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いわゆる“理由なし通知処分”に係る裁決の批判的検証 (その2)

2022/12/21

(前回の続き)

この度のいわゆる理由なし通知処分(以下、「本件通知処分」という。)に係る審査請求の直接の審理対象ではありませんが、ここで、本件通知処分に先立つ法人税法等、消費税法等違反事件(以下、「本件租税法違反被告事件」という。)及び先行審査請求ないしその裁決、更にはその基となった更正処分及びその不服申立としての再調査の請求についての却下する旨の再調査決定(以下、「一連の事案」という。)に遡って概観してみたいと思います。と言うのも、一連の事案はいずれも札幌南税務署の調査を引き継いだ札幌国税局による査察調査を受けたものであり、それらの原点は同根であるからです。これらのうち、代理人が納税者(被疑者=被告人=再調査請求人、審査請求人)の取引金融機関の支店長から依頼を受け納税者と出会い、納税者(法人)の代理人に就任することとなった経緯及び札幌国税局に赴いた経緯並びにそこで受けた当該査察第三部門の職員らの説明等の記憶に遡って述べてみたいと思います。

 

筆者が代理人に就任した時点では、事案が租税逋脱事件に発展するような重大なものとは考えていませんでしたが、納税者が当局から売上計上漏れ等を指摘されているとのことであったので、取り敢えず事実関係を確認、把握してその情報を納税者及び依頼を受けた金融機関に伝えようと思っていました。当該売上計上漏れについては、原始徴憑類、帳簿等の会計データの殆どが国税局に押収されており、代理人としてはそれらの資料、データ等にアプローチすることが叶わず、これらについては国税局に開示を求めるつもりでもありました。代理人は、当時、大学で租税法及び会社法を講じる一方、北海道税理士会の租税法の解釈・適用に関する諮問機関の長を委任されていたことから、代理人に対して事実関係等の調査依頼(後に当時の関与税理士に代わって顧問税理士に就任)があったと思われます。

 

会計データ等が押収されていて不存在であったこともさることながら、代理人としてはその時点の事案の全体像についても全く不知であったこともあり、納税者の言質を得て代理人は直ちに原処分庁が「売上計上漏れ」と判断した事実、根拠等について、札幌国税局に説明を求めるため、当時当該事案を担当していた実質上の責任者である札幌国税局調査査察部査察第三部門の主査ST氏を訪ねました。しかしながら、同氏は、開口一番、「先生がおいでになるのが遅すぎました、本件は既に検察庁案件となっていますので、その内容について現時点では当方から何もお話しすることはできません。一連の検察庁への告発業務が終了し、処分庁である札幌南税務署に修正に向けての業務が移行する段階で、修正申告に関する打ち合わせ及び処分庁からの修正の勧奨並びに(税務)調査結果等の説明があります。また、その時までに、当国税局からも同様の説明をすることになるので、二重に説明することになりますが我慢して聞いて下さい。」と代理人に告げています。

 

そうだとしても、代理人として事実や状況等が何も把握できなければ、今後の税務代理人としての業務を引き受けることができない旨を伝え、“せめて概略説明だけでも”と状況把握をすべく強くお願いしたところ、「一つだけ言えるのは、関与税理士が納税(義務)者に脅されて、脱税に係る申告書等を作成していたようです。」と同氏は、同査察第三部門の職員NS氏が同席する中、重い口を開きましたが、代理人はこの説明には違和感を覚えました。と言うのも、国税局を訪れる前に、納税者ら(当時の法人の代表取締役及び専務取締役)との数回にわたる詳細な面談を経て代理人が得た心証及び納税者の取引金融機関のM支店長から事前に聞き及んでいた内容と当該査察担当者らの認識とは全く異なっていたからです。納税者らは、M支店長が代理人に紹介したとおりの、関与税理士に逋脱の強要をするなどとは無縁な優れた経営感覚を持ち合わせた経営者で、一般的な租税逋脱事件の行為者から受ける印象とは全く異なっていたからでした。

 

ともあれ、査察第三部門の職員のその場の緊張感が伝わるのを受けて、代理人は、「納税者側としてはもとより逋脱の意図(故意)がなかったこと及び関与税理士の示した手法に非違があり、納税額が減少し納税者が利益を享受していたのであれば、可能な限り早期に是正、それに対応する税額を納付します。」との趣旨の平成281124日付札幌国税局長宛の代理人からの以下の上申書を提出しています。「この度、納税者T社代表取締役A氏の委任を受け、同社の税務調査に伴う一連の業務を代理、受任するに当たり、同社の査察調査に至るまでの実態調査及び事実関係を詳細に聴取したところに基づき、以下に小職の意見を申し上げさせて頂きます。本件の事実関係の聴取等は、平成 28 11月8日代表取締役A氏及び専務取締役C氏、10日、14日、17日はC氏、18 日は再びA氏を代理人の事務所に呼び、法人税が過少申告となったこと及び関連法人の消費税の基準期間がない法人の納税義務の免除の特例適用と社会保険料との関係について、繰り返し説明を求めました。」

 

「その結果、A氏及びC氏は、もとより租税を逋脱する意図はないものの、結果として、関与税理士の示した手法に非違があり、それによって納税者が利益を享受したのであれば、可能な限り早期に、それに対応する租税を納付し、以後、経理体制とこれをチェックする税理士事務所を刷新したいとの意向を表明しております。つきましては、是非とも寛大な処分をお願いいたしたく上申いたします。」とするものです。また、これに伴って、平成28125日、想定される国税の本税分11,100万円を予納しています。

 

今にして思えば、国税当局は「真の事実関係」を離れて“偽りその他不正の行為”を認定するために有利なよう周到に、敢えて事実誤認、誤導、虚偽表示等を重ね、殊更、納税者らの悪質性を印象操作していたことを強く疑うに十分なものでした。後になって、小出ししている原処分庁が示した証拠の中には、当然、国税当局が採用したくない、ないしは自らにとって不利な意見や証言、証拠も存在していたわけですが、それらを徹底的に隠蔽し、自らにとって有利と思われる意見や証言のみを誇張表現(虚偽表示)し、事実認定に係る判断の根拠としています。原処分庁を含む国税当局に不利に作用するとして隠蔽していた事実(証拠)として、納税者(法人)の下請業者から逋脱に関する証言を収集するべく、国税局査察第三部門のST氏は、納税者(法人)の代表者が、「かつて『やくざ』だったことを知っていますか」などと全く虚偽の情報を伝え、「納税者から脱税に加担することを強要された」との申述をするよう何度も強く迫った事実、また、通謀虚偽を認定するべく、旧関与税理士に対する質問てん末書の、「納税者(個人)から売上を除外することを依頼されたことはありません」とする関与税理士の申述の隠蔽などがあります。

 

また、納税者(法人)の関係者の供述や申述を記録して証拠とするための「質問てん末書」の作成に当たっては、調査対象者として札幌国税局の聞き取りを受けて申述書若しくは質問てん末書を作成された関係者らに、代理人が改めて面会して、「国税局職員(調査官)らにどんなことを訊かれ、どういう風に応答しましたか」と質問すると、異口同音に、「自分の考えを自分の言葉で話させて貰えず」に、「そのことはこういう風に言うんだよねぇ。」と調査官らの言葉に替えられる。また、それは「こう言うことだよね。」、「その時、こう考えたよねぇ。」と執拗、強引に誘導ないし誤導されてしまい、結果として、それらの申述、供述等による「任意性」、「真実性」のない申述書、質問てん末書が作成されていたことが明らかになっています。

 

それらの調査や聞き取りないし取り調べは、関係法令に牴触する可能性が高く、また、その結果、虚偽の証拠書類等が作成されていた蓋然性が高く、国家公務員による職権の濫用を始めとする法令違反に該当する犯罪と思われますが、より深刻であると考えられるのは、課税当局による確信犯的な言動や行為です。後に詳述するように、それらを知りつつ敢えてそれらに目を瞑っていたり、納税者(代理人)からの意見書で原処分庁等の諸々の違法行為や虚偽の主張等を把握しているにも拘わらず、また、請求人から国税通則法971項に基づく調査が求められ、その調査権限を行使すればそれらの違法行為、虚偽主張等の事実が容易に確認できる、より直接的な表現をすれば、原処分庁等の主張の「嘘」が忽ち判明するにも拘らず、それを決して行使しようとしないのが、残念ながら、現状の札幌国税不服審判所の姿です。

 

すなわち、一連の事案は、租税という極めて特殊性、専門性の高い分野についての犯罪ないし非違が疑われるものということもあり、その捜査(調査)は税務署やその上級機関である国税局の査察部等によって行われることになります。専門の国税査察官や検察官による取調べを受けてこれに答えているうちに、逋脱の認識(故意)を認めたかのような内容の供述調書や申述書に仕立て上げられてしまうケースも数多く見られています。事実、A氏及びC氏も1年を超えた勾留期間中に逋脱の故意性について、本人らはそれを認めていないにも拘らず、認めたかのような内容の調書を巻かれています。(つづく)

文責(G.K


 

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