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更正をすべきと認められない旨の通知処分に対する審査請求について その17

2022/11/30

前回述べたように、事実を誤認しており、違法と思われる裁決書が令和4年1126日午後に札幌国税不服審判所から届きましたので、現在のテーマでの掲載予定日を前倒しして掲載したいと思います。

 

質問事項⑧は、請求人からの原処分庁担当者らへの最後の質問となります。請求人がこれまでにも繰り返し主張しているとおり、原処分庁は、平成27年9月14日税務調査の終盤に、「初めてのことでもあり、今回は青色申告の承認を取り消しませんが、その代わりに署長宛の誓約書を書いてください、それで終わりにします」とする趣旨の指導及び指示をし、請求人はこれを受け、S税務署長宛の誓約書を提出しています。ところが、その2ヶ月後の平成271125日、札幌国税局調査査察部の調査後、処分理由附記も不十分なまま、青色申告の承認を取り消し、その後、当該取消処分を取り消し、更に原処分庁は平成2910月6日付で平成25年3月期以後の青色申告承認の取消処分を行っており、明白な理由附記の不備及び信義則違反を犯しています。

 

なお、本件については、請求人がこれまでも繰り返し以下の内容の主張してきたのに対し、原処分庁は何らの反論、主張もしていないことから、原処分庁は請求人の主張を認容しているものと思われるところですが、念のため審判所の判断を求めているものです。すなわち、「原処分庁は、令和1年10月7日付で青色申告の承認取消処分により、請求人の平成27年3月期の減価償却費の償却超過額として、14,069,376円を当事業年度の所得金額に加算した。当該取消処分の基因となった事実として、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度において、株式会社KK及び株式会社HG(以下「本件関係法人」という。)に対する外注費として総額221,932,161円を総勘定元帳の外注費科目に計上し、損金の額に算入しているとし、本件関係法人には事業実体が認められず、当該外注費は請求人の前々代表取締役であるA氏の指示によって、本件関係法人から架空の請求書を発行させることで、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していたものと認められるとし、これらのことが当該事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していることに該当するとして、当該事業年度以降の青色申告の承認を取り消すとしている」。

 

「青色申告の承認の取消処分については、その理由付記の十分性について判断された大阪地裁昭和50年5月9日判決(行集26巻5号714頁)によれば、『取消通知書に記載すべきことが要求される附記の内容および程度は、相手方において、当該取消処分がいかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用してなされたかを記載自体から了知しうるものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の原因となった具体的事実関係をも当然に知りうるような例外の場合を除いては、法の要求する附記としては不十分であるといわねばならない。また右附記の内容として右各号を掲げるほかに、若干の文言が記載されていたとしても、それが抽象的なものであって単に号数を掲げたのと異ならないとみられる場合にも、附記の内容が不十分であるといわねばならないことはいうまでもない。』と判示されている。」

 

「原処分庁は、上記の青色申告の承認の取消通知書における記載において、本件関係法人に事業実体がないことを8つの箇条書きで示しているが、それらは、もとより本件関係法人に事業実体がないことの具体的な事実等を直接証拠だてる表示ではなく、聊か度の過ぎた課税目的のこじ付けと言わざるを得ない程度のものである。実態として本件関係法人に事業実体があったからこそ、これまで請求人は元請事業者からの発注を請けて、それらを二次下請としての関係法人以下の下流企業に分配して請け負わせ、それぞれの業務を管理監督して工事を完工させてきたからこそ、現在も請求人が一次下請企業として存在しているのである。また、当該外注費につき、請求人の前々代表取締役であるA氏が指示して、本件関係法人から架空の請求書を発行させた事実は一切なく、その直接証拠を原処分庁が示してはいない。」

 

「原処分庁が課税をするがために作出した虚偽であり、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していた事実も、もちろんなく、全くのデッチあげであることから、誤りが正されるべきは当然である。現に、札幌S税務署(原処分庁)ですら札幌国税局が査察調査に着手する直前までは、『初めてのことでもあり、今回は署長宛に始末書を出して終わりにします。』との趣旨の調査官の指導に止めていたものであり、青色申告の承認の取消はしないことを確約していたものでもあるが原処分庁としての見解を伺いたい。」とする質問内容です。なお、本件については、既に述べたとおり、原処分庁から何らの通知や連絡もないことから、請求人の請求を認容したものと考えていますが、一応、審判所からの確認のための判断を求めるものであるとしています。

 

請求人からの上記の質問事項に対しての原処分庁担当者らからの回答は、「請求人の上記質問は、令和元年10月7日付各処分及び令和3年3月10日付裁決に係るものであり、本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問であるため、回答しない。なお、原処分及び令和4年2月25日処分における原処分庁の判断及び適法性は、答弁書及び令和4年4月11日付答弁書のとおりである。」と回答し、口頭意見陳述における審査請求人からの原処分担当者らに対する質問という法制度に裏付けされた「国税に関する不服申立制度」の趣旨の根幹を最後まで侮辱、蔑ろにして没却せんとする原処分庁は最後まで審判所の違法な「お墨付き」を振りかざすばかりで、納税者に向き合い、誠意を示すことはありませんでした。

 

原処分庁は、「本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問」だとして論点をすり替え、若しくは論点をずらして、事実に向き合うことなく、租税行政庁としての責任を回避して、結局、質問事項の最後に及んでも逃げ回る姿勢を貫くばかりでした。請求人が繰り返し述べるように、本件審査請求は、令和1年10月7日付当初更正処分及び令和3年3月10日付の先行裁決と深い関係性を有する一連の継続している事案です。本件青色申告承認の取消処分について、原処分庁は、平成27年9月14日の税務調査の終盤に、「初めてのことでもあり、今回は青色を取り消しませんが、署長宛の誓約書を書いてください、それで終わりにします。」とする趣旨の指示をし、請求人はこれを受け、S税務署長宛の誓約書を提出しているのです。

 

ところが、その2ヶ月後の平成271125日札幌国税局調査査察部の調査後に、突然、調査内容についての説明もないまま、また、処分理由の附記も不十分なまま、原処分庁は平成2910月6日付で平成25年3月期以後の青色申告承認の取消処分を行っており、本件は明らかに取消理由附記の不備及び信義則に違反していると思われます。因みに、租税法上の信義則違反について最高裁[1]は、「税務官庁が納税者に対し、①信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者が②その表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちに③その表示に反する課税処分が行われ、そのために④納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか 、また、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて⑤納税者の責めに帰すべき事由がないかどうか」という点の考慮を不可欠の要素として挙げています。

 

そこで本件の処分理由附記の不備及び信義則の事実を上記に照らすと、いずれも納税者側に落ち度はないと考えられます。なお、本件については、請求人がこれまでも繰り返し主張してきたのに対し、原処分庁は何らの反論、主張もしていないことから、原処分庁は請求人の主張を認容しているものと思われますが、念のため、審判所の判断を求めているものです。原処分庁が、手続面でこれほどの誤りを犯し、法令等を無視し、国民の財産権を対価を伴うことなく無償で国家に移転させる(課税)手続を「合理的な疑いを入れない程度の証明」をすることもなく、欺瞞に満ち、そこここに非合理で疑いの念を生じさせるのみの間接事実しか示すことができない中にあって、斯くも容易にかつ強引に移転させていることに、国民の一人として強い不信感、嫌悪感を抱くとともに強く抗議するものです。請求人は、本件青色申告の承認の取消処分が手続、法令等の両面において誤りであることを強く主張し、事実及び禁反言の原則(信義則)に違反する青色申告承認の取消処分に伴って減価償却費の償却超過額と認定、課税された平成27年度3月期の所得金額の取消しを審判所に求めています。

 

このテーマの結びに当たって、原処分庁が主張しているような「本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問」だとして論点をすり替え、若しくは論点をずらして租税行政庁としての責任回避を図るのではなく、事実に真摯に向き合い、課税要件が充足していれば課税し、その誤りがあればそれを糺していくことこそ、わが国の真の申告納税制度を確立していくことに繋がるものと考えられるところです。(このテーマ終り)

文責(G.K



[1] 最判昭和621030日集民15293

 

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