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いわゆる“理由なし通知処分”に係る裁決の批判的検証 (その12)

2023/05/15

今回は、争点整理に関して、担当審判官(弁護士任用)が作成した「争点に対する当事者双方の主張」に対する請求人の反論(主張)を、別紙2「争点に対する当事者双方の主張に係る請求人の主張」(意見書)として令和4年9月20日付で審判所宛に提出しているので、これについても提示することにします。先ず、(1)争点1(至平成27年3月各更正の請求は、通則法第23条第1項に規定する法定申告期限から5年を経過しているか否か。)について 「この争点1に対する当事者双方の主張のうちの(担当審判官作成の)原処分庁欄の記載は、一般的な納税者の権利救済制度の一環としての更正の請求に係る時効について述べるものであるところ、本件審査請求事案はそれとは内容、情況等を全く異にし、この原処分庁欄において当該文言をそのまま用いて比較対照する意義は殆どなく、そこから事実に基づいた公正な判断を導くことは期待できないと考えられる。」

 

「本件は、累度にわたって述べてきたとおり、至平成27年3月各更正処分及びそれについての先行裁決に明らかな誤謬が存在していたことから、本来、原処分庁が職権を行使、通則法56条1項を適用して請求人に還付すべきところであるが、その旨を申立てたところ、原処分庁審理専門官部門の法人担当審理専門官MT氏は、『札幌国税局査察部門が扱った事案であり、原処分庁(札幌南税務署)には当時の資料等が存在しない』との一方的な都合、理由で請求人の方から更正の請求を行うようにとの強制的説得ないし指示を受け、その際には、通則法23条2項1号を理由とするようにと厳命され、請求人はそれに従って更正の請求をせざるを得なかったのが実情である。したがって、本件原処分庁が強制した説得ないし指示(誤導)は、一般的な納税者に対する権利救済制度としての『更正の請求』の埒外にあることは明白である。」

 

「当然ながら、原処分庁自らが納税者をして行わしめた当該誤導である『更正の請求』につき、この期に及んで更正の請求をすることができる期限の徒過を理由に更正の請求を行うことができないと反論、主張することは自己矛盾であり、禁反言、信義則に照らしできないと考えられる。なお、原処分庁は、『通則法72条ないし74条は国税の徴収権の消滅時効及び還付金等に係る消滅時効であり、通則法72条ないし74条を根拠に、更正の請求をすることができる期間について時効が完成していないと解釈することはできない』と主張していることも、上記の通則法56条1項の適用を申立て、協議した当時の原処分庁審理専門官MT氏の指示とは相容れるものではなく、当該指示内容とも矛盾している。」

 

「また、本件と密接な関連を有する一連の更正処分の更正通知書等(平成25年3月期、平成26年3月期及び平成27年3月期分)が請求人に送達されたのは令和1年10月7日付であり、その時点で既に申告期限からそれぞれ6年7ヵ月、5年7ヵ月及び4年7ヵ月が経過しています。これを受け、請求人が原処分庁に当該処分の見直しを求める『再調査の請求』を行い、その「決定」が出されたのが、1年9ヶ月後であり(2019/07/23掲載税務コラム参照)、当該「決定」を受けて行なった審査請求についての「裁決」が出されたのが、更に1年5ヶ月後であり、再調査の請求、審査請求の期間だけを合計しても、原処分庁は3年2ヵ月間もの間、不作為で当該期間を無為に費やしていたことになる。このことも、原処分庁がこの期に及んで更正の請求をすることができる期限の徒過を理由に更正の請求を行うことができないと主張することができない理由の一つである。」

 

「つまり、審判所の裁決は、平成25年3月期の申告期限からは既に9年、平成26年3月期の申告期限からは8年、平成27年3月期の申告期限からは7年経過後に出されたことになる。しかも、この間の期間の経過は、すべて原処分庁(租税行政庁)自らの都合ないし不作為を原因とするものである。当然ながら、この期間は租税債権債務をめぐって原処分庁と請求人間に争いがあり、処分が確定していないことから、請求人は更正の請求をしようにも当該権利の行使をなし得ない状態にある、所謂「法律上の障害」があったことから、更正の請求(権利行使)をすることは不可能である。この期間(申告期限から9年、8年及び7年)は、当然、更正の請求ができる期間(5年)から除かれなければならないことからマイナスの値になり、更正の請求ができる期間が確保されないことを意味する。然るに、納税者に保障された権利(更正の請求ができる期間(5年)の確保)を与えないどころか、納税者が享受すべき正当な権利利益をも奪わんとするものであり、担当審判官(審判所)の作成した「審判官メモ」は、極めて適法性、適正性を欠き理由がない。」

 

「また、原処分庁が請求人に(違法に)強要したとは言え、更正の請求には「原則排他性」が認められ、『誤って過納付をした場合等には、わざわざ法律で更正の請求という手続を定めているのであるから、その手続で救済を求めなければならず、それ以外の方法で救済を求めることはできない』とする考え方が採られる。そのため、現に、当該更正の請求のうちの一部約2,400万円については還付されているところである。租税正義を堅持、遵守すべき租税行政庁が、かように論理をすり替え恣意的解釈するとは、将に異常な事態である。剰え、原処分庁は、『税務相談において、納税者から税額等の計算に誤りがある旨の相談がされた際、更正の請求の手続の説明を行うことは一般的なことである』とし、更に、『通則法第23条第4項に基づく調査の結果、更正をすべき理由がない旨の通知をしたこととは次元を異にするものである』と主張している。これについても、既に触れた一般的な納税者に対する権利救済制度としての『通常の更正の請求』であれば、格別、本件についてはその範疇にないことから該当せず、論理破綻を猶、強弁する単なる言い逃れに他ならない。」

 

「加えて、原処分庁は、『計算誤り』なる文言を使用して、納税者が計算誤りをしているかの表記をしているが、これについては、通常の更正の請求に結び付く性質を有し納税者の責任に帰すべき『計算誤り』ではなく、原処分庁が当初から確信的、故意的意思をもって納税者を陥れるべく意図的ないし能動的に虚偽の課税要件事実を作出している強度の詐欺的要素を有し、虚偽の税額計算をしていた意味での『計算誤り』であることから、通常の納税者に対する権利救済制度の全くの枠外にあることは明らかである。よって、原処分庁が主張するように、請求人がいわゆる『税務相談』に原処分庁(札幌南税務署)を訪れたものではなく、通則法56条1項の規定に基づく還付を求める書面を提出するために訪れたものであり、姑息にも、原処分庁は論点をすり替え、責任の重大性が自らに及ぶことを回避せんとし、これを矮小化すべく誠意が全く感じられない主張をなし、審判所は当該(誤)主張を支え、ないしは追認しているに過ぎない。」

 

「争点に対する当事者の双方の主張のうちの原処分庁欄の主張は、原処分庁側が数々の法令違反を行い、虚偽の認定を行い、それに基づく虚偽の処分を行い、更にはそのことにつき、請求人に十分な説明をしたとの全く事実に反する『嘘』の主張をしてきたことに対する贖罪の認識の欠如であることを、声を大にして指摘したい。一方、審判所はそれについての先行裁決をするに当たり、請求人が通則法97条1項に基づく調査の申し立てを行ったにも拘らず、これを無視、行わずして裁決を示し、結果として、法令違反とも評価される重大な誤謬を犯し、かつ、原処分庁に誤ったメッセージを送ったのである。」

 

「すなわち、先行裁決は、原処分庁の誤った主張を吟味することなくそのまま受け入れ、『当審判所において…(中略)納付すべき税額を計算すると、原処分の額といずれも同額となる』との『お墨付き』を出し、実際には、原処分は虚偽事実、虚偽認定、虚偽計算等の数々の『嘘』で塗り固められたものを正当化していた。このことから、当該先行裁決が出されるや否や、当該誤裁決の一部としての約2,400万円を還付せざるを得ない状況となり、その他については現在にも及ぶ本審査請求が継続中であるとの現実がある。原処分庁欄にまとめられている文章(主張)には、上記の事実に対する原処分庁及び先行裁決における審判所の誤った対応等の受け止め、認識、更には反省の上に立つものでなければならないが、そのニュアンスすら全く感じ取ることができない点に大きな問題、欠陥がある。」

 

(2)争点2(至平成27年3月各更正の請求は、通則法第23条第2項第1号の規定に該当するか否か。)について 「争点2に関しては、争点としての立て方に稍々問題があるように思われるところである。何故なら、争点1の請求人の主張で述べているとおり、本審査請求に係る更正の請求は、一般的な納税者に対する権利救済制度としての通常の『更正の請求』ではなく、あくまでも原処分庁の都合で、請求人をして原処分庁が行わしめたものであり、しかも当該更正の請求をするに当たっては、通則法23条2項1号を理由とするよう言い添えられたものに対し、請求人はそれに従わざるを得ず、その意味では、納税者が能動的に行った通常の『更正の請求』ではないからである。そのことから、主位的には通則法23条2項1号とするも、予備的には同法23条1項1号としているのであり、23条2項1号を適用するのであれば、請求人欄に概略記載されている内容となることを請求人は主張しているものであるからである。」(つづく)

文責(G.K

 

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