一致の原理からの帰結は、売掛金が存在する以上、それに対応する額の相手勘定である売上も存在しなければならないことであり、売上計上漏れはあり得ないことも同時に説明している。というのも、借方の売掛金を増額計上すれば、その分の貸方の売上も増額計上しなければ、貸方と借方が均衡、バランスすることがなく、その増額計上分の中に売上計上漏れ分とされている額、例えば平成253月期4,516,552円、平成263月期44,620,672円、平成273月期であれば14,968,141円が含まれていなければ、貸借が一致しないからである。」

 

「このメカニズムについては、原処分庁担当者らに繰り返し説明しているが、複式簿記の原理を理解していないのか、借方に外注費が計上され、貸方に売掛金が計上されている意味、そして相殺の意味が理解されていない」としています。次に、外注費の過大計上(二重計上、相殺)については、「複式簿記の原理を外注費の過大計上(二重計上、相殺)とされているものについて敷衍すれば、以下のとおりとなる。例えば、取引を単純化して示すこととして、売上が1,000発生し、外注費が200発生した場合の仕訳は、以下のように図示でき」ます。(つづく)

文責(G.K

 

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