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いわゆる“理由なし通知処分”に係る裁決の批判的検証 (その29)

2024/01/30

(前回の続き)

前回も述べたとおり、本件における司法判断は、明らかに事実認定及び法の解釈・適用を誤ったものと評価されるところです。それと言うのも、当該一審判断は一次下請会社と二次下請会社の役割を本来的に混同しているのではないかと疑われるからです。一次下請会社すなわち被告会社は、ゼネコン等の元請事業者と工事請負契約を直接締結し、当該請負工事の全部若しくは一部を二次下請会社(関連会社)に依頼、発注すると同時に、当該工事全体の統括管理、施工計画の作成、工事全体の工程管理、品質管理、安全管理及び技術指導(下請に対する技術的指導及び法令遵守の指導)等並びに資材調達、その他の業務を担当することを主たる役割としています。

 

一方、二次下請会社たる関連会社は、被告会社から下請受注した工事請負契約の一部を更に下流の下請会社である三次下請としての法人又は個人等に依頼、発注して、一次下請会社から受注した工事範囲内での工程管理、品質管理、安全管理、電気系統の管理等の業務を担当すると同時に、三次下請会社等と協力して実際の工事施工を行うのがその役割です(元請事業者との関係で特殊の工事を一次下請会社が直接受注する場合、「本隊」と呼ばれる被告会社直属の組織が工事施工を担当することもあります)。しかしながら、これらの情況を査察部における「初めに結論ありき」の方針の下、その直接証拠も示さぬまま、これまでに再三に渡って述べてきているとおり、「被告会社と関連会社とは一体であり、被告会社から関連会社への外注費の支払いは、人件費(給与)を外注費に仮装して脱税しているもの」との恣意的立論により、強引に検察庁に告発し、検察庁はその論理を前提に本件公判請求しているものと思われるのです。

 

当然ながら、実際の工事施工についての対外的な工事発注等に係る三次下請以下の法人又は個人等との取引に関する帳簿及び請求書等は、全て関連会社が自らの名義で作成し、保存しており、被告会社が当該帳簿及び請求書等を作成し保存してはいないことに、余程恣意的な解釈をしない限り、論理上の矛盾はないのです。被告会社は、特殊の工事を直轄で施工する場合を除き、工事施工を自らの名義で実行することはなく、一般的な工事施工契約に係る帳簿及び請求書等を作成し、保存することはありません。極論ながら、仮に、検察が強硬に主張する「被告会社と関連会社は一体である」とすれば、本来、被告会社であろうと関連会社であろうとどちらかにおいて当該帳簿及び請求書等が作成され保存されていれば足りる論理にもなります。そうだとすれば、消費税法30条7項を適用して、「被告会社は、課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に該当するとする認定自体が無意味となり、「外注費に対応する消費税は全額仕入税額控除することは認められない」とする司法判断は、明らかに論理不整合となり、事実認定及び法の解釈・適用を誤ったものとの評価がなされることになります。

 

加えて、当時の消費税法は、小規模・零細企業者保護のための事業者免税点制度上から、開業して2年間は基準期間として、原則的に、当該期間の消費税は免税となっていました。したがって、開業から3年目に当該企業を廃業し、新たに開業し、また3年目に廃業すると、法律上は、消費税が掛からない建付けになっていたのです。それは、当時の消費税法の射程外として、適用外になるという宿命的欠陥を有していた制度であったことを示しており、法の不備ないし法の缺欠とも呼ばれる法律上は許容されるものでした(その問題があったからこそ、関係する部分の法律が改正され、また、複雑で手間の掛かる「インボイス制度」が、敢えて導入されています)。なお、これを禁止するためには、立法によることを必要とし、その考え方が、憲法に規定を置く租税法律主義(憲30条、84条)であることは、既に述べているところです。加えて、査察部及び検察が、曖昧な認定で「関係法人」3社の括りとしている中には、3年目に廃業することなく、現在も業務を継続している関連会社も存在しています。

 

続く公訴事実の第2として、検察は、「売上の一部を除外するとともに、架空の外注費を計上するなどし、もって不正の行為により法人税を免れた」としています。しかし、検察は、これについても査察部の告発内容に依存するばかりで、売上除外に係る直接証拠を示してはいません。検察が売上の一部の除外と主張するものの実態は、①査察部の認識の誤りないし納税者の悪質性を誇張すべく故意に虚偽の事実及び計算を作出したと思われるもの、②いわゆる「期ズレ」に由来するもの、③その他、の3つに分類することができます。これらのうちの①としては、旧関与税理士が採用していた変則的な「期中現金主義」による会計・経理方式に対する当局の認識不足、当該経理方式の黙認及び行政指導の欠如並びに査察部の恣意的理解に由来すると思われる会計計算上の作出が挙げられます。

 

本件における期中現金主義の場合、前年3月期の買掛金の残高約1億円が当年3月決算修正前まで合計試算表の貸借対照表に負債として計上され続けており、この分は、実際には、前年4月以降に支払いが行われ、合計試算表の損益計算書上の前残高に含まれて計上されています。そのことは、貸借対照表上は前年の3月期のものがその後ずっと1年間残高として計上され続けており、他方、損益計算書上は支払済のものも計上されていることになり、結果として、本件においては当期利益が約1億円少なく表示されていたことを意味します。このように、利益が見えづらいことに加えて、かつての関与税理士は、月次処理の全てを自らの会計事務所職員に任せ切りにしており、税務申告直前の連休明けに決算修正をするまで、その利益を見落としており、4月28日に決算準備を行うことによって初めて2億円もの利益が出ていることを認識しています(旧関与税理士公判証人尋問調書より)。

 

具体的には、前年3月期における決算修正で計上されていた買掛金(約9,800万円)及び未払金(約600万円)が、期中現金主義による経費処理がされていたため、当年3月の決算修正前までの試算表上には、本来の当期利益より約1億400万円少なく表示されていることになり、期末には前期分の損金としていた約1億400万円を振替える必要があります。しかし、その時期の他の関与先の決算、確定申告等の業務に忙殺され、かつての関与税理士はそれを見落とし、また、そのこと(申告納付直前まで被告人らに利益は約1億円と伝えていたものが、突然に利益が約2億円になったこと)をA氏らに理解可能な形で説明できていませんでした。このような、期中現金主義による会計処理に潜在する怖さに対する査察部を含む課税当局の認識及び当該会計方式の是正指導等が欠如していたところ、査察部を含む課税当局は、それらに対する責任を丸ごと納税者(被告人)の責任に転嫁した上で、虚偽の事実関係をも作出して告発したものと思われます。

 

また、査察部の会計に関する知識不足ないしそれから派生する恣意的解釈による会計上の作出として、例えば、平成25年3月期において、借方 外注費10,000,000/貸方 売上10,000,000という旧関与税理士が行った仕訳について、請求書・領収書等の資料がないことを理由に課税当局は当該取引を否認しています(仕訳自体が正常とは言い難いですが、少なくとも損益は0です)。当局は、この取引を否認するにつき、借方の外注費だけを否認して取引がなかったものとする一方で、貸方の売上はそのまま他の売上に合算していることから、貸借が一致せず、申告額と認定額に敢えて乖離(差額分)を生じさせる処理をしています。したがって、平成25年3月期においては、この分だけでも10,000,000円の申告額と認定額との差額が生じており、このような手法を駆使することで、課税当局が主張する売上除外は作出されています。

 

平成26年3月期の外注費の過大計上額113,400円の二重計上及び平成27年3月期の外注費の過大計上としている外注費と売上(売掛金)との相殺分4,131,327円は、国税局査察部職員のHK氏もその供述でも認めているとおり、増額計上している分の中に含まれており、損益に影響はなく、敢えてこれを二重計上とするならば、売上も二重計上していることになります。したがって、平成27年3月期の所得金額に外注費のみを過大計上と(加算)すべきではなく、売上も過大計上しており、結果として、損益は0となることから、113,400円及び4,131,327円の加算した額は減算しなければ貸借が同額にはならず、当局のこれらの判断・処理も故意ないし作出が考えられ、ここでも申告額と認定額との差額を発生させる結果となっています(2022/06/18掲載税務コラム参照)。

 

このような売上計上漏れにつき、平成25年3月期、平成26年3月期及び平成27年3月期の法人税及び同地方法人税の計算に旧関与税理士が変則的な期中現金主義を採用していたことから、売掛金の入金及び相殺により総勘定元帳の売掛金の残高が不足すると、期中でその金額を修正したり、一部の期ズレ分を前倒し計上したり、誤って相殺を二度計上していた分の訂正等をして増額計上することで売掛金残高を整合させていました。このことは、その論理的、会計的及び複式簿記における貸借一致の原理からの帰結として、売掛金が存在する以上、それに対応する額の相手勘定となるべき売上も存在しなければならず、売上計上漏れはあり得ないことを意味しています。

 

それと言うのも、借方の売掛金を増額計上すれば、その分の貸方の売上も増額計上しなければ、貸方と借方がバランスすることがなく、その増額計上分の中に売上計上漏れとされている額、具体的には、平成25年3月期4,516,552円、平成26年3月期44,620,672円、平成27年3月期14,968,141円が含まれていなければ、貸借が一致しないのです。それにも拘らず、査察部は、このメカニズムを敢えて無視し、故意ないし作出によって売上計上漏れとしており、検察庁はこれをそのまま事実認定していることが強く疑われるところです(2022/06/05掲載税務コラム参照)。(つづく)

文責(G.K

 

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