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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その8

2022/08/06

(前回の続き)仕訳については、既に本コラムその4で示したものと同様ですが、原処分庁の初歩的な誤認と簿記原理を確認する意味において再度記載し、解説することとしました。原処分庁が外注費の過大計上(二重計上、相殺)と事実を誤って認定しているものについて、複式簿記の原理と仕訳の側面から敷衍すると、以下のようになります(取引を単純化して、売上が1,000発生、外注費が200発生した場合としています。)。そこで、陳述概要は以下の内容を記して提出しています。 

 

〔一般的な処理〕

当月

(借方) 売掛金1,000   /(貸方)  売 上1,000

外注費 200   /  買掛金 (未払金) 200

 翌月(銀行振込があった場合)

(借方) 預 金 800   /(貸方) 売掛金1,000

 買掛金(未払金)200

 

【請求人の総勘定元帳での処理】

当月

(借方) 売掛金1,000     /(貸方) 売 上1,000

翌月(銀行振込があった場合)

(借方)  預 金 800       (貸方)   売掛金1,000

      外注費 200

 このとき、誤って外注費を重複して計上(相殺)した場合は、次の仕訳となる。(網掛け部分の売掛金残高が200不足する)

【外注費を重複(相殺)計上】

(借方)  預 金 800     (貸方)  売掛金1,000

      外注費 200

外注費 200   /           売掛金 200

「そこで、(借方)売上1,000(貸方)売掛金1,000を計上して、一旦、当初仕訳①を取消し、新たに(借方)売掛金1,200(貸方)売上1,200として計上〈売掛金・売上(益金)を200増額計上〉し、外注費(損金)の重複(相殺)計上分との損益を整合させている。原処分庁(及び審判所)は、借方の外注費の過大計上、あるいは外注費の二重計上若しくは相殺としての視点のみから加算していることから、真実の額からは乖離するものとなっています。

上記のように、貸方に売掛金(売上=益金)として増額計上されている分200を減額し、損益を均衡、バランスさせなければならない。」

 

「なお、売掛金については、既述したとおり、I税理士が取引先等から入金あるいは相殺等の理由により総勘定元帳の売掛金残高が不足すると、期中で金額を誤って計上していた分を訂正計上したり、期中での受注工事の手直し、一部設計変更等に伴って金額が変更になった分の訂正計上をしたり、期ズレになっていた分の前倒計上をしたり、あるいは誤って相殺を二度計上していた分の是正等をして増額計上するなどして、売上を増額計上して売掛金残高を整合させている。そうすると、売掛金残高が存在する限りは必ず売上も存在することになるから売上計上漏れは、論理上及び会計(学)上もあり得ない。I税理士は、記帳に当たってこのような訂正手法を採って金額を修正しており、一見してその(総額置換、修正している)ことの追跡、遡求確認が容易ではなく、困難であることは事実である。」

 

「一方で、確認が容易にできるものもあり、それらの両者が混在しているところに事態を複雑化させる要因があり、いずれにしても、追跡、遡求確認が困難であることだけは紛れもない事実である。これについては、変則的期中現金主義に由来するものと考えられ、その説明は原処分庁担当者に累度にわたって、追加の資料を示しながら行っている。そもそも、売上計上漏れについては、原始帳票類等全ての会計データが、国税局及び検察庁に押収されていたことから、その内容について請求人が知る手掛かりは、当初は皆無であり、請求人は原処分庁に累度にわたり、その計算内容、計算過程等について問い合わせているが、その回答は二転三転するなど変遷が見られ、その実態は杳として知ることが叶わなかったものである。」

 

「結局、原処分庁の売上計上漏れの主張は、本コラムその7で示した理由に加え、ここでは借方の費用の発生の正当性の是非にのみに着目してその額(外注費)を否認し、貸方の収益の発生(売掛金)を無視して放置しており、その基礎となる認定額の算出自体に明らかな誤りがあり、したがって、明確な根拠(証拠)に基づくものではない。更に、当初契約後の設計変更、一部手直し等に係る請求書、領収書、売掛金回収表等の伝票類(本来、廃棄すべきものまで含めて、恣意的にピックアップしており、二重、三重に加算したものを含んでおり)積み上げ計算した額と請求人の申告額との差額であるのは当然であり、そのことが判明したのは、検察庁に証拠書類等の開示請求をして得られた証拠等のうちからであり、かなり後になってからであった。原処分庁は、売上計上漏れについての具体的な計算方法及び算出額は、その曖昧さ及び虚偽性の故に、事前、事後を通して請求人に真相を伝えることができなかったものと推察されるところである。」

 

「重複するが、外注費の過大計上(二重計上、相殺)額のうち、平成253月期の外注費の過大計上額10,000,000円については、借方 外注費10,000,000/貸方 売上10,000,000としていることから損益に関係なく、借方の外注費だけを否認するのは誤りである。平成263月期の外注費の過大計上額113,400円の二重計上及び平成273月期の外注費の過大計上としている外注費と売上(売掛金)との相殺分4,131,327円は、HK査察官もその供述で認めているとおり、増額計上している分の中に含まれており、損益に影響はなく、敢えてこれを二重計上とするならば、売上も二重計上していることになり、平成273月期の所得金額に外注費のみを過大計上として加算すべきではなく、売上も過大計上していることになる。したがって、損益は0となることから113,400円及び4,131,327円の加算した額を減算しなければならない。」

 

「ところで、本来、課税要件充足に係る第一義的立証責任は原処分庁にあり、そして、不利益処分としての更正処分を行うに当たっては、(故意ないし過失を含む本件のような誤った事実認定の可能性が考慮されることから)税務調査の結果は請求人に説明されなければならないが、原処分庁は、その義務を果たすことなく、逆にその責任を請求人(納税者)に転嫁するべく、牽強付会、虚偽主張を繰り返すばかりである。この点、そもそも請求人が、偽りその他不正の行為をなしたものではなく、関与税理士の事実誤認による期中の売上額の加減算調整分及び繰り延べ分であるところ、原処分庁は当該重要事実を歪曲し、悪質性を誇張、作出して課税する意図(故意)をもって請求人の偽りその他不正の行為による「売上計上漏れ」と誤った認定したものである。」を趣旨とする陳述概要としています。

 

これまでにも累度に渡り述べてきたとおり、本件当初更正処分を行うに当たって原処分庁は、請求人(代理人)に対して、国税通則法74条の112項に基づく「調査の終了の際の手続」を行わなかったにも拘らず、平成291110日札幌南税務署庁舎内において、代理人に、詳細な調査結果の内容の説明を行った上で、修正申告等についてと題する書面を交付したと嘘の主張をし、後に請求人が当該書面の写しの交付請求をしたところ、原処分庁は直ぐにそれと分かる改竄した書面を請求人に交付するなど、明白な法令違反をしています。これについては、原処分庁が請求人に説明をしたと主張する当日の19日後の平成2911291650分、本件当初更正処分等の実質上の指揮を執っていたS国税局調査査察部査察第3部門の主査であるST氏から電話で、「査察に至ったこれまでの経緯や税務調査の結果等については、(請求人に)説明しないことになりました。」と告げられていることからも、原処分庁の嘘は明らかです。

 

加えて、これに先立つ上記の調査の終了の際の手続として、実際に説明をしたと原処分庁が主張するS税務署法人課税第7部門統括官TY氏及びN税務署法人課税第8部門の統括官のN氏らも、「別件の刑事裁判が進行中なので調査の内容等については一切答えられません」として(代理人に)説明を拒否していたのです。このように、原処分庁の本件更正処分は、手続面での誤りに加えて、事実認定においても、それに至る重要な基礎となる部分(事実)は虚偽であり、課税標準となるべき金額すらも確定させていないことはもとより、更正処分の対象とした「売上計上漏れ」そのものが捏造されたものであり、当該売上計上漏れとした正確な額も不明、原処分庁が伝票類を恣意的に積み上げ計算した額と請求人の申告額との差額に過ぎない根拠のないものです。何より問題とすべきは、審判所がこれらの誤りをチェックして、その誤りを糺すのではなく、仲間意識か否かは知る由もないが、そのまま審判所の判断としているところに根深く重大な病巣があるやに思われるところです。

 

重ねて紹介しますが、国税不服審判所のトップである東亜由美国税不服審判所長は、「審判所においては、あくまでも行政のあり方を迅速に見直すという不服審査ですから、補充調査みたいなことは行いません。当時この証拠でこの課税をしてよかったかということを争点主義的に見ていく」と述べています。そうすると、そもそも原処分庁が示している程度の、しかも誤った証拠(単に恣意に基づく誤った調査額と申告額の差額の提示)をもって、本件のような更正処分を行うことの是非がより問われるべきであり、納税者は、平等原則から導かれる考え方として原処分庁が示している証拠と同程度の反証をすれば平等、公平概念に適うものと考えられるところです。(つづく)

文責(G.K

 

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