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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その9

2022/08/18

今回は、原処分庁が主張する「給与手当の過大計上」を再々論することから始めたいと思います。原処分庁は、平成27年3月期において「給与手当の過大計上額」だとする全くの恣意的な事実認定をして、「受注工作資金を捻出するための支給事実のない架空の賃金」を計上したと事実無根の作出した虚偽主張をしています。そもそも本件金員は、元請事業者の現場担当者と請求人の工事施工を担当する二次下請事業者としての関係法人HS社の現場作業員らのとの人的関係の円滑化の目的から特に依頼を受けて、当時の請求人の代表取締役であったA氏の個人的出捐による一時的な貸付金であり、その回収段階は、先ず、元請事業者の現場担当者から請求人の売上に上乗せして返済されます

 

請求人は、その回収額相当分をHS社からの請求分(売上)に上乗せして振り込み、HS社は、給料日に現場責任者である職長らに予め上乗せ支給されていた給与手当の中から当該回収額相当分を引き去りA氏に手渡していました。このように、請求人や関係法人の本来の売上及び給与手当には直接関係せず、法人としての損益にも影響しないことから、旧関与税理士であるI税理士はこの方式を採用していました。ただ、その回収額相当分が請求人と関係法人の売上に一旦、上乗せされて返済される方式であったところから、上乗せ分の源泉徴収はされてはいるものの、原処分庁(S国税局)は、かかる金員の貸付及び回収方式は好ましくないとして、査察第3部門総括主査YS氏及び主査AK氏らの指導によって、当該給与手当(A氏の個人的出捐による貸付金)分をA氏へのみなし給与としました。その上で、「架空給与の支給」、「裏金の支出」、「給与手当の過大計上額」などと偽りその他不正の行為を想起させる用語を駆使して事実を誇張、歪曲して強引にその悪質性を作出、捏造することによって、A氏に無用の誤解と恐怖感を与え、同氏個人の金員を平成271214日から平成28年1月20日までの期間に、HS社宛に強制的に振込入金、清算させ、本件給与手当の過大計上に関する問題の完全かつ不可逆的解決を図っていました。

 

ところが、原処分庁は、令和1年10月7日付で請求人に対する当初更正処分に先立って、既に完全かつ不可逆的な形で清算、解決されていたHS社の給与手当の過大計上問題を、請求人の計算として引き直し、再度、請求人の「架空給与の支給」、「裏金の支出」、「給与手当の過大計上額」として取り上げ、偽りその他不正の行為として作出、俎上に上げ、課税される根拠のない上記の「貸付金」と同額を請求人による「給与手当の過大計上額」(後に交際費に振替えている。)であると事実を偽り処分、課税したのです。すなわち、課税物件が存在しないのに課税されていたものです。こうした行為は、単純な誤りとしては見過ごすことのできない、確信的意思を伴う詐欺行為とも言える重大な違法行為であり、許されざる公権力の誤用、濫用であり、憲法に根拠を置く租税法律主義及び租税平等主義の理念とも相容れぬ、国家による犯罪行為とも評価される行為です。

 

請求人における本件給与手当の過大計上問題は、完全かつ不可逆的解決が図られていたことから実際には存在せず、原処分庁の事実捏造、虚偽事実の作出等の法令違反が明らかである当該違法行為に基づく処分(課税)は直ちに取り消されなければならないものです。請求人が書面等で当該違法行為の証拠等を示した後も、猶も「合理的な理由は認められ」ないとする原処分庁の主張は、無辜の国民、納税者を貶める極めて適切性を欠く悪質な発言、主張であるとともに、更正の請求の制度趣旨を没却し、かつ、その機会さえも奪わんとするものであり、原処分庁の主張に正当性の欠片すらも見出すことができません。

 

原処分庁は、詐欺にも等しいと思われる当該行為をしておきながら、それにつき、請求人が証拠を示して、国家権力が誤って行使された事実の指摘及びそれに係る金銭的損害の回復を求めて真摯な行動や主張を行っているのに対し、相変わらず、真剣に受け止めているとは思えない無責任な態度での主張や発言を繰り返しており、このことに代理人としてばかりではなく、租税法学者として怒りと驚きを禁じ得ません。この事態は、原処分庁自らの適法性ないしは請求人の違法性を主張する以前の問題であり、租税行政庁としては完全に誤った行為であることはもとより、租税法律主義及び租税公平主義を憲法規定に置く法治国家としてのなすべき行為ではありません。

 

続いて原処分庁は、青色申告承認の取消に係る請求人の平成27年3月期の減価償却費の償却超過額として、14,069,376円を当事業年度の所得金額に加算しています。原処分庁による令和1年10月7日付青色申告の承認の取消通知書によれば、当該取消処分の基因となった事実として、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度において、KK社及びHK社に対する外注費として総額221,932,161円を総勘定元帳の外注費科目に計上し、損金の額に算入しているところ、下記の事実から本件関係法人には事業実体が認められず、また、当該外注費は請求人の前々代表取締役であるA氏の指示によって、本件関係法人から架空の請求書を発行させることで、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していたと認められると、全く誤った恣意的判断をなし、これらのことが当該事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していることに該当するとして、当該事業年度以降の青色申告の承認を取り消すとしています。

 

そこで、青色申告の承認の取消処分についての理由付記の十分性について争われた大阪地裁昭和50年5月9日判決(行集26巻5号714頁)があるので、以下のかぎ括弧内の判決文を当該処分の検討をするに当たり参照することにします。大阪地裁は、「取消通知書に記載すべきことが要求される附記の内容および程度は、相手方において、当該取消処分がいかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用してなされたかを記載自体から了知しうるものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の原因となった具体的事実関係をも当然に知りうるような例外の場合を除いては、法の要求する附記としては不十分であるといわねばならない。また右附記の内容として右各号を掲げるほかに、若干の文言が記載されていたとしても、それが抽象的なものであって単に号数を掲げたのと異ならないとみられる場合にも、附記の内容が不十分であるといわねばならないことはいうまでもない。」と判示しています。

 

原処分庁は、上記の青色申告の承認の取消通知書における記載において、本件関係法人に事業実体がないことを8つの箇条書きで示していますが、それらは、もとより本件関係法人に事業実体がないことの具体的な事実等を直接証拠だてる内容の表示ではなく、聊か度の過ぎた課税目的のこじ付けと言わざるを得ない程度のものであり、単なる憶測の範疇です。実態として本件関係法人には事業実体があり、これまで一次下請事業者としての請求人は元請事業者からの発注を請けて、それらを二次下請としての関係法人以下の下流企業に分配して請け負わせることは当然であり、そうしてそれぞれの業務を管理監督して工事を完成に導いてきたからこそ、現在も請求人が一時下請企業として存在しているのです。

 

また、当該外注費につき、請求人の前々代表取締役であるA氏が指示して、本件関係法人から架空の請求書を発行させた事実は一切なく、その直接証拠を原処分庁が示しているものでもありません。全ては、原処分庁が課税(処分)をするがために作出した虚偽であり、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していた事実も、証拠はなく、全くのデッチあげであることから、誤りが正されるべきは当然です。現に、S税務署(原処分庁)ですらS国税局が査察調査に着手する直前までは、「初めてのことでもあり、今回は署長宛に始末書を出して終わりに」するとの趣旨の調査官の指導に止めていたものであり、青色申告の承認の取消はしないことについても確約をしていたものでもあるのです。

 

したがって、平成27年3月期の減価償却費の償却超過額として、所得金額に加算された14,069,376円は減算されなければならないものなのです。なお、本件については、原処分庁から何らの通知もないことから、請求人の請求を認容したものと考えていますが、一応、審判所からの確認のための判断を求めているものです。いずれにしても、国民の財産権を対価を伴うことなく無償で国家に移転させる(課税)手続が、「合理的な疑いを入れない程度の証明」をすることもなく、欺瞞に満ちて、そこここに非合理な疑いの念を生じさせるのみの間接事実しか示すことができない中にあって、斯くも簡単かつ強引に行われることに、国民の一人として強い疑念を抱くとともに強く抗議するものであり、本件青色申告の承認の取消処分は誤りであることを強く主張するものです。

 

納税者(関与税理士)が如何なる会計手法を採ろうとも、また、元請事業者による工事途中での設計の一部変更、再変更や追加工事等があったとしても、それらを含めて元請事業者である大手建設事業者は、実際の工事発注額(契約額)に基づいてのみ支払いを履行することから、決して当該工事発注額を超えて、あるいは不足して請求人の口座に振り込みをすることはあり得ません。したがって、最終的には、請求人への入金額と総勘定元帳とを突合して吟味、修正することによってのみ正確な売上額が把握可能となると考えられます。原処分庁は本件更正の請求を認め、権利救済機関たる審判所は、速やかに本件更正をすべき理由がない旨の通知処分を取消し、請求人の被った精神的、金銭的損害に報いるべきです。(つづく)

                                文責(G.K

 

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