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いわゆる“理由なし通知処分”に係る裁決の批判的検証 (その19)

2023/09/01

(前回の続き)

裁決書の19(4)争点2のロ「請求人の主張について」として、「…本件先行裁決が通則法第23条第2項第1号括弧書きに規定する『判決と同一の効力を有する和解その他の行為』に該当しないことは上記イのとおりであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。また、…請求人が、本件尋問調書を入手したところ、当該調書に記載された供述内容より、本件各更正処分等及び本件先行裁決により確定した課税標準等又は税額等の全てについて誤りがあることが明らかになったことから『当該計算の基礎としたところと異なることが確定』したと認められる旨主張する。しかしながら、訴訟における証人の供述は、…何ら法的に確定させる効果を生じるものではないことから…『当該計算の基礎としたところと異なることが確定』したとは認められない。したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。」と審判所はしています。

 

上記に、審判所は、「訴訟における証人」の供述は何ら法的に確定させる効果を生じるものではないと判断(主張)していますが、法廷における証人尋問で出た証人の発言は証拠となるものです。そして、その証人は札幌国税局調査査察部査察第3部門の国税査察官のHK氏であり、しかも、検察官の証人尋問には、当該査察調査に直接携わったHK氏がその調査結果について答えており、高度の信憑性を有するものです。また、審判所は、ここまでの審査請求の審理から判断までの過程において、最高法規である憲法規範をはじめとする「法律」を重視することなく、「懲罰的課税の論理」を前面にかざして勝手な解釈をする、極めて遵法精神を欠く行為(判断)を重ねてきておきながら、ここでは、「何ら法的に確定させる効果を生じさせるものではない」などとして、一転して、「法律」を持ち出す一貫性のない審理精神構造には違和感を覚えるところです。その余は、前回までのイの「検討」において論説しているところと全く同様であり、「判決と同一の効力を有する和解その他の行為か否か」の判断をするまでもなく、審判所の立論・主張は、その前提を誤っており、その裁決には理由がありません。

 

続いて、裁決書の20頁は、(5)争点3(本件売上認定額は、平成28年3月期の法人税の所得の金額から減算できるか否か。)についてのイ「検討」として次の記載があります。「国税通則法施行令第6条第2項は、…更正の請求をしようとする者は、その更正の請求をする理由の基礎となる事実を証明する書類を通則法第23条第3項の更正請求書に添付しなければならない旨規定している。そして、特定の金額をある事業年度の法人税の所得の金額から減算するためには、その特定の金額がその事業年度の益金の額に算入すべきものではなかった又は損金の額に算入すべきものであったにもかかわらず、その事業年度の益金の額に算入されていた又は損金の額に算入されていなかったことが認められる必要がある。」との記載があります(傍点筆者)。

 

しかしながら、上記傍点部分は、審判所が、論点をずらすべく、恰も通則法施行令第6条第2項の規定をそのまま引用しているかの記載振りをしているところ、傍点部分の「そして、…必要がある。」までは、審判所が後の結論(裁決)を導くために恣意的に加筆したものです。因みに、通則法施行令第6条第2項は、「更正の請求をしようとする者は、その更正の請求をする理由が課税標準たる所得が過大であることその他その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものであるときは、その取引の記録等に基づいてその理由の基礎となる事実を証明する書類を法第23条第3項の更正請求書に添付しなければならない。その更正の請求をする理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するもの以外のものである場合において、その事実を証明する書類があるときも、また同様とする。」とのみ規定されており、審判所が結論(裁決)を導き易くするべく、論点(争点)をすり替え加筆しており、その確信的意図が明白です。

 

当該確信的意図に関連しては、審判所が予め作成して「争点整理(案)」に記載している売上計上漏れについて、請求人の毎月(年)の売上の次月(次年)度への繰延額を当月(当年)度の売上計上漏れとして加算する一方、当該額は次月(次年)度の売上からは減算すべきところをしていない事実等を、請求人はそれらの証拠を添え、意見書で指摘していました。そして、それは平成28年3月期のみではなく、調査対象年度の全てに渡って存在しており、それらは「期ズレ」でこそあれ、売上計上漏れではないこと等を具体的に示して、調査終了近接年度の平成28年3月期において、重加算税の賦課を含めて、それらの是正を求めていたにも拘らず、審判所を含む租税行政庁は、その事実を敢えて矮小化して平成28年3月期に限定して争点としているのです。また、当然ながら、請求人は、通則法施行令第6条第2項が規定する「更正の請求をする理由の基礎となる事実を証明する書類」及び「その更正の請求をする理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するもの以外のものである場合、その事実を証明する書類」等も審判所に提出しています。

 

上記事実を前提に、審判所が示している以下の裁決書の文面に照らし検討すると、「これを本件でみると、本件先行裁決により平成27年3月期の売上げとして益金の額に算入すべきと認められた本件売上認定額を平成28年3月期の法人税の所得の金額から減算するためには、本件売上認定額が請求人の平成28年3月期の益金の額に算入されていることが必要であるところ、上記(2)のイのとおり、請求人の売上げについて、月初に前月分の売上げを訂正する旨を適用欄に記載して、前月末日に計上した売上げと同額を借方に計上するとともに再計上する旨を適用欄に記載して当該借方計上額より多い金額を貸方に計上していることが認められる。」

 

「しかしながら、上記(2)のニのとおり、当該増額計上した金額の内訳に本件売上認定額が含まれていることが確認できる帳簿書類等は存在せず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、本件売上認定額が請求人の平成28年3月期の総勘定元帳の売上科目に計上され、益金の額に算入されている事実は確認できない。したがって、本件売上認定額は、請求人の平成28年3月期の益金の額に算入されていると認めることはできないため、平成28年3月期の法人税の所得の金額から減算することはできない。」は、審判所を含む租税行政庁としての責任から逃れるための意図的、悪意の主張と思われるところです。

 

先ず、審判所の上記の記述との関連で、請求人の主張を以下に述べたいと思います。そもそも原処分庁の当該売上認定額の算定については、本件事案の当初から疑問があり、請求人は、その算定方法を詳らかにするよう再三に渡って原処分庁に求めていました。しかしながら、原処分庁の説明は、二転三転し、最終的には、租税行政庁(主として国税局査察部)の調査額と請求人の申告額との差額であることを明らかにしました。その上、当該調査額の算定方法は杜撰この上もないもので、取引を仕訳したもののうち借方の費用のみを否認して無いものとする一方で、貸方の収益はそのまま他の収益と合算することで、敢えて、調査額と申告額との差額を作出するものでした。剰え、会計方式の関係で売上が期ズレしていた分を当年度の売上計上漏れの額として加算する一方で、当該期ズレ額分は次年度の売上額からは減算せずそのままにして(敢えて差額を作出して)いたのです。

 

また、原処分庁が、上記会計方式に係る売上計上漏れと認定したものについては、平成25年3月期、平成26年3月期、平成27年3月期の法人税及び同地方法人税の売上計上漏れにつき、旧関与税理士のI氏が変則的期中現金主義を採用しており、売掛金の入金及び相殺により総勘定元帳の売掛金の残高が不足すると、期中で金額を誤って計上していたものを修正したり、請負工事の期中での手直し、一部設計変更等に伴って金額が変更になったものを修正計上したり、期ズレしていたものを前倒し計上したり、誤って相殺を二度計上していたものの是正等をして増額計上することで売掛金残高を整合させていました。

 

この事実については、証拠資料を示した上で、かような会計処理が常態化している旨を原処分庁担当者らに説明をしており、その論理的、会計(学)的、また複式簿記における貸借一致の原理からの帰結として、売掛金が存在する以上、それに対応する額の相手勘定である売上も存在しなければならず、売上計上漏れはあり得ないことも同時に説明していました。というのも、借方の売掛金を増額計上すれば、その分の貸方の売上も増額計上しなければ、貸方と借方が均衡、バランスすることがなく、その増額計上分の中に売上計上漏れ分とされている額が含まれていなければ、貸借が一致しないからです。そして、このメカニズムについては、原処分庁担当者らに繰り返し説明していますが、複式簿記の原理を理解しようとしないのか、借方に外注費が計上され、貸方に売掛金が計上されている意味を理解していません(2022/07/18税務コラム)。(つづく)

文責(G.K

 

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