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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その16

2022/11/26

続いて、請求人から原処分庁担当者らへの質問事項⑦は、原処分庁が更正処分の対象とした平成27年3月期における「給与手当の過大計上額」についてです。本事案については、既に札幌国税局査察第3部門総括主査YM氏及び主査AK氏らの指導によって、原処分庁と請求人との間で完全かつ不可逆的解決が図られていたものであり、請求人についての課税要件が充足していないにも拘わらず課税されたものであり、この点の原処分庁の対応、見解を尋ねるものであり、請求人は原処分庁担当者らに次のような質問をしています。すなわち、「原処分庁は、平成27年3月期において請求人の『給与手当の過大計上額』として、『受注工作資金を捻出するための支給事実のない架空の賃金を計上した』と誤った認定をしている。しかしながら、これについては、札幌国税局査察第3部門総括主査YM氏及び主査AK氏らの指導によって、請求人の当時の代表取締役であったA氏に対する、関係法人とされたHS社からのみなし賞与支給の返還分とし、HS社に強制的に振込入金、清算させることで、既に不可逆的解決が図られていた。」

 

「然るに、原処分庁は、令和1年10月7日付の請求人に対する当初更正処分に先立って、当該関係法人の給与手当分を請求人の計算として、同額を請求人からの『給与手当の過大計上額』(後に交際費に振り替えている。)であるとして引き直し、課税している。つまり、課税要件が満たされていないのに、納税者を欺いて事実上の二重(二度)課税したものであり、こうした行為は、単純に「誤り」ないし「間違い」としては見過ごすことのできない国家権力による重大な違法行為であり、しかも確信的意思の下に行われた許されざる公権力の誤用、濫用であり、憲法に根拠を置く租税法律主義及び租税公平主義の理念とも相容れぬ犯罪行為とも評価されるが、これらに対する原処分庁の認識、見解を問う。」とするものです。

 

上記の質問事項に対しても、原処分庁の回答は、「請求人の上記質問は、令和元年10月7日付各処分及び令和3年3月10日付裁決に係るものであり、本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問であるため、回答しない。なお、原処分及び令和4年2月25日処分における原処分庁の判断及び適法性は、答弁書及び令和4年4月11日付答弁書のとおりである。」と、一つ覚えの如く、本来、対等な立場であるべき租税行政庁と納税者間の関係を誤解しているとしか思えない、納税者を見下したような態度で、全くにべもない回答をして、ここでも原処分庁の虚偽判断を馴れ合い(先行)裁決した審判所の事実を誤った、違法な「お墨付き」を全面にかざした誠意の無い対応で、納税者に向き合うことはありませんでした。

 

そもそも当該金員は、元請事業者の現場担当者と一次下請事業者である請求人の実際面での工事施工を担当する二次下請事業者で、原処分庁が勝手に「関係法人」と呼称しているHS社の現場作業員らとの人的関係の円滑化を目的として、特に依頼を受けて、請求人の当時の代表取締役であったA氏が個人的に出捐した一時的な貸付金なのです。個人が出捐した貸付金であるとは言え、その返済段階では当該貸付額相当分が請求人(関係法人)の売上に一旦、上乗せされて返済される方式でした。そこで、その回収についてはHS社の職長の給与支給に当たり当該給与に一旦、上乗せ支給し、上乗せ分の源泉徴収をした後、当該上乗せ分を天引きしてA氏に手渡されていました。かかる金員の貸付及び回収方式は好ましくないとして、原処分庁(札幌国税局査察部)は、査察第3部門総括主査YM氏及び主査AK氏らの指導によって、当該給与手当上乗せ分をA氏に対するみなし賞与として同氏からHS社に返還するよう指導しました。

 

そうした上で、当該出捐を「架空給与の支給」、「裏金の支出」、「給与手当の過大計上額」であると、偽りその他不正の行為(脱税)を想起させる用語を駆使して脅して、事実を歪曲誇張し、強引にその悪質性を作出、捏造することによって、然程は税務及び会計に関する知識のないA氏に無用の誤解と恐怖感を与え、同氏個人の金員を平成271214日から平成28年1月20日までの期間に、HS社宛に強制的に振込入金、清算させ、本件給与手当の過大計上に関する問題の完全かつ不可逆的解決を図っていたのです(実質一度目の課税処分)。ところが、原処分庁は、令和1年10月7日付でHS社の取引を請求人の計算と見做し、請求人の計算に引き直して違法な当初更正処分を行い、既に決着していて課税要件が不充足であるにも拘らず「給与手当の過大計上」問題を俎上に上げ、事実関係を偽り再び課税処分を行ったものです(実質二度目の課税処分)。

 

なお、かかる金員の貸付及び回収方式については、請求人や関係法人の本来の売上及び給与手当には直接関係することなく、法人としての損益にも影響しないとの判断から、旧関与税理士であるI氏の亡父の代以来この方式を採用しており、これに関し原処分庁も過去の税務調査においても認容していました(平成25年3月8日付実調修正)。すなわち、原処分庁は、誤って課税したのではなく、課税要件を満たしていないことを認識していながら、確信的故意をもって課税したのです。と言うのも、HS社の取引を請求人の計算と見做し、請求人の計算に引き直すに当たって原処分庁は、HS社の決算期のうちの平成272月及び3月の売上(益金部分)のみを請求人の売上とし、それに係る費用等(損金部分)はそのままHS社に残したまま、計算を引き直していることから、原処分庁の強い確信的故意が存在していることが判然と見て取れるのです。

 

租税法の領域において、上記のようにB社の取引(行為)や計算がA社が行ったものとしてその計算を引き直すことを、「同族会社の行為又は計算の否認(規定)」と言い、法人税法では132条1項に、「同族会社の行為又は計算でそれを容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算を否認し、税務署長がその法人の課税標準若しくは欠損金額又は法人税額を計算することができる」とする規定を置いています。しかしながら、HS社の行為、計算を否認するのであれば、少なくとも、一会計年度における期間損益を対象とすべきであり、利益が出ている1~2ヶ月だけの、しかもそのうちの利益(益金部分)のみを請求人の売上とし、それに係る費用等(損金部分)はそのままHS社に残して計算を引き直した、いわゆる、「いいとこ取り」のつまみ否認、つまみ計算の引き直しを行って請求人の計算としており、当該規程の解釈のありかた、態様としてはあり得ないものです。

 

このことからか、当初更正処分等の実質上の指揮を執っていた札幌国税局調査査察部査察第3部門の主査であるST氏は、代理人に、「本件ではHS社に同族会社の行為否認規定は適用しません」との明言をもって説明をしていました。つまり、HS社は請求人の同族会社には該当しないと当局は判断していたことが窺えます。しかしながら、そうすると、HS社の取引を請求人の計算と見做して請求人の計算に引き直した根拠規定が存在しないことになり、原処分庁の行為は「租税法律主義」に反することになります。すなわち、憲法30条は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負」い、法律の定めのないものについては納税の義務はありません。また、84条は、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」としています。

 

とりわけ、請求人における本件給与手当の過大計上問題は、完全かつ不可逆的解決が図られていたことから、実際には非違は存在せず、原処分庁の事実捏造、虚偽事実の作出等の法令違反の程度は重大で、明らかな当該違法行為に基づく処分(課税)は直ちに取り消されなければならないものです(手続的保障原則=租税の賦課・徴収は公権力の行使であり、それらは適正な手続で行われなければなりません)。そして、請求人が書面等で原処分庁による当該違法行為の証拠等を示した後も、原処分庁は、猶も「合理的な理由は認められ」ないとする主張を続け、無辜の国民、納税者を陥れる極めて適切性を欠く悪質な発言、主張をするばかりか、法令を無視し、更正の請求の制度趣旨を没却し、かつ、その機会さえも奪わんとしているのであり、原処分庁の主張には租税正義の欠片すらも見出すことができません。

 

本件に関して原処分庁は、「本件各更正処分等の適法性については、本件先行裁決のとおりである」と主張する一方、平成27年3月期における「給与手当の過大計上額」だとする全くの恣意的、一方的な事実認定を行い、「受注工作資金を捻出するための支給事実のない架空の賃金」を計上したとの事実無根の虚偽主張をしているのです。この事態は、原処分庁自らの適法性ないしは請求人の違法性を主張する以前の問題であり、租税行政庁としての完全に誤った行為であることはもとより、租税法律主義及び租税公平主義を憲法規定に置く法治国家としての基本的枠組みを直接脅かすものです。この情況で、「納税者の正当な権利利益の救済を図る」とする国税不服審判所の役割ないし使命が果たされるべく公正、公平な裁決が行われるかとても気掛かりなところです。(つづく)

 

なお、本日、令和4年1126日(同年1121日付)、札幌国税不服審判所より「審査請求をいずれも棄却する。」との裁決書の写しが代理人に送達されましたので、現在のコラムのテーマ掲載予定日を前倒しして掲載したいと思います。

文責(G.K

 

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