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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その13

2022/10/12

前回に続いて、請求人から原処分庁担当者への質問事項の④は、本税務コラムその10でも触れた、原処分庁が国税の徴収権の消滅時効の観点から、徴収権の消滅時効に関する規定を根拠に国税の法定申告期限から5年を経過しており、更正の請求はできないと主張していることに対する質問です。それと言うのも、本件については、国税の徴収権の時効の観点のみではなく、請求人の質問の趣旨から、「還付金等の消滅時効」が主として検討されなければならず、また、原処分庁の都合で請求人をして為さしめられた更正の請求自体を、この期に及んで、「法定申告期限から5年を経過していることにより更正の請求はできない」と原処分庁の主張の核心を否定することは、納税者を侮辱するとともに甚だしい自己矛盾であり、道義的ないし道徳的観点はもとより禁反言の原則(信義則)に照らしても許されるべきものではなく、この点に関する原処分庁の認識、見解を問うものでした。

 

この質問事項に対する原処分庁の回答は、「令和4年4月11日付意見書の2(2)『原処分庁の意見』において述べたとおり、通則法第74条第1項は、還付金に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって、時効により消滅する旨規定しているところ、通則法第56条第1項括弧書きにより、還付金等とは、還付金又は国税に係る過誤納金のことをいう。そして、通則法第74条第2項は、同法第72条第2項及び第3項(国税の徴収権の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、同法第74条第1項の場合について準用する旨規定しているところ、通則法第72条第3項は、国税の徴収権の時効については、通則法第7章2節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する旨規定している。」と回答しました。

 

また、「‥‥更正の請求については通則法第23条において定められているところ、通則法第23条第1項は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。すなわち、通則法第72条ないし第74条は国税の徴収権の消滅時効及び還付金等に係る消滅時効に関する規定であるところ、更正の請求をすることができる期限については通則法第23条によって規定されているのであり、通則法第72条ないし第74条を根拠に、更正の請求をすることができる期間について時効が完成していないと解することはできない。」と回答してきました。

 

原処分庁の当該回答は、請求人(納税者)の質問に正面から答えることを避け、敢えて質問の趣旨を謬見したと思われる上に、規定の解釈・適用を誤っており、口頭意見陳述における原処分庁担当者に請求人が直接質問をするための機会を設けた制度趣旨を無視ないし逸脱するものです。先ず、「還付金等」に係る国に対する請求権の規定に関しては、通則法74条1項ないし3項を適用することになります。そうすると、還付金等の請求権の消滅時効は、民法を準用することになり、同法166条1項1号の規定により、「請求人が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」、同項2号で、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」となります。当然ながら、租税債権債務をめぐって租税行政庁と納税者(請求人)間に争いのある間、請求人は権利を行使し得ない状態にあることから、仮令、権利が発生していても、所謂「法律上の障害」により、未だ消滅時効が進行することはあり得ません(請求人が審判所の先行裁決書を受け取った日から消滅時効が進行を開始することになります)。したがって、審判所が先行裁決を示した時、すなわち令和3年3月13日(請求人受領日)が「請求人が権利を行使することができることを知った時」、「権利を行使することができる時」となり、その日から5年間(後者は10年間)は還付金の請求をすることができることになります。

 

次に更正の請求をすることができる期間についての請求人の質問(主張)ですが、原処分庁は、「通則法第72条ないし第74条を根拠に、更正の請求をすることができる期間について時効が完成していないと解することはできない」と回答していますが、上に見るとおり、請求人は、そのような主張や質問をしているのではありません。「更正の請求」に関する主張と「還付金等の請求権」とを截然と分けた上で、両者の時効についての主張をしているのです。「更正の請求」について、原則的には、法定申告期限から5年以内に限り、更正をすべき旨の請求をすることができます。しかしながら、既に述べているとおり、租税債権債務をめぐって租税行政庁と請求人間に争いのある間は、還付金等の請求権と同様、「法律上の障害」により消滅時効が進行することはあり得ません。

 

原処分庁は、「更正の請求」と「還付金等の請求権」両者の規定の都合のよい部分のみを摘んで、いわゆる「いいとこ取り」した上でそれらを混同して、還付金等の請求権の消滅時効に更正の請求をすることができる期間の時効に係る規定を援用し、通則法231項に定める5年の時効が完成していると主張(回答)しているに過ぎません。請求人の質問(主張)の真意は、上記に見るとおり、更正の請求をすることができる期間の時効と還付金等の請求権の消滅時効とを厳然と区別した上で、前者についての時効と後者についての消滅時効とのいずれも、請求人が当該権利を行使することができることを知った時から5年間ないし10年間行使しないときとなると主張しているのです。

 

また、原処分庁は、請求人(納税者)が通則法56条1項に基づき還付金等の請求権を行使するために原処分庁を訪れた際に、原処分庁の一方的都合で「更正の請求」の手続を強要しており、請求人が還付金を受け取るためには、当時、この手段に拠らざるを得ない情況に置かれていました。加えて、更正の請求には、「原則排他性」が認められていることから、「過誤納金がある場合には、わざわざ法律が更正の請求という手続を用意しており、その手続で救済を求めなければ(還付金を受け取らねば)ならず、それ以外の方法で救済を求める(受け取る)ことはできない」ことからこれに拠ることが唯一無二の還付金等の受取り手段でした。よって、仮令、原処分庁が強制して請求人に行わしめた「更正の請求」に手続的な誤りがあったとしても、請求人としては、原則的にこれに拠らざるを得ないことから、請求人に何らの遺漏もなく、原処分庁の主張には理由がないことになります。租税正義を維持、堅持すべき租税行政庁が、かような基本的理念をも失念ないし無視することは、将に異常な事態と言えます。

 

原処分庁が主張するように、更正の請求につき「通則法第23条第1項は、納税申告書を提出した者は法定申告期限から5年以内に限り、更正の請求をすることができる」とする考え方が広く受容されるとするのであれば、更正処分を受け再調査の請求を申立てた場合に、本件のように原処分庁の不作為でその決定までにおよそ2年を要した場合には、実質的には更正の請求をすることができる期限は5年ではなく、3年となってしまい、また、その後の審査請求において更に1年半掛かって誤った裁決が出された場合は、同様に5年どころか、1年半となってしまうことから納税者側に極めて不合理、不利益が生じる事態となります。このように租税債権債務をめぐって租税行政庁と納税者間に争いのある間は、重複しますが、請求人(納税者=申立人)が権利を行使し得ない状態にあることから、仮令、権利が発生していても「法律上の障害」により、未だ消滅時効が進行を開始することはあり得ず、消滅時効は完成しないことになります。

 

そこで、法令においては、通則法74条1項で「還付金等の消滅時効」につき次の規定を置いています。すなわち、「還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによつて、時効により消滅する」とし、同条2項では、「第72条2項及び3項(国税の徴収権の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、前項の場合について準用する」と規定しており、同条第3項は、「国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する」としています。民法を参照すると、民法166条1項は、「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する」とし、同項1号は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」また、同項第2号は、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」と規定しています。

 

そうすると、曩に述べたように、租税債権債務をめぐって租税行政庁と納税者間に争いのある期間中は、債権者(請求人)が権利を行使する(更正の請求をする)ことができないことから、審判所の判断が示された時、すなわち令和3年3月13日(請求人受領日)が「債権者が権利を行使することができることを知った時」あるいは「権利を行使することができる時」となり、その時点から5年間ないしは10年間は、還付金の請求、すなわち更正の請求をすることができることになります。したがって、還付金の請求(更正の請求)についての原処分庁の回答は、更正の請求及び国税の徴収権(還付金)の消滅時効に係る規定の解釈・適用を誤っていると考えられます。(つづく)

文責(G.K


 

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