税務コラム
(前回の続き)
請求人からの前回の質問事項に対しても原処分庁(担当者ら)は、その回答として、「請求人の上記質問は、令和元年10月7日付各処分及び令和3年3月10日付裁決に係るものであり、本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問であるため、回答しない。なお、原処分及び令和4年2月25日処分における原処分庁の判断及び適法性は、答弁書及び令和4年4月11日付答弁書のとおりである。」と木で鼻を括ったような誠意の皆目感じられない応答をし、ここでも自らの誤謬に満ちた判断(回答)を正当化すべく、原処分庁の誤りだらけの事実認定ないし判断を、そのまま吟味、検討することなく審判所の認定事実として(先行)裁決し、原処分庁を擁護した審判所の違法な「お墨付き」を盾に納税者に向き合うことはありませんでした。
そもそも、本件「外注費の過大計上」の会計データについては、別件の刑事事案の関係で原始徴憑類を含む書類等の全てが、国税局及び検察庁に押収されていたことから、その内容について請求人(代理人)が知る手掛かりは当初全くなく、原処分庁に対し繰り返しその計算内容、計算過程等について問い合わせていました。しかしながら、既に述べてきたとおり、原処分庁からの質問事項⑤及び⑥に関する回答は二転三転と変遷し、その実態は杳として知ることが叶いませんでした。結局、原処分庁が外注費の過大計上を含む売上計上漏れと主張しているものの実態が判明したのは、請求人からの検察庁に対する押収帳簿資料類の開示請求を受けて開示された会計資料を吟味、咀嚼してからでした。すなわち原処分庁は、借方の費用の発生及びその計上の適否の観点からのみ着目して取引がなかったものとして借方の外注費を否認し、その一方で、貸方の収益の発生(売掛金)はそのままに(貸借均衡の簿記原理を無視)して所得の額に算入していることが判明したのです。
したがって、原処分庁の外注費の過大計上を含む売上計上漏れの主張は、その基礎となる重要な事実の認定及び認定額の算出に重大な誤りのあるものでした。これでは、原処分庁が主張する「調査額と申告額」に差異が生ずるのは当然であり、姑息にも原処分庁は、当該差異を「売上計上漏れ」としていたのです。また、原処分庁は、請求人と元請事業者との間で頻繁に生起する当初契約後の一部設計変更、手直し等に係る請求書、領収書、売掛金回収表等の伝票類を重複計算して(本来、廃棄すべきものまで含めて、恣意的にピックアップしており、二重、三重に加算したものを含んでいると思われる)、それらを積み上げ計算した額と請求人の申告額との差額をも売上計上漏れとしており、これらと実額との間には差異、乖離があるのは当然の結果です。曩にも述べるとおり、これらの事実が判明したのは、検察庁に証拠書類等の開示請求をして漸く得られた証拠等を検証する過程においてであり、かなり後になってからでした。つまり、原処分庁は、外注費の過大計上を含む売上計上漏れについての具体的な計算方法が曖昧な上にその算出額は虚偽であったが故に、事前、事後を通して請求人(代理人)にその真相を伝えることができなかったものと推察されるところです。
なお、外注費の過大計上(二重計上、相殺を含む)の具体例として、平成25年3月期の外注費の過大計上額10,000,000円については、借方 外注費10,000,000/貸方 売上10,000,000と仕訳されていることから損益には関係せず、当該取引自体をなかったものとするのであれば、借方の外注費だけを否認(減算)し、貸方の売上をそのまま残して加算するのは、貸借均衡の簿記原理に反しており、貸方も減算しなければなりません。また、平成26年3月期の外注費の過大計上額113,400円の二重計上及び平成27年3月期の外注費の過大計上としている外注費と売上(売掛金)との相殺分4,131,327円は、札幌国税局のHK査察官もその供述で認めているとおり、増額計上している分の中に当然に売上も含まれていることから、損益には影響せず、これを敢えて二重計上とするなら、売上も二重計上していることになります。つまり、平成27年3月期の所得金額の計算に当たって、外注費の額を過大計上(二重計上)分として減算するのであれば、売上の額もその分過大計上(二重計上)として減算しなければ帳尻(計算)が合わず、したがって、上記の113,400円及び4,131,327円の加算額は減算しなければならないことになります。
ところで、納税義務が成立する要件としての「課税要件の充足」に係る第一義的立証責任は、本来、原処分庁にあり、況して、不利益処分としての更正処分を行うに当たっては本件に見られるように、原処分庁が故意ないし過失を含む誤った事実認定をする可能性も想定されることから、必ず税務調査の結果は請求人に説明されなければなりません。しかしながら、原処分庁は、通則法74条の11第2項の規定を無視するどころか、「見え透いた嘘」を繰り返し、あろうことか、逆に請求人(代理人)が嘘をついているかの如くの牽強付会な主張を繰り返しているのです。本件は、そもそも請求人が「偽りその他不正の行為」をしたり当該不正の行為を依頼したものではなく、関与税理士の事実誤認による期中の売上額の加減算調整及び繰り延べ分[1]であり、重加算税の対象外であるところ、原処分庁は重要部分の事実を歪曲捏造し、悪質性を誇張、作出して課税する意図(故意)をもって請求人が偽りその他不正の行為による「売上計上漏れ」を行ったとの「誤った認定」をして重加算税の対象としています。
更には、原処分庁は、請求人(代理人)に対して、本件当初更正処分を行うに当たって、国税通則法74条の11第2項所定の「調査の終了の際の手続」を行わなかったにも拘らず、平成29年11月10日札幌S税務署庁舎内において、代理人に、詳細な調査結果の内容の説明を行った上で、「修正申告等について」と題する書面を交付したとのありもしない「嘘」を主張し、後に請求人が当該書面の写しの交付請求をしたところ、原処分庁は直ぐにそれと分かる改竄した書面を請求人に交付するなど明白な法令違反を犯しています。また、当日、実際に説明をしたと原処分庁が主張するS税務署法人課税第7部門統括官TY氏及びN税務署法人課税第8部門の統括官のN氏らも、「別件の刑事裁判が進行中なので調査の内容等については一切答えられません」として代理人に説明を拒んでいたのです。
また、より明確な事実として、原処分庁が請求人に説明をしたと主張する当日の19日後の平成29年11月29日16時50分、本件当初更正処分等の実質上の指揮を執っていた札幌国税局調査査察部査察第3部門の主査であるST氏から代理人に電話で、「これまでの税務調査の内容、結果等及び査察調査に至った経緯等については、(請求人に)説明しないことになりました」と告げられており、原処分庁の嘘は明白です。このように、原処分庁の本件更正処分は、手続面の誤りも然ることながら、事実認定においても、それに至る重要な基礎となる部分(事実)は虚偽で固められており、課税標準となるべき真実の金額すらも確定させていません。何より公正、公平な課税を実現すべき租税行政庁が、組織を守るのに汲々とし、虚偽に基づく事実認定をし、納税者に「嘘」を言って陥れたりすることは、保護すべき対象を誤って認識していることに他ならず、代理人は、一納税者として、あるいは税法学者としても背筋が寒くなるのを覚えます。税務行政庁職員(公務員)が守るべきは自らが属する組織ではなく、納税者(国民)なのです。
当初更正処分から続く一連の処分の対象であった「外注費の過大計上」を含む「売上計上漏れ」は、既に述べてきたように、原処分庁(租税行政庁)が課税目的そして一罰百戒の誤った認識による懲罰課税が主目的で、それ自体が捏造されたものであり、当該売上計上漏れとする正確な額すらも不明な、原処分庁が伝票類を机上で恣意的に積み上げ計算した額と請求人の申告額との差額に過ぎない根拠のないものなのです。また、これについては、先行裁決の審理過程において、請求人(代理人)は審判所に対して、「原処分庁がこれらの重要な基礎となる部分を虚偽で固めている事実等」の証拠等を付して提出、累度に渡り指摘、主張しているところです。何にも況して問題なのは、納税者(代理人)が、十分吟味して判断、裁決するよう幾度にも渡って提出したこれらの証拠、意見書等の書類を審判所は一瞥もすることなく、それらの誤りの一部なりとも糺すのでもなく、仲間意識か否かは知る術もありませんが、そのまま審判所の判断としているところに、独立した組織を標榜しつつも当該租税行政組織自体に根深い重大な病巣が潜んでいるやに思われるところです。(つづく)
文責(G.K)
[1] I税理士は、国税局職員の聞き取りに対して、「売掛金の前倒しは翌期の売上が今期に計上され、翌期はその分売上が減るので長い目で見れば同じだと思っていました。」と応答しています。