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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その10

2022/09/03

前回までは口頭意見陳述における請求人の陳述概要について述べましたが、今回からは、当日、当該口頭意見陳述の場に出席している原処分庁の担当者に対して、当該陳述概要に関連して請求人がした質問事項について述べたいと思います。口頭意見陳述と言っても、陳述概要、質問事項の双方とも口頭のみで行うのではなく、事前に文書の形式で審判所を経由してその内容を原処分庁にも提出し、当日は当該文書を読み上げる形式で行います。その意味では、請求人が何を言い出し、また、何を聞かれるか分からないと言った緊張感は原処分庁側には全く感じられません。よって、質問事項に対する回答は、言わずもがなの事前に準備された官僚的答弁ないしは木で鼻をくくったような回答で、それを聞いて請求人の疑問の何分の一かが解消できるような内容ではありません。そのような事態をも考慮して、請求人は以下の8項目の口頭意見陳述に係る質問事項を提出していました。

 

先ず、前置きとして、「請求人は、令和3年12月2日及び令和4年3月4日付でS国税不服審判所に審査請求をしているが、その審理が進行する過程で疑問に思われ、本件更正をすべき理由がない旨の通知処分に直接関係すると思われる以下の当初更正処分(令和1年10月7日付)等の内容につき、更正処分ないしその判断に至った経緯、処分庁見解、税額算定の根拠及び証拠等につき質問し、当該更正をすべき理由がない旨の通知処分の審理の進行に資するために口頭意見陳述に係る質問事項を予め提出するものである。」として、以下の質問をしています。

 

①として、原処分庁の納税者への対応について、「本件更正をすべき理由がない旨の通知処分の大宗は、平成291122日付の原処分庁による前当初更正処分を取消し新たにした、禁じ手とも言える当初更正処分であるところ、両更正処分とも国税通則法74条の11第2項に基づく『調査の終了の際の手続』としての説明がなかった上に、行政手続法14条1項所定の理由の附記も十分ではない二重の違法があった。また、請求人に対して自平成25年3月期至平成27年3月期の法人税等及び復興税で追徴された額は約6,891万円であり、関係法人の納付済税額が約3,296万円であり、重複分としての約1,323万円は還付を受け、実質的にはその差額分は約2,271万円であり、この中には、青色申告承認取消によるもの、平成25年3月期の税額の外注費の計算誤りによる税額も含まれている。」

 

また、「消費税及び地方消費税については、自平成25年3月期至平成27年3月期の課税期間の追徴税額は、約6,012万円であり、関係法人の納付済税額が約2,347万円であり、差額は約3,664万円であるが、この中には、法の缺欠ないし法の不備によるもの、直接証拠や法律の根拠なく関係法人に係る新設法人の免税期間を否認したもの及び関係法人に係る消費税額を請求人の計算に引き直したものが含まれており、仮に、追徴するとしても実質的な税額は0円ないし限りなくそれに近い額になると思われる。ともあれ、消費税及び地方消費税につき、この点についてはここで争うものではないが、原処分庁主張の追徴額に対する延滞税、重加算税等の額約2,382万円が加算されており、曩の法人税等及び復興税等の国税並びに地方税に係る追徴された額に係る加算税等を加えると、総額は約22,400万円の追徴額となっている。実質的には殆ど非違のない額ないし課税物件がないところに対する当初更正処分及び本件更正をすべき理由がない旨の通知処分は、請求人にとってあまりにも酷な、ないしはあってはならない処分となっていることが明らかであるが、この点に関する原処分庁の見解を伺いたい。」としています。

 

②として、「既述の二重の違法性とも密接に関係すると思われるが、当該前当初更正処分及び当初更正処分には毎期、故意による誤った事実認定、誤った税額計算が至る所に存在したことから、請求人は原処分庁に対し令和3年3月17日当該当初更正処分におけるそれらの誤りにつき職権による減額更正を求めた。しかしながら、同年3月26日、原処分庁(札幌S税務署)の審理専門官部門の審理専門官であるMT氏から、『当該当初更正処分は、査察マターなので、当時の税務調査に係る一切の資料は当署には存在せず、その資料にアプローチすることさえもできないので、請求人の方から更正の請求をして頂けませんか』との趣旨の強い要請を受けた。原処分庁の要請に基づいて行った更正の請求にも拘らず、当該要請には悪意で仕掛けられたとしか思われない落とし穴が待ち構えていた。」

 

「その1つは、請求人が更正の請求書を提出して暫く経った時点で、原処分庁は通則法23条2項の該当性の観点及び国税の『徴収権の消滅時効』を根拠に、一部を除いて、請求人の更正の請求は通則法23条2項には該当せず、また、更正の請求を行うことができる法定申告期限を徒過しており、当該更正の請求には『理由がない』と主張してきた。原処分庁が請求人に無理強いして行わしめた当該更正の請求は、その提出時に審理専門官から言い含められた助言に従って主位的には同条第2項第1号としたが、念のため、予備的に同条第1項第1号にも該当する旨を書き加える内容とした。然るに原処分庁の主張は、不見識で自己矛盾も甚だしく、道義的観点はもとより、法的には禁反言(信義則)の原則に反し許容されるものではなく、この点の悪意を含む原処分庁の見解を求める。」としました。

 

③として、「その2つは、原処分庁は、所得の額に加算していた5,300万円を超える額の誤りを認め、これを取消し、それに対応する国税、地方税及び還付加算金を合わせて約2,400万円を還付した。しかし、一方で疑問に思われるのは、当該還付加算金の計算の始期が、別件で予納していた平成2812月2日ではなく、本件更正の請求をした令和4年5月7日とされていたことである。これについては、S税務署長宛に『還付加算金』に係る計算についての再計算に係る申立書を提出し、更正の請求の経緯、予納の時期、還付加算金に係る計算の始期等について申立人(請求人)の考え方及び善処方を考慮するよう要望するも、これについて定める法令は存在しないと、突っ撥ねられたが、これに対する見解、更には当初計算の取消、再計算する考えはないか、回答を求める。」とする質問です。

 

質問事項の④として、「原処分庁は、国税の徴収権の消滅時効の観点から、徴収権の消滅時効に関する規定を根拠に国税の法定申告期限から5年を経過しており、更正の請求はできないとしている。しかし、国税の徴収権の時効の反対解釈としての観点からではなく、『還付金等の消滅時効』について検討されなければならない。加えて、そもそも、原処分庁が達ての要請をなし、請求人をして行わしめた更正の請求について、この期に及んで、原処分庁自らが『理由がない』と主張すること自体、自己矛盾であり、甚だ不見識で見苦しくもあり、道義的観点はもとより、禁反言の原則に照らしても許されるものではない。原処分庁が、再び『税務署長その他責任のある立場にある者の正式の見解の表示ではない』と抗弁して責任を回避したところで、審判所はそれを認めるつもりではないはずである。」

 

「原処分庁は、国税の徴収権の消滅時効の規定から、平成25年3月期ないし平成27年3月期の各更正の請求書が提出された令和3年5月7日は、当該各申告書に係る国税の法定申告期限から5年を超えており、通則法23条1項1号に規定する更正の請求をすることができる期限を徒過していると主張する。しかし、通則法74条1項は『還付金等の消滅時効』につき次の規定を置いている。『還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する。』とし、同条2項では、『第72条2項及び3項(国税の徴収権の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、前項の場合について準用する。』と規定しており、同条第3項は、『国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する。』としている。」

 

そこで民法を参照すると、「民法166条1項の規定は、『債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。』とし、同項1号は、『債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。』また、同項第2号は、『権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。』と規定する。当然ながら、租税債権債務をめぐって租税行政庁と納税者間に争いのある期間中は、債権者(請求人)が権利を行使する(更正の請求をする)ことができないから、審判所の判断が示された時、すなわち令和3年3月13日(請求人受領日)が『債権者が権利を行使することができることを知った時』あるいは『権利を行使することができる時』となり、その時点から5年間ないしは10年間は、還付金の請求、すなわち更正の請求をすることができることになるが、原処分庁の見解を求める。」とする内容です。(つづく)

文責(G.K

 

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