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いわゆる“理由なし通知処分”に係る裁決の批判的検証 (その14)

2023/06/13

(前回の続き)

(5)争点5(青色申告承認の取消に伴う減価償却費の償却超過額は、平成27年度3月期の所得金額から減算できるか否か)について 「争点5については、請求人がこれまでにも繰り返し主張しているとおり、原処分庁は、平成27年9月14日税務調査の終盤に、『初めてのことでもあり、今回は青色を取り消しませんが、署長宛の誓約書を書いてください、それで終わりにします。』との趣旨の行政指導(指示)をし、請求人はこれを受け、札幌南税務署長宛の誓約書を提出している。ところが、その2ヶ月後の平成271125日札幌国税局調査査察部の調査を受け、処分理由の付記も不十分なまま、原処分庁は平成2910月6日付で更正処分及び同日付で平成25年3月期以後の青色申告承認の取消処分を行っており、本件は明確な信義則違反(民法1条2項)である上に理由付記の不備(法人税法130条2項)に該当する。」

 

「なお、本件については、請求人がこれまでも繰り返し質問し、回答を求めてきたのに対し、原処分庁は何らの返答、反論ないし主張もしていないことから、原処分庁は請求人の主張を認容しているものと思われるところであるが、念のため審判所における判断を求めるものである。因みに、原処分庁は、請求人に対する青色申告の承認の取消理由として、『平成2441日から平成25331日までの事業年度における関係法人に対する外注費を損金の額に算入しているところ、本件関係法人には事業実体が認められず、当該外注費は請求人の前々代表取締役であるA氏の指示によって、本件関係法人から架空の請求書を発行させることで、本件関係法人に外注費を支払っているように仮装していたものと認められる』とし、『これらのことが当該事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していることに該当する』として、当該事業年度以降の青色申告の承認を取り消すとしている。」

 

「しかしながら、原処分庁が主張する請求人が二次下請け以下の下流下請事業者に外注することは至極当然、真っ当な業務の一環であり、当該外注費を損金に算入することもまた当然であり、これまでにも述べているとおり、この関係による関係法人に事業実体があったからこそ、現在も、一次下請事業者としての請求人が法人事業を存続していることから、処分理由となっていない。また、前々代表取締役のA氏の指示によって、本件関係法人から架空の請求書を発行させた事実はなく、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録した事実もなく、原処分庁はそれらに係る直接証拠を何ら示してもいない。青色申告の承認の取消処分についての理由付記の十分性についての裁判例等については、これまでに述べたとおりである。」

 

「曩に触れたように、原処分庁(札幌南税務署)ですら札幌国税局が査察調査に着手する直前までは、『初めてのことでもあり、今回は署長宛に始末書を出して終わりにします』との趣旨の調査官の指導に止めており、当該指導に基づいて請求人の誓約書を提出させて青色申告の承認の取消はしないことを確約していたものであり、本件についても、明らかに、禁反言(信義則)に違反に該当、牴触するものである。本件青色申告の承認の取消処分は、手続、法令等の両面において誤りであることを強く主張し、事実及び信義則に反する青色申告承認の取消処分に伴う減価償却費の償却超過額と認定された平成27年度3月期の所得金額は、平成27年度3月期の所得金額から減算できるか否かが正当・公正に判断でき得る文面とされるよう希望するものである。」

 

「原処分庁が口頭意見陳述における質問の場面において主張しているような『本審査請求における原処分及び令和4年2月25日付処分の判断に関係のない質問』だとして論点をすり替え若しくは論点をずらして処分庁としての責任回避を図るのではなく、事実に真摯に向き合い、課税要件が存在すれば課税し、誤りがあればそれを糺していく態度こそ、わが国に真の申告納税制度を確立していくことに繋がるものと考えられる。本件審査請求は、令和1年10月7日付当初更正処分及び令和3年3月10日付裁決と深い関係性を有する一連の継続している事案であり、また、審査請求における審理過程は、基本的には、書面審理方式であるため、簡潔に取りまとめたとはいえ、確認表においては、当事者双方の主張を対比させることによりその本旨が一見して読み取れる文面、表示であることを要する。」

 

「現に原処分庁は、慣習法的側面、道義的側面ないしは税理士会との申し合わせ及び手続面並びに法令面における規定を一切無視し、いわば密室において形ばかりの検討を経て国民の財産を対価を伴うことなく租税の形式をとって無償で国家に移転させてきた。本来、それらの(課税)手続は、『合理的な疑いを入れない程度の証明』を経たのち行われるべきものである(租税法律主義ないし課税要件法定主義)。原処分庁の詭弁を弄した上の、かような欺瞞に満ちた非合理の疑念しか生じさせ得ない主張ないし間接事実のみの提示によって、斯くも容易に、かつ強引に国民の財産を国家に移転させている中にあって、これに対抗すべく頼みの綱は、審判所による事実に直面する公正、公平な判断である。」

 

因みに、国税庁は、本件にも関係する青色申告承認の取消通知書の記載事項について、その事務運営指針(通達)で、「青色申告の承認取消通知書に記載する取消事由は、例えば「自令和○年○月○日至令和○年○月○日事業年度分の法人税の調査に関し必要がありましたので、令和○年○月○日、…同月○日及び同年○月○日の○回にわたり、当税務署の調査担当職員が貴法人の本店事務所において貴法人代表取締役○○○○に帳簿書類の提示を求めたところ、その提示がありませんでした。このことは、青色申告に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が法人税法126条1項(青色申告法人の帳簿書類等の保存規定)に定めるところに従って行われていないことになります。したがって、法人税法127条1項1号(青色申告の承認の取消規定)に該当しますので青色申告の承認を取り消します。」のように、取消しの基因となった事実を具体的に記載」すべきことを明らかにしています。

 

また、青色申告承認の取消処分をする場合には、「書面によりその旨を通知し、その書面に取消しの処分の基因となった事実を付記しなければならない」旨を、取消事由として付記することを義務付けています(法人税法127条2項)。この他、理由付記に関しては、白色申告も含めて、原則として、全ての更正処分等について調査結果の内容を納税義務者に対して説明しなければなりません(通則法74条の11第2項)。しかし、再三触れているとおり、原処分庁は代理人でもある筆者に対して「調査結果の内容を詳細に説明した」との虚偽主張をし、かつ、請求人からの当該証拠書類の写しの交付要求に対し、偽造、変造した書証を提示し、平然と「嘘」を重ねたのです。

 

以上が担当審判官作成の「争点に対する当事者双方の主張」に対する請求人の主張別紙2として令和4年9月20日付で審判所宛に請求人が提出した意見書の内容に関わるものです。この意見書の内容からも、およそ察しは付くことと思いますが、これらが、原処分庁が如何に事実及び法的根拠に基づくことなく、論理矛盾で恣意的な主張及び判断、処理の下に更正処分を強行し、それを審判所が丸呑みして擁護してきた過程及び実態であるかを明らかにしたものです。請求人が、上記を内容とする意見書を提出したのは、本件審査請求の審理過程が大詰めを迎えるにつれて、担当審判官(社会正義を実現することを使命とする弁護士からの審判官任用)がその当初に表明していた「審理の中立性・公正性」という立場から次第に距離を置く発言、行動が目立つようになったと感じられたことへの懸念、危惧があったからに他なりません。

 

請求人からのこの諫言ともいうべき意見書の作成・提出にも拘らず、結局のところ、審判所は、「解答(裁決)に合わせて問題(争点)を作成」、すなわち「はじめに結論ありき」の方針の下、形ばかりの審理を経て本裁決を出したものと考えられ、最初から原処分庁を含む租税行政庁の「欺瞞に満ちた」主張や判断を正当化すべく「争点整理」を行っていたことが強く窺われ、誠に残念に思われるところです。然して、「審査請求をいずれも棄却する」との裁決をしたのですが、審判所が、こうした明らかに疑問のある問題裁決を出さざるを得なかった理由ないし背景は、幾つか考えられます。

 

その1つは、当該判決内容(判断)の適否は一旦措くとして、札幌国税局が検察庁に告発した本件「理由なし通知処分」の(もとい)をなし、一連の法人税等及び消費税等の逋脱(脱税)と認定した事案の、いわゆる刑事処分としての有罪判決に引きずられたことが考えられます。併せて、当該刑事処分に後行こそしてはいるものの、前記刑事処分の告発内容となり、その告発内容と同様・同根である行政処分としての当初更正処分に係る札幌国税局の査察調査における故意的、意図的に誤った判断をしている事実が大きく影響を与えています。

 

何故なら、同調査の担当責任者であった札幌国税局調査査察部査察第3部門の主査ST氏は、「関与税理士が納税者(調査対象法人の代表取締役A氏)に脅されて、脱税に係る申告書等を作成していました。」とする当時の査察部の認識・見解を代理人(筆者)に明らかにしていたからです(2021/03/05付の税務コラム)。もとより、この認識(被疑事実)に基づき札幌国税局は札幌地方検察庁に告発しており、その告発内容についての真偽に関わる責任は重大です。これらの刑事処分や行政処分における判断の当否、善悪に関しては、当税務コラムのこのテーマの最後の部分で詳述、再々論することとして、今一度、裁決書に戻って、次回からは「当審判所の判断」について、検証するつもりです。(つづく)

文責(G.K

 

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