税務コラム
続く請求人から原処分庁担当者らへの質問事項の⑤は、原処分庁が当初更正処分において偽計を用いて恣意的な売上計上漏れを認定(主張)している、将にその文脈上にある原処分及び令和4年2月25日処分に関してのものです。それらの実態は、原処分庁が作出した根拠のない極めて悪質性の高い言い分で、個々の取引とその金額とを特定することなく、単に原処分庁が一方的にピックアップした額と請求人の申告額との差額を売上計上漏れとする乱暴で強権的、かつ杜撰で曖昧な手法で算出したものです。その上、当該売上計上漏れ額の算定に当たっては、簿記会計の基本原理を全く無視した調査スキルの稚拙さ及び未熟さが際立つものです。そこで、原処分庁のそうした処理、処分の法令準拠性、正当性につき担当者ら(原処分庁)の見解を求めるものでした。
これに対し、原処分庁担当者らは以下のお決りの逃げ口上による回答をしました。すなわち、「請求人の上記質問は、令和元年10月7日付各処分及び令和3年3月10日付裁決に係るものであり、本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問であるため、回答しない。なお、原処分及び令和4年2月25日処分における原処分庁の判断及び適法性は、答弁書及び令和4年4月11日付答弁書のとおりである。」とするものですが、請求人は、ここで「関係のない質問」をしている訳ではありません。当該答弁書を含めた回答等で、これまで原処分庁が「回答しない」とするものは、原処分庁にとって都合が悪くこれ以上請求人(納税者)に触れて欲しくない、ないし真実を明らかにしたくない、若しくは回答しようにも、これまで虚偽主張を重ね「嘘に嘘を重ねてきた」結果、その言葉が見当たらない場合にその用語を用いているように思われるところです。
そして、それらの原処分庁の回答は、請求人がここまでに何度も触れ、指摘してきているとおり、いずれも最終的には、なすべき調査、検討、吟味等を行うことなく判断した審判所の実質的及び論理的誤謬を伴う先行裁決、いわゆる「お墨付き」を前面に出し、これを隠れ蓑に利用しているのです。再三、請求人が述べるように、「本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分」は、決して、当初更正処分から独立した存在ではありません。当該当初更正処分は、原処分庁(租税行政庁)による偽計を起因に数々の誇張及び虚構の要素が相乗的に重ね合わされて作出され、あるいは捏造され、それらの誤った事実ないし根拠に基づいて行われた処分であり、本審査請求事案はその違法な処分の文脈上にあるのです。当初更正処分及び本審査請求における原処分並びに令和4年2月25日付処分は、もとより一連の違法な処分等の括りの中の一事案であり、「本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分」とは相互に密接な関係を有することから、本件審査請求における適法性の判断に大いに関係するものなのです。
よって、そこに遡って検討、吟味しない限り、本件審査請求においての公正、公平で妥当な判断は不可能であり、また、その適法性も担保されることもありません。それを避けて「回答しない」と逃げることは、原処分庁自らがそれらの非を認め、誤謬を認めていることに他なりません。更に言うならば、それを回避して原処分庁自らの手で作成する答弁書ないし回答書類において、どんな主張をしようと、あるいは何を記載しようと、決してそれらが客観性を持つことはなく、適法性が認容されるものでもなく、原処分庁がその種の回答をしてその正当性を主張すればする程、却って疑問符が付くだけのことです。
特に、平成25年3月期、平成26年3月期、平成27年3月期の法人税及び同地方法人税に係る本件通知処分における売上計上漏れについては、これまでにも述べてきているとおり、旧関与税理士であるI氏が変則的期中現金主義を採用しており、売掛金の入金及び相殺により総勘定元帳の売掛金残高が不足しそうになると、随時、期中で金額を修正して増額計上(受注工事の一部設計変更等に伴って金額が変更になったものの修正計上、期ズレの前倒し計上、誤って相殺を重複計上していたものの是正等)を行うことで売掛金残高を整合させていました。請求人は、これらの事実について、証拠資料を示した上で、このような会計処理が常態化していたことを原処分庁担当者らに詳細に説明し、その論理的、会計的及び複式簿記における貸借一致の原理からの帰結として、売掛金が存在する以上、それに対応する額の相手勘定としての売上も必然的に存在していなければならず、売上計上漏れは絶対にあり得ないことを説明してきました。
すなわち、売掛金のみを増額計上し、それに対応する売上を増額計上しなければ、借方と貸方とが不均衡、バランスしなくなることから、売掛金の増額計上分の中に売上計上漏れ分とされている額が含まれていなければ、貸借が一致しないというのが初歩的簿記原理なのです。この論理ないしメカニズムについて原処分庁担当者らに繰り返し説明してきましたが、この簿記原理を理解しようとしませんでした。また、一般的な仕訳ではありませんが、借方に外注費が計上され、貸方に売上が計上されている意味、外注費の重複計上分の相殺の意味についても理解することはありませんでした(税務コラムその8参照)。
これらのことから、請求人に偽りその他不正の行為としての「売上計上漏れ」の事実はなく、一部の期ズレこそは認識されるものの、売上自体を除外して税額を不当に減少させようとしたこと、ないしはしていたことはありません。仮に、この手法に問題があった、ないしはあるのであれば、原処分庁は請求人に対する過去の税務調査の際にその事実を把握しており、当然に指摘していなければなりません。原処分庁の調査官は、調査後にこれに対する何らの是正等の勧告、行政指導等もしておらず(国税調査官は、適正な申告が行われているかどうかの税務調査だけではなく、申告指導などもその役割とされる)、非違のないものとしてこれを容認していたことを意味しています(平成25年3月8日付「実調修正」申告書参照)。また、仮に売上除外としての売上計上漏れの存在が疑われるのであれば、請求人の元請事業者に対する請求書及びその入金額とを突合すればそこに乖離が生じている筈であり、また、簿外取引等があったとすればそれに対応する現金、預金、有価証券その他の現金等価物等が秘匿されている筈ですが、原処分庁が別件の関連で、二度に渡る入念な家宅捜索を行っているにも拘らずそれらは発見されていません。
上記の原処分庁(国税局査察部)による、請求人に対する強制的な家宅捜索にも拘らず、上記の現金等価物等は何一つとして発見されてはいない情況にあってすら、原処分庁は直接証拠を提示することなく刑事事件として告発し、虚偽事実を更に誇張して悪質性を強調しているところに、租税行政庁としての面子から引くに引けない本件の特質があったように思われます。そもそも、原処分庁が恣意的にピックアップして調査額だとし、それと請求人の申告額との差額を売上計上漏れと認定する極めて一方的で乱暴、強権的しかも雑駁、曖昧な手法(証拠)の何処に客観性が認められるというのでしょうか?原処分庁は、自らの調査方法、調査技術の未熟さ及び判断の誤り、簿記会計に関する知識不足、更には偽計を弄して「売上計上漏れ」としていたことを素直に認めて請求人ら(法人、個人)に謝罪すべきと思われます。
続く請求人からの原処分庁担当者らに対する質問事項⑥は、上記の質問事項⑤と同様の構図で、原処分庁は外注費の過大計上(二重計上、相殺)があったと主張しています。原処分庁が外注費の過大計上、すなわち外注費の二重計上及び外注費の相殺の二重計上(重複計上分)であると、事実を誤認していると思われるものの仕訳は、借方に外注費、そして貸方には売上としてあるところから請求人の損益には影響しません。これについては、税務コラムその8で触れており、そこに詳述してもいますが、取引自体を否認するのであれば、借方の外注費だけを減算するのは、簿記原理である貸借均衡の法則から誤りです。借方と貸方の双方の仕訳内容を取消さなければなりません(そうでなければ、貸借が均衡しない)。原処分庁は、借方の外注費のみを過大計上(二重計上、相殺)として否認して取引がなかったものとし、それでいて、貸方の売上はそのまま所得の額に算入していることから、貸借が一致することはありません。
また、外注費の過大計上額としての二重計上及び外注費の過大計上としての外注費と売上(売掛金)との相殺分については、これまで幾度も説明しているとおり売掛金を増額計上している中に含まれており、これについても損益に影響はなく、敢えてこれを二重計上というのであれば、売上も二重計上していることになり、所得金額に外注費の額のみを過大計上として加算するのは誤りであり、売上もその分を加算しなければなりません。したがって、売上を加算しないのであれば、外注費として加算した額は減算しなければならない(貸借が均衡しない)ことになることから、この簿記原理についての原処分庁の認識ないしは反論としての見解を求めるものでした。(つづく)
文責(G.K)